( 132627 )  2024/01/26 13:24:25  
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自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる事件が相次いでいる。

岸田派、安倍派、二階派などの最大派閥が解散することになり、会計責任者は異例の処分を受けている。

政治資金規正法違反で略式起訴された議員もおり、政治不信が高まっている。

自民党の支持率も低迷している。

特に安倍派の裏金問題により国民の不信が募っており、岸田首相による派閥の解散は信用されないとの声がある。

岸田首相は、派閥解散を表明した後に関係者との連絡を取らず、麻生氏らとの信頼関係に不安が広がっている。

この一連の動きから、麻生氏の政治的影響力が浮き彫りになっており、彼の行動力や影響力が際立っていることが伺える。

逆に岸田派らは大きな決断をしたかのように振る舞っているが、実態は変わっていないとの指摘がある。

派閥解散の結果、新たな集団を作る考えも示されており、政治刷新本部も派閥の存続を容認している。

この状況下で、岸田首相の主張が国民に受け入れられるかは疑問視される一方で、麻生氏の行動力には「胆力」があり、政治家としての信頼を得ているとの考えが示されている。

政治家の信用が失墜する中、麻生氏の行動は目立つが、岸田首相の信用については懸念の声が上がっている。

(要約)

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 自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる事件を受けて、岸田派に続き、最大派閥の安倍派や二階派も解散することになった。安倍派と二階派の会計責任者は在宅起訴、岸田派の元会計責任者は略式起訴されるという異例の事態だ。 

 

 他にも、政治資金規正法違反の虚偽記載の罪で谷川弥一 衆議院議員が略式起訴され、自民党を離党し、議員辞職することになった。大野泰正参議院議員が在宅起訴され、離党している。 

 

 それもあってか国民の政治不信は、頂点に達している。時事通信が実施した1月の世論調査で自民党の政党支持率は14.6%で、1960年6月の調査開始以降で、野党だった期間を除き最低を記録したという。 

 

 元プレジデント編集長で作家の小倉健一氏は「自身が派閥から離脱した後で『派閥解散』を言い出す岸田首相は信用ならない」と非難するーー。 

 

 茂木敏充自民党幹事長は、安倍派幹部の政治責任を求める声が(1月22日開催の政治刷新本部において)複数あったとして「政治責任のあり方も国民の信頼に大きく関わる」(1月23日)と何らかの処分の必要性を匂わせている。 

 

 岸田文雄首相は「国民の政治に対する信頼を損ねるもので、極めて遺憾だ。自民党総裁としておわびしたい」と述べている。しかし、残る麻生派や茂木派、それに森山派は「適切に対応していた派閥まで解散する必要はない」として、派閥を存続させる意向を示している。 

 

 岸田首相が岸田派の解散を表明したのが1月18日。その夜に、麻生太郎自民党副総裁が岸田首相へ携帯電話をかけた。 

 

 「首相の携帯電話を鳴らした麻生・党副総裁の声は硬かった。/自民党内の派閥解散などについて/『こちらは逮捕も起訴もありませんから、派閥を続けますよ』/麻生氏は自ら率いる麻生派が今回、立件対象とならなかったことに触れ、こう強調した。首相は『うちの派に問題があり、けじめをつけます。麻生派は麻生派で』と応じ、異論は差しはさまなかった。/首相は派閥解散を巡り、他派閥の領袖(りょうしゅう、トップのこと) への根回しはしなかった。茂木派会長の茂木幹事長はこの日、麻生氏と連絡を取った後、『こんな大事なことを相談なしにやるなんて」と周辺に不信感をあらわにした』/(自民党)中堅議員は、主流派の麻生、茂木両派から反発が出ていることに懸念を示した。『円滑な党運営のためにも、首相はせめて麻生さんには事前に了解を取った方がよかった』」(読売新聞、1月20日) 

 

 麻生氏との隙間風に恐れ慄いたのであろう。1月21日に、首相は「手打ち」の会を東京・虎ノ門のホテル「The Okura Tokyo」にある日本料理店「山里」で開催した。その場では、岸田首相が麻生氏に事前に連絡をしないで「派閥を解散したこと」についてお詫びがあったのだという。 

 

 

 この一連の動きをみていると、日本のトップであるはずの岸田首相と麻生氏のどちらが偉いのかがよくわからなくなってしまうが、やはりそれほどまでに永田町政治における麻生氏の影響力は強いということだ。 

 

 麻生氏の「強さ」は、元首相というよりも第二次安倍政権において、中核的な役割を担ってきたからだとする論が強い。安倍元首相の著書『安倍晋三 回顧録』にも、長期政権を支えたのが、麻生氏であったことがわかる記述がある。 

 

