( 131953 ) 2024/01/24 13:36:05 0 00 浮上のきっかけがつかめない岸田総理
60年以上の歴史を誇る派閥を解散するという大きな決断は吉と出るか、凶と出るか。1月21日までに各社で行われた世論調査を見ると、岸田文雄総理の「宏池会解散」という乾坤一擲は国民の理解を得られていないように見える。では、長く宏池会に在籍し、総理を支えてきた「ご意見番」の目には一連の総理の言動がどう見えているのか。
【写真】元側近かく語りき!なぜ岸田総理は支持されないのか
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まずは今回の世論調査の結果について整理しておこう。
読売新聞社が19日から21日にかけて実施した世論調査によれば、岸田内閣の支持率は24%で、昨年12月の調査から1ポイントダウンという結果となった。内閣不支持率は前回から2ポイント改善されたものの、61%と依然として高い水準となっている。
朝日新聞社による20日、21日の世論調査でも内閣支持率は23%、不支持率は66%。自派閥を解散という大きな決断をした割に、支持率は上がっていないのだ。
「国民に見透かされているということでしょう」
と語るのは、03年に初当選後、2期目から宏池会に所属してきた三ツ矢憲生・前衆議院議員。2021年に政界を引退後、現在は宏池会のご意見番として、議員らの相談に乗っている。
「宏池会解散は岸田さんの思いつきのパフォーマンスという面が強かったと思います。支持率が低迷する中で“岸田もやるときはやる”という姿勢を見せて、あわよくば支持率を上げようという思いがあったのでしょう。今回の件は宏池会の前会計責任者が立件されることになったことが引き金になったのは間違いありません。立件されれば、岸田さんが宏池会会長だった時の事案となるので、自分に累が及ぶ可能性がある。それを避ける意味もあったはずです」
他派から先んじる狙いもあったという。
「同じく捜査対象になっている安倍派や二階派が先に解散を打ち出す可能性もあったので、機先を制したのでしょう。政治刷新本部の結論が出ない中で、岸田さんの派閥解散表明は政治資金の問題を派閥の問題に矮小化させているように感じます。まもなく国会が始まりますから、国会での追及逃れのためという考えもあったでしょう」
宏池会は池田勇人元総理が1957年 に創設し、自民党でも最古の歴史を誇る。
「中堅、若手議員の中で宏池会について真面目に考えてきた議員ほど困惑しています。誰かに誘われて入会した人だけでなく、政策に共鳴して入っている人もいて、そうした政治家は戸惑っているのです。しかし、振り返ると、岸田さんが宏池会の理念を語っているところを見たことがなく、『宏池会愛』は残念ながら感じられません。だから、防衛費増など政策面で安倍路線を踏襲してしまう。そもそも岸田さんは派閥をすでに離脱しています。自民党総裁として他派にも解散しましょうと呼びかけるなら話は分かりますが、どういう資格で宏池会解散を決断されたのでしょうか。結局、政権の延命が狙いだと思われても仕方ありません。自民党をどうしたいのか、という思いが伝わってこないのです」
派閥を解消して問題が解決されるわけではないという。
「これは政治の構造の問題です。本当に解消するには、地方にまで手を突っ込まないといけない」
一体どういうことか。
「いまの政界にはいわゆる小泉チルドレンや安倍チルドレンといった時の政権のブームという“風”の力を借りて当選してきた議員が多くいます。彼らは当選するための地元の組織を持っていない。では誰に頼るのか。地元の県議や市議らです。最初の選挙では彼らに頼らざるを得ない。ですが、彼らもタダでは動きません。県議選の時には、県議が国会議員との2連ポスターを作り、国会議員がポスター代などの費用の一部を負担するという話も聞きます。そこまでしないと地方議員が動いてくれない。河井克行・案里事件の時には地元県議らに金がばら撒かれた。選挙には金がかかるということです」
また、政治家は日常的にもお金がかかる。
国会議員は基本的に公設秘書以外の給与は議員側で出さねばならず、公設以外の秘書を数人抱えているというケースも珍しくない。地方になると、選挙区が広いので、事務所を複数構えなくてはならず、そのための家賃、秘書も必要になる。車のリース代や維持費もかかる。
「今回の裏金がこのような使われ方をしているのかはわからないとはいえ、“政治は金がかかる”のが諸悪の根源です。そこから正していかないと、金集めという意味で同じ問題がまた起こるのではないでしょうか」
そもそも、現代政治における派閥の意味とは何なのか。
「かつて、冷戦時代には国民は社会党に政権をとらせようと思っていませんでしたから、自民党の中から選ぼうという意識が強かったと思います。さらに当時は中選挙区時代です。同じ自民党なのに、同じ選挙区から考えの違う候補が複数立候補していました。自民党内でリベラルな人、右寄りの考えの人がいて、それぞれが派閥に所属し、切磋琢磨していました。それぞれが派閥に属しながら候補者の色を出してきたのです。しかし、いまは小選挙区制になり、そうしたこともなくなり、政治家の“色”も薄まっています。派閥は政策集団と名乗っていますけど、いまの派閥では政策なんか作ったことありませんよ」
そして、いまこそ自民党を二つに割るべきだと言う。
「今後、派閥のように金を集めるかはともかく、自民党内で新たなグループができてくるでしょう。政治家は必ず群れるものなのです。本当に志のあるグループができればよいですが、かたや、小選挙区制であることに変わりはなく、しかもいまの野党には政権担当能力はありません。だからこそ、自民党をふたつに割って、二大政党制を作り、競いあっていくべきです。党の割り方はいろんな考えがあるでしょう。右寄りかリベラルか、大きな政府か小さな政府か、という考えもあります。まずは二大政党を作れば、野党はどちらかについてくる。政権を取られるかもしれない、という危機感があれば政治家はみな真面目に働くようになりますよ。そうならないと、いつまでもいまの自民党のまま。変わらないですよ」
デイリー新潮編集部
新潮社
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