( 130854 ) 2024/01/20 23:41:47 0 00 株式投資は難しいと実感
新NISAも始まり、株式市場も活況を呈しているが、「個別株投資がことごとくうまくいかない」と嘆いている投資家もいる。ネットニュース編集者の中川淳一郎氏もその一人。株式投資で大損しているわけではないが、「きっとこの株は上がるはず!」という予想が当たったためしがないのだという。中川氏が自身の株式投資の経験を振り返る。
【写真】まさかアクリル板をつくる会社の株が上がるなんて!
* * * 実は私、10年ぐらい前から株式投資をやっています。その間、日経平均株価は2倍以上に上昇しており、「史上最高値更新の日も近い!」なんて言われていますが、私の戦績はというと、1000万円の元手が今は1100万円になった程度です。黒字にはなっているものの微々たるもの。黒字になった株は、「数日前より下がっているけどこの会社の実力ならその数日前のレベルにはすぐ戻るだろう」とあまり深く考えずに買った株です。日清食品ホールディングスやNTTドコモ、トヨタ自動車などがそれに当たります。
しかしながら、「これからの社会はこう変わるだろうから、関連企業であるこの会社の株は上がるはずだ!」というひらめきや予想が当たったためしがない。
まず、2015年に電通グループの株を買いました。日本一の広告会社である電通は、翌年に迫ったリオオリンピックで多くの売り上げが見込まれていました。2018年のサッカーワールドカップロシア大会もあるし、さらに2020年には東京五輪もある。もう、電通に死角はないはずだ!といった気持ちがあったのです。
ところがリオ五輪が始まってもなかなか株価が上がってくれない。それどころかジワジワと下がり続け、4900円ほどだった株が3900円台になってしまった。その後5000円近くまで復活したりはしたのですが、その頃忙しくて証券会社のサイトにアクセスをしていなかったところ、パスワードを長期間変更していないということで利用制限がかかってしまいました。そうなると完全放置という段階が続き、今に至っています(現在の株価は3900円前後)。
電通の場合は、確かに五輪とワールドカップで多額の売り上げはあるでしょうが、マスメディアの広告費が右肩下がりになっているわけで、株価が急に跳ね上がるような状況になかったのでしょう。なにしろ本業は広告の仲介業なのですから。
2つ目はJVCケンウッドの株です。2017年6月、東名高速道路で「煽り運転事故」が話題になりました。当時、テレビの情報番組はしきりとこの件に時間を割き、乱暴な運転や恫喝する様子を長々の動画を放送し続けたのです。この時、カギとなったのが被害者や傍観者のドライブレコーダーの映像でした。
セキュリティの専門家が「これからは自動車にはドラレコが必須です。被害を訴える時の明確な証拠になります」と言っていたこともあり、「これからはドラレコメーカーが来る!」と考えたのです。そこでケンウッドの株を買ったのですが、想定したより上がってくれない。挙句の果てには下がり始める。なんとか黒字になるタイミングで売ることはできたものの、儲けはわずかでした。
他にもベンチャー社長がしきりと持ち上げていたユーグレナの株も買ったことがあるのですが、やはり上がってくれなかったです。
まぁ、私自身、株式投資の才能はないのだと自覚しています。3台のモニターをズラリと並べてチャートの動きを注視し、「今だー!」とやる程熱心になれるとも思わない。仕事も忙しく本腰を入れるわけにもいかないので、株は老後の楽しみにしようかな、という程度です。
しかしながら新型コロナウイルス騒動でアクリル板を作る会社の株価が一時期上がったのは、「さすがにそんな予想できねぇ~」と驚きました。まさかウイルス対策でアクリル板がバカ売れする日が来るなんてことは、想定の範囲を大きく超えていたからです。
こうして過去の経験を書いてきましたが、そうはいってもいまだに「これからの社会の風潮はこう変わる! だからその関連株は上がるはずだ!」なんてことを思ってしまうわけです。
たとえば外国人観光客に人気の北海道・ニセコでは人手不足のため飲食店やホテルのバイトが深夜は2000円を超えたりする、という報道を見ました。すると、「ニセコで事業を展開しているホテルチェーンの株がいいのか?」などと考えてしまう。あとは全般的に外国人観光客が今後も増加することが考えられるだけに、「鉄道会社や外国人に人気のチェーン店の株もいいのでは?」……なんて考えが浮かんでくる。
しかし、世の中何が起こるか分からないし、何が起こらないかもわからない。となれば、自分の才能のなさと嗅覚の鈍さを理解したうえでコツコツとやっていくしかないのかな、と思います。
【プロフィール】 中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など多数。最新刊は『日本をダサくした「空気」』(徳間書店)。
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