( 124176 )  2023/12/23 12:00:21  
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 プレミアム特集「2024年、日本大予測」第四回目は名物投資家・木戸次郎氏が経済相場を予測する。現状、世界経済は減速傾向にある。国際情勢が一段と不安定化しており、不確実性が高まっている。来年は日米金利差縮小を背景に緩やかな円高を見込む声が多いが、木戸氏はどう見ているのか。来春、大化けしそうな銘柄とともに解説する――。

海外投資家は円安で日本株を買い漁っている

 さて、12月から2024年はいよいよ日経平均のバブル以来の高値更新を期待している向きが多いと思う。実際に1ドル=150円近辺と極端な円安状態なので割安日本を海外投資家が買い漁るのには格好の条件が揃っているといえる。高値安定の不動産に較べれば、日本の株式はまだまだ割安であり、円安との相乗効果が最も得られる投資対象といえるであろう。

 実際に海外投資家は今年上期だけでも約4.6兆円も買い越し、下半期も加えると9兆円に手が届くところまで来つつある。円安のうちに優良で割安な日本株を買い漁っておこうと考えるのは自然な流れであると思う。さらに言えば、外資系ファンドの日本株の組入比率はまだまだ低いため、この先、引き上げられる余地が十分に残っていると考えられる。

 多くの個人投資家が誤解しているのは、目先の株の乱高下を見て「外資系ファンドの手が入った」だとか「外資系ファンドが手仕舞った」などと。まことしやかに聞こえてくる声を信じている点だ。なぜなら外資系ファンドなどの海外投資家は、銘柄の入替割合が決して高くなく、実際に3割を超えていることはほとんどない。つまり、7割はロングホールドという訳だ。だから頻繁に売ったり買ったりしていないのである。

急激な円安と物価高騰は多くの中小企業を窮地に追い込んだ

 そのことを念頭に日本の景気が本当に良いのかどうかという点について触れていきたいと思う。10月に行われた日銀の支店長会議では「海外経済の回復ペース鈍化や物価上昇の影響を受けつつも、すべての地域で、景気は持ち直し、ないし、緩やかに回復している。」としているが、本当にそうであろうか?

 前回のコラムでも倒産件数が増加していることに触れたが、中小企業には新型コロナウイルス禍で企業の資金繰りを支えてくれたはずの実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の返済が今夏~秋から始まっており、それが重くのし掛かってきているのだ。インバウンドの恩恵を受けられている観光業などの一部の業種を除けば、多くの中小企業は止まることのない海外諸国の急ピッチなインフレ状態と円安のダブルパンチで原材料費高騰の影響をもろに受けてしまっている。

 そもそも、ゼロゼロ融資というのは、企業に代わって都道府県が利子補給という形で3年間利子を支払い、元本についても返済を最大5年間据え置くことができた代物だ。多くの企業は利子の補給期間が終わり、コロナ禍が落ち着くと想定した23年度に返済が始まるよう設定していたので、今年は返済が集中することになったのだと思う。ところが、予期していなかった急激な円安と物価高騰は確実に多くの中小企業を窮地に追い込んだのだ。

公定歩合と経済成長には密接な関係性がある

 前回のコラムでもふれたように、ほとんどの期間を通じて物価というのは上昇しており、バブル後の日本のように物価が下落もしくは横ばいで推移するというのは極めて希な出来事だったのだ。世界の常識は経済成長を背景とした物価の継続的な上昇は戦後の世界経済では当たり前の事であり、成長を伴うインフレはむしろ歓迎されてきた。

 経済成長とインフレの関係性も大事だか、実は公定歩合(基準割引率および基準貸付利率)と経済成長も密接な関係性があるように思える。

 高度経済成長時の日本では公定歩合は5%~6%程度で推移していたが、1973年のオイルショックでは「狂乱物価」と言われるくらいのインフレを抑制するために9%程度まで引き上げ、その後の第二次オイルショックでもインフレ対策として9%まで上げたことがあったものの、通常は3~5%の範囲内で長らく推移していた。

 時代はバブル真っ盛りで日本中が好景気に沸いていた。ところが、バブルが崩壊すると1990年8月には6%だった金利が翌1991年には三度の利下げで4.5%になり、1992年には二度の利下げで3.25%、1993年も二度の利下げで1.75%となり、1995年にはいよいよゼロ金利となったのだ。そして、失われた30年といわれる時代がスタートしたのである。

日本経済はマイナス金利解除をしない限り停滞を繰り返す

 ゼロ金利だからこそのデフレ、経済の停滞は当然のことなのだろうと思う。今後、日本の経済が立ち直り、成長軌道に乗るためには世界の常識と照らし合わせても賃金や物価の上昇はごくごく当然のことであり、避けては通れないのである。

 植田日銀総裁にとっては、来年の春闘がカギとなってくる。なぜなら円安傾向が回避されない限り、原材料高は絶対に収まらないので、家計がきびしくなり、賃上げが強まってくる。政府の打ち出した小手先ばかりの減税などではほとんど効果など望めないので、マイナス金利解除の可能性がより高まることになってくるであろうと思う。円安、原材料高の特効薬はマイナス金利の解除だけだと断言できる。ドル安もしくはユーロ安と、円高の両面の圧力を受けやすくなってくると考えている。

 結論を言えば、日本経済はマイナス金利解除をしない限りは停滞を繰り返すこととなるだろう。マイナス金利解除と同時に、様々な投資チャンスが訪れると考えている。

 そして時代は次のフェーズに入りつつある。現在はさほど危機感は薄いものの、気になる心配事が起きつつある。

 今年の1月に海兵隊の新たな基地の開所式がグアムのアサンビーチで行われたが、これは中国との対峙(たいじ)に備える一歩だった意味合いが強い。つまり、グアムに戦力を振り向ける目的だというのだ。

木戸次郎

 
 

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