( 125969 ) 2024/01/06 13:49:26 0 00 AdobeStock
中高年の転職者が増加傾向にある。総務省の「労働力調査」の2023年1~3月期の転職者数は296万人と、前年同期と比べ34万人増加した。年齢別では「25~34歳」が74万人と当然ながら多いが、「35~44歳」が55万人、45~54歳」が52万人。中高年層が全体の3分の1を占めている。
前職の離職理由別では「より良い条件の仕事を探すため」が110万人と最も多いが、「会社倒産・事業所閉鎖のため」「人員整理・勧奨退職のため」「事業不振や先行き不安のため」の合計が全体の10%超もある。
人事ジャーナリストの溝上憲文氏は「求められるスキルと実績、そして働くことに対するエネルギーがなければ転職に成功するのは難しい」と語るーー。
実はコロナ下でIT・デジタル化が加速した結果、仕事のやり方が変化し、今まで培ったスキルが通用しない職種も登場している。対面でのコミュニケーションスキルを得意としてきた営業職の仕事も変わりつつある。例えば医薬品業界の高給で花形職種といわれたMR(医薬情報担当者)だが、最近、大手製薬会社では40代後半以降の中高年社員のMRをほぼ全員、営業職から外し、別の部署に異動させたという。内部の事情に詳しい人事コンサルタントはこう語る。
「コロナの前のトップのMRといえば、医師をゴルフや宴席に招待するなど人間関係構築力に長け、医師とのネットワークを武器に営業成績を上げる人がトップ営業マンだった。ところがコロナに入り、ガラッと変わった。トップの座を奪ったのが女性MRや若手社員たちだった」
「Zoomを使っての営業に変わったとき、医師が欲しい情報に丁寧で細かく対応できる女性MRの活躍が目立つようになった。また、ネット環境に詳しい若手社員の情報提供力が医師から評価されるようになっていった。今はある程度リアルに戻ってきたが、病院の医師は忙しく、今でもZoomが使われている。その結果、人間関係を強みに売っていた昔の営業マンたちの力が通用しなくなったのが最大の原因だ」
確かに昔のMRは潤沢な接待費を使い、高級寿司店や銀座のクラブに医師を招待したものだが、今では業界団体の規制で接待費も削られた。そしてコロナ下で医師の仕事も多忙になり、もはや人間関係で薬が売れる時代は終わったという。元々、MR職はAIの進化で医師が瞬時に医薬情報を知ることができるようになり、衰退する職業と言われていたが、それがコロナで早まっているのかもしれない。こうした人の中には退職し、転職を選ぶ人も少なくない。
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