( 130939 ) 2024/01/21 13:15:43 0 00 東京地検刑事部副部長、同公安部長などを歴任した若狭勝弁護士
安倍派「5人衆」の立件は断念――。自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる事件で1月19日、安倍派の大野泰正参院議員や谷川弥一衆院議員、派閥の会計責任者らが在宅や略式で起訴されたと報じられた。池田佳隆衆院議員に続く国会議員の立件だ。ただ、東京地検特捜部は安倍派幹部については困難と判断し、一連の捜査は一段落したと見られている。こうした動きについて、東京地検特捜部元副部長の若狭勝弁護士は「国民からの批判は免れない」との評価だ。
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政治資金パーティーをめぐる問題では、公訴時効にかからない一昨年までの5年間で、最大派閥の清和政策研究会(安倍派)が計6億円超、志帥会(二階派)では計2億円超に上る裏金があったことが明らかになった。そして、岸田文雄首相が長く会長を務めてきた「宏池政策研究会」(岸田派)も約3千万円の収支を政治資金収支報告書に記載していなかった疑いが持たれている。
■会計責任者との共謀を立証できない
派閥の会計責任者はいずれも特捜部の調べに対し、不記載の関与を認めているようだ。また、特捜部は会計責任者と共謀した疑いで、国会議員への取り調べも進めていた。安倍派幹部「5人衆」の西村康稔前経済産業相、松野博一前官房長官、高木毅前国対委員長、世耕弘成前参院幹事長、萩生田光一前政調会長も昨年末までに特捜部の事情聴取を受けているという。
ところが、捜査のメスは幹部へ食い込むことなく、特捜部は19日に一連の刑事処分を出し、捜査は区切りを迎えた。幹部らの主体的な関与を示す十分な客観証拠もなく、会計責任者との共謀は問えないと判断したとみられる。
永田町の関係者によれば、安倍派はこれまで、二十数年にわたり裏金作りを行ってきたという。派閥会長でみると、森喜朗元首相が務めていた2000年前後から始まっていたとされている。
検察関係者は「安倍晋三元首相が『あの仕組みはやめるべきだ』と語ってから、裏金作りは一時中断になったが、その後、システムは復活した。そのときに、会計責任者と幹部が打ち合わせをして、幹部から指示などのアクションがあったのではないかとみて捜査を続けていた」と語る。
若狭弁護士は当初、「在宅でもいい。安倍派の幹部一人を起訴できれば合格点」と語っていたが、今回の幹部の立件は断念したとされる検察の捜査について、
「“銅メダル”にも達しないレベル。国民からの批判は免れない」と厳しく指摘する。ただ、池田議員の逮捕や大野、谷川議員らの立件を踏まえ、「入賞レベル」とした。
若狭弁護士は、特捜部が安倍派幹部の立件を見送った背景に、過去の事件があるのではと見ている。
「私が現役だった2004年に、担当した日本歯科医師連盟の1億円闇献金事件で、元内閣官房長官で自民党元衆院議員の村岡兼造氏を在宅起訴しました。二審・東京高裁は有罪になりましたが、一審・東京地裁では無罪でした。検察としては、かなりショックな出来事でした。それもあって今回も相当慎重になったのでは」
今回の裏金問題では、特に安倍派の「5人衆」に注目が集まったが、キックバックが明らかになったり、疑惑が報じられたりしている議員は他にもいる。
閣僚経験者をあげても、元五輪相の橋本聖子氏は自身の裏金について「2057万円だったと思う」と明らかにし、「議員を続けていく中で責任を果たしたい」と議員辞職を否定した。同じ元五輪相の丸川珠代氏にも700万円の裏金疑惑が指摘されたが、取材には応じず、去っていく様子がテレビ局のニュースで報じられた。安倍派の事務総長経験者で元文部科学相の下村博文氏も約500万円との疑いが出ている。
■報告義務ない政策活動費、二階氏に5年で約50億円
また、今回の特捜部の動きについて、
「全国から人が集められていたので、もしかしたら裏金問題以外に何か捜査をしていたのではないでしょうか。ちなみに、政策活動費については約20年前に、特捜部内で問題視されていたので、動きがあっていいと思います」
との見方を示した。
政策活動費とは、政党が議員に支出し、その使い道を政治資金収支報告書などで明らかにしなくてもいい金だ。一日で億単位が動くこともあり、各政党のうち自民党が約456億円と最多額となる。なかでも、自民党の幹事長を二階俊博氏には、5年間にわたって約50億円が支出されていることが朝日新聞の集計で明らかになっている。
若狭弁護士は、
「繰り返しになりますが、特捜部は裏金問題以外でも動いているはずなので、今年の通常国会後に期待します。長期間で見て、検察が『やりきった』と言えるところに落ち着けたらいいと思っています」
と期待を込めた。
(AERA dot.編集部・板垣聡旨)
板垣聡旨
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