( 129016 ) 2024/01/16 01:16:38 0 00 大阪経済法科大の藤原幸則教授(須谷友郁撮影)
能登半島地震発生から15日で2週間となった。大阪経済法科大の藤原幸則教授(都市経済論)が産経新聞に寄稿し、地震被害の深刻さが懸念される中、2025年大阪・関西万博を予定通り開催すべきかについて語った。
【写真】高層ビルを懸命に上るミャクミャク
年初に起きた能登半島地震は甚大な被害をもたらした。犠牲になられた方々に謹んでお悔やみ申し上げるとともに、被災された方々にお見舞いを申し上げたい。被災地の皆さまの安全と健康、被災地のライフラインなどの一日も早い復旧を願ってやまない。
被害の全容はいまだ把握できないほど深刻であり、連日の報道から国民の大多数が心配し厳しい状況に置かれている被災地に心を寄せていると思う。交流サイト(SNS)にも多数の人から心配や応援のメッセージや意見が発信されている。
そうしたSNSでの発信やマスメディアを通じた発言などで、筆者には気になることがある。
地震が起きた中、来年開催予定の2025年大阪・関西万博の延期あるいは中止を求める声が相次いでいることである。
日々、現地の映像がテレビやインターネットで流れ、被害や犠牲の大きさを知れば、万博を延期・中止すべきだと思うことはわからないことではない。ここで、一呼吸置いて、冷静に考えてみたいと思う。
災害の支援・復旧・復興は、直接被災された地域の辛苦や課題だけにとどめず、日本全体として重く受け止め、支援に国の総力を挙げなければならない。東日本大震災と同様に、ともに助け合い、乗り越えていくことを「息の長い国民運動」として取り組んでいかなければならない。
一方、国民や企業はマインド面で萎縮せず、通常の経済活動をしっかり行い、日本経済を支え、強くすることが被災地支援のためには必要ではないか。日本経済を強くしないと、官民の復興支援の原資(税収、民間の寄付、投資資金)も十分に確保できない。被災地支援と復興を支える日本経済の強化は、車の両輪だと考える。その意味から、万博で登場する新しい技術やシステムを社会に実装し普及させていくことで日本経済の成長に生かすことがますます重要になっていると思う。
これまでの大震災、そして能登半島地震の経験から、災害の脅威から人間の「いのち」をいかに守り、復興の中で「いのち」をどう輝かせるかということは、万博のテーマの「いのち輝く未来社会のデザイン」を描くことであり、その重要性を再認識する必要があろう。また、万博に被災地復興に向けてアピールする場も設けてはどうだろうか。長期にわたる復興の過程では風化と風評が障害になりうるので、その防止にも寄与できよう。
地震があったから万博を延期・中止するのではなく、むしろ、予定通り開催することで、被災地支援と復興を支える日本経済を強化することが、今、万博に期待される役割だと強く考える。
◆ふじわら・ゆきのり 昭和32年、大阪府生まれ。大阪大大学院法学研究科博士課程前期修了。関西経済連合会理事、アジア太平洋研究所主席研究員などを経て、令和3年から現職。専門は都市経済論、地域経済論。
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