( 126515 )  2024/01/08 13:39:44  
00

横内団地。1960年代に近隣工業地域の労働者のためにつくられた(C)日刊ゲンダイ 

 

 神奈川県の湘南地域にある横内団地は、近隣の工業地域の労働者を受け入れる目的で1960年代につくられた。30年ほど前から工業地域で働く外国人も増え、それに伴って団地には外国籍の入居者が増えてきている。 

 

【写真】布施博さんが振り返る 団地で過ごした古き良き昭和時代 

 

 訪れたのは11月の終わりごろ。乾燥した冷たい空気が肌寒く感じる夕方だった。老朽化した団地の建物は外壁がススで汚れたように黒く汚れて、西日の影になっている部分はより一層薄暗く感じられた。 

 

 団地内の公園で遊ぶ子供たちが話していたのは中国語。東南アジア系のルーツを思わせる顔立ちの子供も多く、外国人の流入が進んだ現状を物語っているようだった。 

 

 団地のはずれにあるたばこ屋の高齢の女性はこう話す。 

 

「この団地にはできた当初から住んでいます。昔は団地の夏祭りも盛大にやって、みんな楽しそうでした。けれども、子供は巣立っていき、残された人々は高齢になり、祭りに来る人も少なくなりました。屋台を切り盛りする大人もいなくなり、遊びに来る子供もいなくなったため、数年前に夏祭りをやらなくなってしまいました。本当に寂しいです」 

 

 外国人の流入によって特段困ったことはないと話すのは、50代の女性住人だ。 

 

「外国の方には日本語が通じないこともあり、ゴミ出しのルールで揉めることもあります。でも、挨拶もしますし、悪い人が多いというわけではありません。湘南という土地柄か、この団地は長らく『治安が悪い』と言われていますが、本当にそうですかね。確かに警察沙汰もありますが、悪い人はどこにでもいるじゃないですか」 

 

住宅の軒先にゴミがあふれているエリアも(C)日刊ゲンダイ 

 

 この団地はかつて殺人事件が発生し、それを境に「治安が悪い」というイメージが定着した。外国人の居住が進んだことでよりそのイメージが広まってしまったが、団地内で外国人向けの食品店を経営するベトナム人の男性店主はこう話す。 

 

「確かに悪いことをする外国人もいます。しかし、私たちが見て見ぬふりをしているわけではありません。もし悪い外国人が多くなれば、それを嫌がって良い人がこの団地から出て行ってしまいます。その前に、私たちが彼らと話し合い、犯罪など悪いことをやめるように説得しています。治安が悪くなって困るのは私たちも同じです」 

 

「治安が悪い」というウワサに翻弄されながらも、住民は日々それぞれの平穏な生活を営んでいる。 

 

 団地の敷地内には人が住んでいる気配がなく、住宅の軒先にゴミがあふれているエリアも。住民に話を聞くと、そこは老朽化が著しく建て替える予定で、住民が立ち退いた後なのだという。かつての住民が引っ越しの際に捨てていったとおぼしきゴミの山の中には、少年野球の帽子や日本人形など、当時の人々の生活を思わせるようなものもあった。 

 

■2049年までに建て替え 

 

 建て替えは2049年までを目安に、団地全体で順次行われる。新たな建物にはエレベーターを設置するなど、バリアフリー化を進める。現在の建物には洗面所と脱衣所がないため、それらを取り入れ、現代の人々の価値観に合った間取りにするそうだ。 

 

 建て替えはあくまで現在の住民の住居を確保する目的だが、建て替え後に余裕があれば新規の入居希望者を受け入れるという。工事が完了する49年にはこの地域の様子もすっかり変化しているだろう。昭和、平成を経て、令和の団地はどのような姿になっているのだろうか。 

 

 

 
 

IMAGE