( 128256 )  2024/01/13 22:25:15  
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【新・親も知らない今どき入試】 

 

進学校の進路指導教諭は、どのような大学を評価しているのか、さまざまな視点から見ていこう。今週は「教育力が高い大学ランク」をお届けする。 

 

大学通信は毎年、全国約2000進学校の進路指導教諭にアンケートを実施し、お勧めの大学を聞いている。2023年は645校からの回答があり、アンケート項目別に5校連記で大学を記入してもらい、最初の大学を5ポイント、次を4ポイント…として集計した。 

 

教育力が高い大学ランクのベスト3は昨年と同じ順位。1位東大、2位東北大、3位京大といった難関国立大が、4位以下を大きく引き離して並んでいる。ランキング全体を見ると、この3大学以外にも難関国公立大が大半を占めていることが特徴だ。予備校関係者は言う。 

 

「充実した施設と優秀な教授に学力レベルが高い学生集団という、恵まれた教育・研究環境がそろっているのは、難関国公立大に多いということでしょう」 

 

ランキング中の大学は「入学後生徒を伸ばしてくれる大学」としても高校教諭の評価が高い大学であり、教え子の卒業後の成長を見ている進路指導教諭の実感値が、ランキングに表れている。 

 

大学を個別に見ると、東大を1位に挙げた進路指導教諭のコメントには、「前期課程(教養課程)を経て専門に移る、リベラルアーツ教育が高く評価できる」(福島・公立校)とともに、「高いレベルの研究力を背景とした充実した教育力」(長崎・私立校)を評価する教員も多い。 

 

東北大や京大も高い研究力が教育に還元されていることが評価されている。教育と研究は大学の両輪であり、教育の質は研究力の高さと密接な関係にある。そうした視点から改めてランキングを見ると、5位国際教養大、9位タイの北海道大と慶應義塾大を除き、国際卓越研究大学制度の申請大学であることがうなずける。 

 

同制度は、国の主導で10兆円規模の大学ファンドを設立し、研究力の向上を支援するもの。申請した10大学中、筑波大(11位)、東京工業大(12位)、名古屋大(13位)はランク外だが、ベスト10圏内の大学とポイント差は小さく、教育力が高い大学として評価されている。ちなみに、現時点で国際卓越研究大学として選定されているのは東北大のみであり、今後同大の評価がさらに高まる可能性がある。 

 

私立大で最上位は4位に入った東京理科大。その要因について、高校教諭は実力主義を強調する。「一定の成績を収めていないと進級できない関門制度を設け、きちんと学生を教育している」(千葉・私立校) 

 

教育力の評価が研究力とリンクするなら、理系学部のない大学は厳しい。そうした中、国際教養学部のみの国際教養大が唯一ランクイン。20位まで広げると国際基督教大(14位)と武蔵大(15位)がある。いずれも小規模で文系学部のみの大学ながら、高い教育力が認知されている。 

 

■井沢秀(いざわ・しげる) 大学通信情報調査・編集部部長。1964年2月6日、神奈川県生まれ。明治大学卒業後、受験情報・分析を主力事業とする大学通信入社。大学の入り口(入試)から出口(就職)まで、情報を収集し発信中。中高・大学受験の案内書・情報誌を編集するほか、新聞社系週刊誌、経済誌などへの情報提供と記事執筆を行う。 

 

 

 
 

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