( 130824 )  2024/01/20 23:09:30  
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写真提供: 現代ビジネス 

 

 「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けない」――という言葉がある。この言葉を想い起こしたのは、直近のメディア世論調査の結果に接した時のことだ。 

 

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 先ず、共同通信調査(1月13~14日実施)。内閣支持率が前回比5.0ポイント増の27.3%、不支持率は7.9P 減の57.5%。NHK調査(12~14日)は内閣支持率3P増の26%、不支持率2P減の56%。そして時事通信調査(12~15日)が内閣支持率1.5P 増の18.6%、不支持率4.2P減の54%。依然として3社調査ともに不支持率が支持率を大幅に上回る。 

 

 次は政党別支持率のうち自民党と野党第1党・立憲民主党の支持率の比較である。共同通信:自民党前回比7.3P増の33.3%、立憲民主党同1.2P減の 8.1%。NHK:自民1.4P増の30.9%、立民2.1P 減の5.3%。時事通信:自民3.7P減の14.6%、立民0.9P減の3.5%。 

 

 数値に目を凝らすと驚くばかりだ。内閣支持率は共同、NHKともに20%台後半に上昇し、低い数値が出る傾向の時事も僅かながら上昇に転じた。さらに自民支持率は共同とNHKが30%をクリア、立民支持率は下落した。共同調査で自民支持率は立民のほぼ4倍、NHK調査が約6倍の差に拡大したのだ。 

 

 元日のマグニチュード7.6の能登半島地震と2日の羽田空港での日本航空(JAL)機衝突といった天災と人災の直撃を受けた岸田文雄政権。加えて、昨年末来の東京地検特捜部による自民党安倍派の政治資金パーティーを巡る政治資金規正法違反(不記載・虚偽記入)事件捜査で「政治とカネ」問題が連日連夜、テレビのワイドショーでも報じられてきたのに、この数値は一体どう理解すればよいのか。 

 

 その解はある。そう、立憲民主党を始めとする野党の岸田政権・自民党追及が有権者一人ひとりの心に響かなかったのだ。西側諸国のウクライナ支援疲れならぬ、野党の相も変わらぬ同じパターンの政権批判に疲れてしまったのではないか。野党の責任大である。 

 

 岸田首相批判のなかでよく耳にする言葉に「ブレる岸田」がある。捻くれた言いようだが、「ブレ、ブレ続けることにブレない岸田」とも言いうる。換言すれば、「鈍感力」になるだろうがこれまた「肝が太い(据わっている)」とも言える。 

 

 

 要は、めげることを知らない岸田氏が9月の自民党総裁任期満了まで政権を維持する可能性が高いということである。筆者はこれまでに、岸田氏が4月頃に「派閥解体」を掲げて衆院解散に打って出る可能性を含め、自民党内からの「岸田降ろし」による政権瓦解の確率は殆ど無きに等しいと述べてきた。 

 

 すなわち、岸田政権の先行き見立てでは少数派であり続けた。そして「岸田に甘い」との指摘も受けた。だが、岸田氏の政権維持意欲に関わる小さなファクトを拾いながら、それをジクソーパズルのように埋めていくと見えて来る光景から、同氏の胸中を推し量ってきたつもりだ。その結果、岸田氏は決して「めげない人」に行き着いたのである。 

 

 では、具体的に何なのか。第1に、岸田政権個々の単発の政策は決して間違っていないということだ。確かに「新しい資本主義」というキャッチフレーズは意味不明である。しかし、「コストカット型経済からの脱却」はよく吟味すれば理解できるし、「賃上げを全てに優先する」も論を俟たず全く正しい。 

 

 事実、3月の春闘で賃上げ目標の4%もリアリティを帯びつつあり、名目経済成長率も昨年末の政府発表「24年度経済見通し」で示した3%達成も可能である。日本銀行の物価目標2%も政府の潜在成長率目標1%も同様である。この「4・3・2・1」を目指した上にベースアップ3%が視野に入ったからこそ、たとえ瞬間風速とはいえ東京証券取引所の日経平均株価が3万6000円超と成ったのだ。 

 

 岸田政権の鳴り物入りだった総合経済対策が国民に浸透しなかったのは、突然降って湧いた所得税定額減税が悪評芬々だったからだ。国民は賢明である。それは世論調査が証明している。所得税減税を「評価しない」と回答した人はその理由に「減税の次に増税が控えている」「将来の国家財政が心配だ」を挙げている(共同通信調査)。 

 

 問題は、「聞く力」ではなく一にかかって岸田氏の「説明力」と「発信力」である。それが問われる場は、1月26日召集の第213回通常国会の衆参院予算委員会における「政治とカネ」に関する集中審議(29日)、首相施政方針演説など政府四演説(30日)、各党代表質問(31~2月2日)だ。続く5日からの衆院予算委員会が正念場である。 

 

 そこで岸田氏が自分の言葉できちんと説明し発信できれば、当分間、政権賞味期限を心配する必要が無くなるはずだ。果たして如何に。 

 

歳川 隆雄(ジャーナリスト) 

 

 

 
 

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