( 132464 )  2024/01/25 23:15:45  
00

元日に結婚報告をしていたヒカキンさんが文春により二股疑惑と報じられ、即日で謝罪しました。一連の経緯には波紋が広がっています(写真:「HikakinTV」の動画より) 

 

 今週、「松本人志さんに続く文春砲か」として大きな反響を集めたのが、「国民的YouTuber」と言われるHIKAKINさんの「二股疑惑!?」でした。 

 

【写真】報道が出た当日、自身のチャンネルで深々と頭を下げたヒカキンさんですが、「そもそも謝罪の必要はあったのか」との声も多数出ることに 

 

 記事の見出しは、「『まだ付き合っていると思ってた…』ヒカキン(34)結婚に‟二股”疑惑!?  交際相手のA子さんが悲しみの告白『彼は私とは特別な関係だと』《ツーショット写真多数》」。 

 

 二股、悲しみの告白、ツーショット写真多数……いつもながら刺激的なフレーズが並び、“聖人”と称えられるHIKAKINさんの好イメージとのギャップもあって、反響が大きくなるのは当然でしょう。 

 

■ヒカキンさんの謝罪、賞賛がこの問題の本質ではない 

 

 ただ、HIKAKINさんは報道されてすぐに、黒のスーツ姿で深々と頭を下げての謝罪動画をアップ。かつて交際していたA子さんに「当時の僕の至らない振る舞いで傷つけてしまい、本当に申し訳ございませんでした」と謝罪しつつ、「僕の落ち度でしかありませんので、A子さんや週刊誌への誹謗中傷はお控えいただきたいと思います」と両者をフォローしました。 

 

 さらに、「約4年間、A子さんとはお会いしておりません。ですので『先日結婚を発表した妻とは交際期間がかぶっていない』ということを申し上げさせてください」「結婚早々に当時の僕の至らない行いのせいで妻を巻き込んでしまったことを謝罪し、許してもらいました」と釈明すべきところは、過不足なくきっちり釈明。現在400万回を超える再生数を記録しながら収益化していないことも含め、そのスピーディーかつ誠実な対応に称賛の声が集まっています。 

 

 ところが、今回の報道における本質はHIKAKINさんへの称賛ではないでしょう。その他にもさまざまな声が飛び交っていて、それこそが現在の生きづらい社会を象徴していたのです。 

 

 では、ネット上にはどんな声が挙がっているのでしょうか。 

 

 前述した記事のYahoo! ニュース・コメント欄を見ると最上位は、 

 

 「まあ、逃がした魚があまりにも大きすぎて引きずるというか現実を受け入れていない受け入れない感じかな。ヒカキンも多少ズルズルした感じもするけど何年もろくに交流していないのだから当然のことだわな。ある意味流行りのリベンジハラスメントかなと思う」 

 

 

 このコメントに多くの「共感した」が押されていることから、週刊文春の記事をしっかり読んで、一般論として冷静に書いた様子がうかがえます。このように交際や別れ方について論じる声が目立ちましたが、これらの人々はHIKAKINさんとA子さんの行動をスキャンダラスなものとして見るのではなく、よくあるエピソードとして客観視できているのでしょう。 

 

 続いて「共感した」が多かったコメントは、 

 

 「『″二股″疑惑!?』って、疑問形にしたら名誉毀損にならないとか文春は思ってませんか。どう見てもA子さんが別れた後も自分を彼女と思い込んでいただけの話でした。(中略)ヒカキンの付き合い方も褒められたものではないですが、世間から糾弾されるような内容ではないと思います」 

 

 2人は2015年から3年間にわたる交際のあと別れ話があり、その後コロナ禍で自然消滅して4年間会っていないのだから二股とは言いづらいこと。それにもかかわらず疑問形で記事にすることを疑問視しています。 

 

 さらにこれ以降のコメントは、記事に対する疑問が続きます。4番目にピックアップされていたコメントは、 

 

 「事実でもないのに、記事にされたら謝罪しなければならないっておかしな話だよ。ヒカキンさんもA子さんとの交際期間と、今の結婚相手の方との交際期間は被ってないと言ってる。(中略)それにしても、この告発報道を、結婚発表してお祝いムードの最中に出してくるところにいかにも文春の闇や策動が透けて見える」 

 

 “記事にされたら謝罪しなければいけない”という風潮と、新婚に水を差す記事のタイミングへの不満が見られます。 

 

■疑いはネットメディア全体に及ぶ 

 

 5番目のコメントも、 

 

