( 123747 ) 2023/12/03 01:07:13 1 00 岸田首相の「新しい資本主義」も野党の批判も完全に的外れ。そもそも日本に新自由主義などなかった!(山田順) - エキスパート - Yahoo!ニュース #Yahooニュース ■立憲民主党・西村智奈美氏の岸田首相批判 西村智奈美氏は岸田首相の「新しい資本主義」に期待していたが、現在は失望している。岸田首相が格差を広げた新自由主義から離れると言っていたが、そのような政策は見えないし、逆に進んでいるように感じると述べた。特に、新自由主義を進めた竹中平蔵氏が諮問会議のメンバーになっていることに疑問を呈している。 ■いくら聞いてもイメージできない 岸田首相は「新自由主義からの脱却」と言ってきた。彼は「新しい資本主義」を提案し、所信表明演説でもその言葉を繰り返した。彼は新自由主義の問題を指摘し、「新しい資本主義」が成長と公平をもたらすと述べたが、具体的な計画はまだ見えてこない。彼の引用した欧米の例も、具体的なイメージを与えていない。 ■格差と貧困を生み出した“元凶”? 「新しい資本主義」と「新自由主義」の議論がうまくかみ合わないのは、首相も西村氏も、新自由主義に対する認識が異なるからです。 もし「新自由主義からの脱却」が「新しい資本主義」だとすると、これまでの日本の経済政策は新自由主義だったことになります。特に、アベノミクスもその一環ですが、この前提は本当でしょうか? これまで日本では新自由主義が格差や貧困の原因とされ、左派だけでなく、全野党やエコノミスト、学者までがこれを批判してきました。 ただ、果たして新自由主義はそれほど否定すべきものなのでしょうか? 日本経済が低迷し、格差や貧困が生まれたのは、歴代政権が新自由主義を採用したからだけなのでしょうか? ■規制の最小化と自由競争を重んじる 「新自由主義」は政府の規制を最小限にし、自由競争を大事にする考え方や政策です。これが企業や個人の経済活動を守り、市場競争によって富を増やし、社会全体に恩恵をもたらすとされています。 サッチャー政権のイギリスやレーガン政権のアメリカが代表例で、「小さな政府」を重視していました。 しかし、日本は1990年のバブル経済崩壊後、違った方向に進んでいます。財政を国債で拡大し、公共投資を通じて企業の力を衰えさせ、「失われた30年」と言われる長期の経済停滞を招きました。 ■税金と規制の多さで「大きな政府」 「小さな政府」は税金や規制が少ないものです。しかし、日本では国民負担率が50年間で2倍に増えており、税金と社会保障費の割合が増えています。日本は現在「重税国家」で「大きな政府」です。これにより国民は負担が重く、少子高齢化と経済停滞が深刻化しています。 OECDによると、日本は規制が多いとされる46カ国の中で24位。先進国としては規制が多い部類に入ります。 一方で、イギリス、デンマーク、スペイン、ドイツ、オランダ、スウェーデン、ノルウェー、フィンランドなどの欧州諸国は、北欧諸国を含めて税金が高く、国民負担率が大きいですが、規制は日本よりも少ない。これは自由な経済を持つ新自由主義的な特徴もあると言えます。 ■日本は「社会主義」「縁故資本主義」の国 日本企業は長らく、終身雇用や年功序列を採用し、多くの場合、社長から平社員まで給与格差が小さく、福利厚生や雇用保障も充実している。この日本のシステムは社会主義や共産主義的であり、資本主義とは違う印象を受ける。官僚組織も経済政策に介入し、日本は欧米の自由な資本主義とは異なる。 もし資本主義というなら、中国型の「国家資本主義」や「縁故資本主義」と言えるだろう。 この「国家資本主義」「縁故資本主義」を続けてきたのは、歴代の自民党政権だ。彼らの政策は新自由主義とは異なり、「金融ビッグバン」「小泉構造改革」も表面的な変化で、実態は縁故資本主義の典型と言える。 アベノミクスも同様で、規制改革と言われた第3の矢は限定的な成功しか収められず、加計学園の獣医学部の例も規制改革とは言い難く、むしろ縁故資本主義の典型とされる。 ■トリクルダウンが起きなかった本当の理由 アベノミクスを新自由主義と見なし、トリクルダウンが起きなかったことや格差が広がったことを批判する人々がいますが、実際にはアベノミクスは新自由主義ではありませんでした。実際、政府と癒着した「中抜き」による問題も生じました。 中央銀行による大規模な金融緩和や財政出動は、新自由主義とは対照的な政策です。財政を膨らませ、日銀が株を購入することで市場に影響を与えました。これは左派の政策であり、保守政党が本来行うべきことではありません。この結果、多くの日本企業が「国有企業」として扱われる状況になりました。 縁故資本主義の下で左派政策を実施すれば、産業の競争力が損なわれます。加えて、人口減少の日本では需要が減り続け、消費が低下していくことは避けられません。 ■「賃上げ3%」「雇用調整金の継続」は無益 岸田政権は根本的な経済政策の見解が間違っているため、これまでの社会主義的な路線を継続することになります。 政府は経済に干渉し、無駄な財政出動を続けています。これが「賃上げ3%」や「雇用調整金の継続」などの政策に反映されています。 政府が企業に賃上げを要求し、その根拠がない場合、これは政府が労働組合のような立場になっており、資本主義ではありません。 同様に、雇用調整金の継続も同様です。これは企業が雇用を維持しつつ従業員に休業手当を支払う際に国が一部を助成する制度であり、完全な資本主義とは言えません。雇用調整金はいずれ打ち切られ、結果として不必要な従業員は解雇され、失業者が急増するでしょう。 資本主義の下では、賃金や雇用も市場の原理に従うべきです。 ■若者が当たり前の人生ができない国 もし日本が新自由主義経済を採用していたなら、ここまで経済が停滞することはなかっただろう。人口減少による課題があっても、自由な市場があれば、人々は創意工夫を凝らし、能力を伸ばし、経済を成長させたはずです。日本人は決して弱くはありません。 しかし、政府は経済政策を誤り、社会主義国と同様の方針を取り続けています。そして今、それを「分配」と「バラマキ」でさらに強化しようとしています。 今や若い世代はどれだけ努力しても、収入を増やして豊かになることが不可能になっています。まず、給与が増えません。貯金してもゼロ金利での増加しか見込めませんし、日本の投資環境も極めて厳しいです。その上、増税もあります。 就職し働き、将来家庭を持ち子供を育てるという普通の生活が難しくなっています。 ■政府がやるべきは仕事とチャンスをつくること 政府は「新しい資本主義」などという言葉で国民を欺くべきではありません。同様に、野党も定見を持たずに新自由主義を批判するだけでは意味がありません。 与野党の「分配」と「バラマキ」が増え続ければ、日本はますます貧困化していくでしょう。困窮者に一時的な支援金を提供しても、それがなくなれば再び困難に直面します。 お金を与えるのではなく、仕事を生み出し、チャンスを提供することが政府の本来の役割です。「分配」と「バラマキ」では、強固な中間層を築くことは不可能です。 「SDGs」(持続可能な開発目標)が流行していますが、その言葉にある「持続性」は、「分配」と「バラマキ」だけでは実現できません。 税金が高く、規制が多く、政府と一部の企業や資本家が結びついているほど、国民は不自由を強いられ、経済は衰退していきます。これは途上国でよく見られる光景です。この点で、日本は先進国ではなくなってしまったのかもしれません。 |
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