 「麻生さん、高村さん、菅さん。この人たちを抜きに長期政権は築けませんでした。麻生さんとは、人間的に肌が合うんですよ。お互い政治の世界で育ったという環境も影響しているのでしょう。首相時代は、漢字が読めないとかさんざん批判されましたが、ものすごい教養人です。歴史に造詣が深く、読んでいるのも漫画だけではないのだけど、自分を悪い人間のように見せようとするのです。あれは、もったいないですよ。自然に振る舞えばいいのに。彼は毛筆で手紙を書くじゃないですか。あんな政治家ってもう最後ですよね」 

 

 「(安倍政権では菅官房長官と麻生財務大臣の二人をずっと代えなかったことについて見解を問われて)2人は安倍政権の大黒柱です。中曽根(康弘)内閣を参考にしたのです。中曽根総理は、安倍晋太郎外相、竹下登蔵相を4年近く代えなかった。安定した長期政権を築く上では、柱は代えない方がいいということでしょう。特に麻生さんについては、ある程度、年輪を重ねた政治家が閣内にいてくれた方が助かります。財務省を統率するという点でも、非常に大きかったです」 

 

 安倍元首相は、麻生氏を「財務省」を抑えるために使っていたようだが、政治の世界、行政の世界に強い影響力を持つ「財務省」を長期間にわたって抑えてきたということが、麻生氏の影響力をより強いものにしていったのだ。 

 

 裏金問題で、麻生氏でなくても国民が疑念を抱いているのが、今回の「派閥の解散」で、政治は何も変わらないのではないかということだ。安倍派が解散を決めた次の瞬間には、自民党安倍派の福田達夫元総務会長が安倍派の解散を受けて「反省の上に新しい集団をつくっていくことが大事だ」「派閥ではなく、新しいガバナンスの形」として新たな”集団”をつくる考えを示した。何か大きな決断をしたかのように振る舞う岸田首相だが、結局のところ、派閥のパーティを自粛することと何も変わらないことになる。 

 

 自民党の政治刷新本部は23日の全体会合で、麻生・茂木・森山3派について「派閥」としての存続は許さないとしたものの、「政策集団」としての存続は容認したという。「派閥」ではなく「政策集団」になるとは、ただの言葉遊びではないか。政治刷新本部の本部長も務める岸田首相は記者団に「派閥ありきの自民党から完全に脱却する。派閥から資金と人事を遮断する」と強調したというが、安倍派裏金問題で政治不信・自民党不信が極端に募っている今の国民に、岸田首相のこの主張が受け入れられるとは到底思えない。 

 

 むしろ、実態は何も変わらないのに、あたかも変わるかの如く振る舞い、反省したふりをはじめた岸田派、安倍派、二階派の面々よりも、麻生氏の行動は「胆力」があると考えられる。永田町(政治用語、政治記事)における「胆力」とは、政治家が、世論受けの悪い行動を自らの政治信条のもとに、果敢に挑む精神力、実行力のことを指す。麻生氏の「胆力」はやはり大きなものであろう。そうした「胆力」の積み重ねが、官僚や政治家たちの信頼を集め、それが麻生氏の大きな影響力になっている。 

 

 

 「『私は派閥をやめませんから』。この電話で初めて首相から『岸田派解散』の意向を聞いた麻生氏は、自らの派閥は存続させる考えを伝えた。『茂木もやめないと思いますよ』。そう語って電話を切った麻生氏は、その茂木敏充幹事長に電話をかけた。/『岸田派の解散を聞いていたか』と問うた麻生氏に、茂木氏は『知りませんでした』。茂木氏も、自ら率いる茂木派の解散を考えてはいなかった。『お互い、これから矢面に立つことになるな』。麻生氏は茂木氏に、そう語りかけた」(朝日新聞、1月20日) 

 

 今回も、茂木氏とともに、世論受けの悪い行動にでたが、はっきりいって、インチキをしているのは、岸田首相である。そもそも、岸田首相は、昨年に岸田派の会長を辞め、その際に、派閥を離脱している。離脱とは、一般的な感覚では、全く関係がなくなっているということであり、派閥に関係のない人が、派閥の解散を決断するというのは茶番でしかない。都合が悪くなると、秘書のせいにして、自らは関係がないと主張をはじめるのに、離脱した派閥を解散する権限を持っているというのだから、政治家の何を信用すればいいのかわからなくなる。 

 

 「麻生太郎さんってそんなに力があるんですか?」とテレビ番組(1月22日放送のTOKYO MX「激論サミット」)で問われ、「力があるというか、それだけの人が従うというのを見ると、そういう魅力があるんじゃないですか?」と石破茂元幹事長は返答している。 

 

 麻生氏と比べて、問題解決能力が極端に低く、胆力もない岸田首相は、能登半島地震の復興にめどがついた段階(4月の衆議院補選前まで)で、退陣すべきだろう。 

 

小倉健一 

 

 

 
 

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