 「A子さん『自然消滅みたくなっていって…』と言ってます。自然消滅てわかってるやん。(中略)そしてこういう時に、付き合っていた当時のザ・プライベートな写真を何枚も週刊誌に渡している時点でこの女性の肩を持つ気には到底なれない。よくこんなの文春出したな…そうか、そういうことなんだな、文春さん。あっちの方にも影響するよ、この記事は」 

 

 

 こちらはA子さんへの疑問と、報じた週刊文春への不信が感じられました。“あっちの方”とは松本人志さんに関する記事のことであり、「不信感として悪い意味で関連付けてしまうよ」という警告のようにも見えます。 

 

 8番目のコメントも、 

 

 「このタイトルは個人的に悪意があるように感じた。ずっと気になっていたが、仮にクリック数で文春等の執筆側に収益が入るシステムだとしたら、タイトルはどんどん過激になるし、いわゆる釣り記事と呼ばれるような内容や質が低い記事が、今後ますます有象無象に生まれてくるのではないだろうか。yahooニュースも記事をただ掲載するだけじゃなくて、記事の質を上げていくことを今後は進めてほしい(後略)」 

 

 週刊文春のみならず週刊誌全体、ひいては、ネット記事全体や配信システムにまで疑いの目が及んでいることを感じさせられました。 

 

 当該記事に1000件以上ものコメントが書き込まれる中、上位にこのような声が集中し、多くの「共感した」が押されていたのです。 

 

 さらに実業家の三崎優太さんが自身のXにつづった「4年も会ってない元カノに完璧な謝罪するのは変だよね」「これが名誉棄損だって言えない社会の歪みってマジでおかしいと思う」、堀江貴文さんが自身のYouTubeチャンネルで「全然、根拠もない何年も昔の話を今さら奥さんもいるのにあえてこのタイミングで出している」「人のスキャンダル、それもあるようでないスキャンダルを捏造して自分たちの金を稼ぐ。最低だ、お前ら」などと語ったこともネットメディアが報じ、おおむね同意のコメントが寄せられました。 

 

■「この記事では読まない」という選択肢 

 

 これほど謝罪した当事者への批判が少ない記事も珍しく、だからこそ「なぜこんな内容を報道したのか」「HIKAKINさんがチャンネル総登録者数1200万人超のYouTuberだとしても“有名税”と割り切れるものではない」という論調になっているのでしょう。 

 

 結果的にHIKAKINさんが謝罪せざるをえなかったことを疑問視するのは自然な感情であり、「世間の中には冷静にネット記事を見られる人々が増えているのだな」と感じさせられました。 

 

 

 とはいえ、今回の記事を読んで雑誌が売れ、PVが増えたら、発行元の狙い通りになるだけであり変化は望めないでしょう。まずは見る側がその仕組みや、公共性の薄い内容が混在していることを理解し、「この記事では買わない。クリックしない」という選択肢を持つようになること。さらに、報じた側の名誉毀損による損害賠償額を、実情や感情に合わせて適正化することで、「メディア報道を見直してもらう」という時期に来ているのかもしれません。 

 

 逆に言えば、「見る側の意識や司法が変わらなければメディア報道は変わらず、ますます生きづらい社会になってしまう危険性が高い」ということ。今回の記事は、HIKAKINさんという有名人の記事である一方で、身近に感じられるエピソードでもあり、自分の人生に重ねて生きづらさを感じ、暗い気持ちになりやすいものでした。 

 

 また、冷静に記事を見られる人々が増えたとはいえ、「いい気味だ」などという負の感情が芽生えてしまう人が多いことも、いまだ事実でしょう。それも生きづらさを感じてしまう理由の1つであり、さらに批判的な声をネット上に書き込む人はもっと深刻。瞬時のストレス発散にしかならず、心の中に「会ったこともない他人を叩いた」という負の感情が蓄積され、少なからず自分の人生に悪影響を及ぼしていくものです。 

 

■ハードルが上がる“別格”の文春砲 

 

 誤解のないよう最後に書いておきたいのは、今回の記事は「決して週刊文春だけがよくない」というわけではないこと。前述したように、「見る側の意識や司法にも課題があり、それを利用する形でビジネスとして稼ぐ」ことを一概に否定することは社会として危険だからです。 

 

 また、いわゆる“文春砲”に期待している人が増えたからこそ、疑問や不満の声が挙がっているところもあるのでしょう。今回のコメントを見ていても、「文春には社会の闇を暴き、権力に守られている悪を糾弾してほしい」というニュアンスのコメントが散見されました。芸能人やYouTuberのプライベートではなく、もっと公共性・公益性の高いスクープを求めている様子がうかがえます。 

 

 

 
 

IMAGE