( 131242 )  2024/01/22 12:38:56  
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(左)体が不自由な母親を抱きかかえてトイレから出る大谷佳代さん。寝たきりの母親をベッドから車椅子に移し、トイレの近くで抱き上げる一連の作業は重労働だ(右)夕食の準備を進めながら、小学生の長女の勉強や宿題も見ている=いずれも広島県呉市で、郡悠介撮影 

 

 子育てと家族の介護がいっぺんに重なる「ダブルケア」に直面する人が、全国に少なくとも29万3700人いることが判明した。毎日新聞が国の統計から推計値を独自に分析した。9割を30~40代の働く世代が占め、離職を迫られる人も少なくない。超高齢社会や晩婚・晩産化を背景にダブルケアが広がり、社会を支える現役世代により重い負担がのしかかっている実態が浮き彫りになった。 

 

【図でわかる】ダブルケア、1日の流れはこうなる 

 

 国が15歳以上を対象に5年に1度実施する2017年の「就業構造基本調査」は、子育て中の人が1111万9500人、家族を介護する人は627万6300人とそれぞれ推計する。 

 

 毎日新聞は公的な統計の民間活用を認めた統計法に基づき、17年調査からダブルケア人口を抽出するオーダーメード集計を独立行政法人「統計センター」(東京都)に委託した。 

 

 その結果、17年時点でダブルケアを担っているのは29万3700人。育児をしている人の38人に1人は介護も抱え、全体の1割は未婚による出産や離婚を経て独り身の状態だった。 

 

 ただし、就業構造基本調査は子育ての対象を未就学児に限っており、実際のダブルケア人口はさらに膨らむ可能性が高い。 

 

 また、ダブルケアに直面する人のうち20万3700人が過去に離職を経験し、35%はその原因に育児や介護を挙げた。 

 

 ダブルケアを巡っては16年、内閣府が12年の就業構造基本調査に基づき、全国に25万3000人が存在するとした初の推計値を公表した。国はこれを最後に詳細な分析をしておらず、毎日新聞が同様の手法で調査を実施。12~17年の5年間だけでも4万人増えたことが明らかになった。 

 

 支援に取り組む一般社団法人「ダブルケアサポート」(横浜市)によると、ダブルケアを担う人たちは体力面や精神面のみならず経済的な負担を強いられるが、社会の理解や行政のサポートは乏しい。【斉藤朋恵、井手千夏】 

 

 ◇ダブルケア 

 

 育児と介護が同じ時期に生じる境遇を意味し、この実態と課題を研究する横浜国立大の相馬直子教授と英ブリストル大の山下順子上級講師が2012年に提唱した和製英語。公式な定義はなく、広い意味では家庭内で2人以上の介護などを抱えている状態に使う場合もある。大学生までの子どもを持つ30~55歳の男女約1万7000人を対象に大手生命保険会社「ソニー生命」が実施した18年の調査によると、3割がダブルケアを経験したと回答。その期間が10年を超えているケースもあった。 

 

 ◇ご意見と体験お寄せください 

 

 子育てと介護をいっぺんに迫られる「ダブルケア」は、誰にでも起こりえる社会の縮図です。ご意見や体験をお寄せください。毎日新聞大阪社会部ダブルケア取材班のメール(o.shakaibu@mainichi.co.jp)までお願いします。 

 

 

 
 

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