( 126629 )  2024/01/08 22:44:25  
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羽田空港で炎上する日本航空機。事故発生の4分後には放水作業が始まった=2日午後、羽田空港(松井英幸撮影) 

 

羽田空港で日本航空機と海上保安庁の航空機が衝突した事故は、着陸後18分間で乗客乗員379人が脱出に成功した。乗務員が自身の役割を的確にこなした連携プレーに加え、危険が迫る中でもパニックを起こさずに乗務員の指示に従った乗客の協力も大きかったとみられる。今後の教訓にもつながりそうだ。 

 

【写真】航空機衝突事故で、日航機の脱出シューターから避難する人たち 

 

2日、Uターン客らでほぼ満席状態だった日航機には、機長(50)ら3人の男性操縦士、女性チーフ(56)ら客室乗務員が9人いた。 

 

午後5時47分の衝突後、客室乗務員はコックピットに出火を報告。機長ら3人の操縦士は火災を確認し、直ちに脱出を指示。機長はエンジンを切り、後方客室へ向かった。 

 

機内アナウンスはシステムが故障して使えなかったが、客室乗務員はメガホンと肉声で「落ち着いてください」と大きな声で叫び、乗客に呼びかけた。 

 

客室乗務員は、8カ所ある非常口のうち、左右前方と左後方の3つの非常口は出火していないことを確認。非常口の開放には本来、機長の許可がいるが、連絡がつかなかったため、客室乗務員の判断で後方のドアを開け、脱出シューターで乗客を次々と機外に出した。「順番に脱出してください」。客室乗務員は乗客に呼びかけ続けた。 

 

機長は逃げ遅れた乗客がいないか座席を1列ずつ確認し、全員が機外へ出た後、最後に脱出した。時刻は午後6時5分。衝突から18分で全員の脱出を完了させた。 

 

「上着に財布と携帯電話だけを入れて手ぶらで避難した」。乗客の男性(59)は脱出後にそう話した。乗客の10代の女性も「荷物はすべて荷物棚に入れていたのでスマートフォンしか持ち出せなかった」と話す。上着を着ていない乗客も多かったという。 

 

事故当時、機内では、荷物棚を開けようとした乗客もいたが、客室乗務員が「荷物は置いてください」と呼びかけ続け、実際に荷物を取り出す乗客はいなかったという。 

 

会社員の男性は「(出火した)後方からは悲鳴のような声も聞こえたが、前方の客はほとんどが落ち着いていた」と振り返る。機内に煙が充満する中でも、乗客は乗務員の指示に従い、落ち着いて座っていたという。 

 

乗客同士の助け合いもみられた。乗客の40代の女性によると、脱出シューターを使って滑る際、途中で詰まっていたので先に避難した乗客が降ろすのを手助けしていたという。 

 

記者会見した日航幹部は「緊急時は手荷物を持たないで脱出してほしいとお願いしているが、今回お客さまの協力が得られたことも迅速な脱出につながった」と話した。(大渡美咲) 

 

 

 
 

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