( 124146 )  2023/12/23 11:16:47  
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2024年、東京証券取引所が新たに資本コストや株価を意識した経営に対応している企業の一覧表を公表し始めることで、投資家から注目を集めています。この一覧表は、東証が推進する「PBR改革」の一環で、これまで低PBRの銘柄が大きく飛躍した経緯を受け、今後も投資チャンスを生み出す可能性があります。

2023年は日本株市場が好調で、特に低PBR銘柄が顕著なパフォーマンスを示しました。東証のPBR改革は大きなインパクトを与え、日本株市場の上昇に貢献しました。しかし、現在の市場は金利の見通しに依存する不安定な状態にあり、割安株から成長株への資金シフトが起こりやすい状況になっています。

東証の新たな取り組みは、資本効率性の改善に取り組む企業を一覧表で公表するもので、2024年1月から毎月更新されます。これにより、低PBR銘柄に改善圧力が強くかかることが予想され、投資家からの期待が高まっています。投資家にとっては、低PBR銘柄の中でも特に上昇を見せた銘柄を見極めることが重要になります。

(要約)

( 124147 )  2023/12/23 11:17:05  
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2024年、東証が再び放つ「起爆剤」

photo by gettyimages

 東京証券取引所が来年、2024年1月15日から公表を始める資料が投資のプロの注目を集めている。

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 東証がこの3月から要請してきた「資本コストや株価を意識した経営の実現」(いわゆる「PBR改革」に対応している企業の一覧表を開示するのだ。

 言い換えれば、今年、日本株を爆上げした「PBR1倍割れ是正」に真摯に対応し、その情報を開示している企業をさらに持ち上げるというわけだ。

 今年、PBR1倍未満の銘柄は大きく飛躍したが、東証の具体的な開示がさらに投資チャンスを生むかもしれない。だとしたら、東証のさらなるPBR改革が投資家にどんなチャンスをもたらすのか、検証しない手はないだろう。

 まずは、今年の日本株を押し上げた「PBR1倍割れ是正」を振り返り、年明けから始まる改革のインパクトを探ってみよう。

「東証PBR改革」で爆上げした日本株

出所:Refinitive Datastream

 師走の日本株市場は、高値圏で日々乱高下を繰り返す不安定な状態が続いているが、2023年は年間を通して、先進国の中でもトップレベルの上昇率を達成した好調な1年だった。

 思い返せば、今年は年前半から東証の「PBR1倍割れ是正」の議論が注目を浴び、世界中の投資家からの資金が流入した。過去に、日本株市場が単独の要因で世界から注目を浴びたことは稀で、私の記憶では、2013年のアベノミクス開始以来の出来事だ。

 それくらい、東証のPBR改革は大きなインパクトをもたらし、日本株市場の上昇に貢献した。

 実際に、2023年年初の東証プライム市場上場銘柄をPBRが1倍以上、1倍未満の二群に分け、足元までの平均騰落率を計測してみよう。圧倒的に、低PBR銘柄群のパフォーマンスが良かったのだが、すでに1倍以上となっていた銘柄との格差の大きさに驚かれることだろう。

 図:PBRの高低別の銘柄群 年初来の平均騰落率

 今年の早い段階で低PBR株を買って保有していた投資家は、その恩恵を十二分に享受できたことだろう。

 一方で、11月以降には世界の金融政策の変化を理由として、市場の潮目は変化した。その変化のほとんどは金利の見通しに依存するものだ。米国側は、利下げ観測の高まりからの金利の低下、日本側は日銀のマイナス金利終了や引き締め見通しに伴う金利の上昇である。

 これまでは、周知のように欧米のインフレの急伸を抑制するために速いペースでの利上げを実施し、金利の上昇とともに割安株が強く買われた。そもそも論でいえば、PBR1倍割れ是正の議論がなくても、米国の景気が過熱を続けて引き締めを止められないかぎりは、割安な銘柄が買われやすい地合いにあったのだ。

 しかし、PBR1倍割れ是正の議論は、その効果をさらに押し上げたきっかけのひとつだったことは間違いない。

東証「起爆剤」の中身

出所:東証、智剣・Oskarグループ

 ただし、あえて言っておくが、直近では逆流現象が発生しやすくなっている。そのため、低PBR銘柄にこれまでと同様の期待を寄せるのは危険かもしれない。事実として、足元では割安株よりも成長株のほうが、パフォーマンスが良好となる場面が増えてきている。

 しかし、将来の相場や銘柄の物色がどのように変化するのかを完全に予見できる者など存在しないため、この低PBR株の選好が2024年以降も継続する可能性は残されている。なぜなら、人間は過去の成功体験や好調な状態がそのまま継続する、あるいは一旦は逆方向に物事が進んでも短期的に軌道修正されるというバイアスを持ちがちだからだ。

 こうした傾向を意識したのだろうか、冒頭で紹介したとおり、東証が新たな一手を打ってきたのだ。それが、資本効率性の改善ついて、その取り組みを開示している企業の一覧表の公表だ。

 実際に何が行われるのか、ポイントを示しておこう。

 図:東証の資本効率性の改善に対する新たな取り組み

 これは、今年、日本株を押し上げたPBR1倍割れ是正策を強化する者であり、2024年1月から毎月この一覧表を更新することにしたわけだ。

 つまり、来年以降は毎月のようにこの一覧表に掲載される企業が、市場の話題に上がりやすいことを意味している。

2024年も「低PBR」の爆上げ企業が出る…?

東証の「PBR改革」は終わらない…!Photo/gettyimages

 東証は、PBRが1倍未満か否かを問わず、東証プライム、スタンダードの上場企業全体に向けて資本効率の改善への取り組みを促す目的であることを強調しているが、投資家の目線としては、PBRが低い状態の企業への改善圧力が強くかかることは言うまでもない。

 証券会社などには、顧客である投資家から「一覧表に新たに掲載される企業を事前に察知できないか」といった旨の問い合わせもすでに来ているようだ。

 来年以降は、日米の金融政策の見通しの変化に伴って割安株から成長株への資金シフトが起こりやすいながらも、日本国内の要因として低PBR銘柄が注目されやすい環境は継続するかもしれない、ということになる。

 低PBR株の成功体験を捨てきれない投資家にとっても、まだチャンスが残っているかもしれないのだ。

 投資家として重要なのは、低PBR株の中でも、どのような銘柄がしっかりと上昇を見せたのか(これからも上昇しそうか)を見極めることにあるだろう。PBRが低いからといって、一応にすべての銘柄が上昇していたわけではないだろうから。

 後編『日本の割安株に救世主が現れた…! 東証の「起爆剤」を機に2024年に最初に仕込みたい「超割安×成長株」、全16銘柄を一挙公開する! 』では、今年の低PBR銘柄の中での傾向を把握し、来年の投資に活かす方法を考えていこう。

大川 智宏(智剣・OskarグループCEO兼主席ストラテジスト)

 
 

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