( 132644 )  2024/01/26 13:43:50  
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地震と火災で甚大な被害を受けた観光名所、朝市周辺は復旧のめどが立たない=1月3日、石川県輪島市(鈴木源也撮影) 

 

能登半島地震に関連し、政府が25日に公表した観光需要の喚起を図る支援策「北陸応援割」について、実施するタイミングや経済効果を疑問視する声が上がっている。北陸割は1人1泊2万円を上限に、北陸4県(石川、富山、福井、新潟)への旅行代金50%を補助する仕組みだ。3~4月に実施する予定だが、被害の大きかった石川県能登地方では観光資源の海産物の提供や宿泊の再開などが、この時期までに見通せないところが多い。応援割だけ先行すれば、被害の小さい他の3県に観光客が流れる可能性も指摘されている。 

 

【写真】和倉温泉の老舗旅館「加賀屋」。手前の崩れた神社の鳥居が揺れの激しさを物語っている 

 

◆観光資源が消え効果限定的 

 

石川県七尾市の和倉温泉では建物や水道などのインフラが損傷し、全旅館が休業した。同市の市街地などでは、4月以降にならないと断水が解消されない見通しだ。火災で焼失した輪島市の朝市通りの復旧は困難な状況で、石川県内にある69漁港のうち60漁港が地盤の隆起や防波堤、岸壁、臨港道路の損傷などの被害を受けている。特産の海産物の調達も難しい現状だ。 

 

野村総合研究所の木内登英(たかひで)エグゼクティブ・エコノミストは「観光資源が失われ、道路やインフラの復旧途中での観光支援は経済効果が乏しい」と強調する。新型コロナウイルス禍で低迷する観光業への政府の支援事業「Go To トラベル」を引き合いに出し、「当時はコロナ感染対策をしっかりした高級ホテルや旅館に観光客が集中し、小さな宿泊業への恩恵が小さかった」と指摘。「今回も耐震設備などがしっかりした高級旅館などに観光客が流れ、旅館の規模や地域で受けられる恩恵の格差が生じる」と予測する。 

 

◆熊本地震では恩恵に格差も 

 

北陸応援割と同様の支援は、平成30年4月に発生した熊本地震でも導入されている。政府は同年7月から12月末まで、熊本、大分、福岡、佐賀、長崎、宮崎、鹿児島の7県を対象に旅行代金を補助する「九州ふっこう割」を実施した。 

 

この支援策の効果について、監査法人トーマツの松下哲明リスクアドバイザリー部マネジャーは、直接被害の少なかった大分県と比較し、「熊本県は観光客の増加が少なかった」とする分析結果を公表した。松下氏はその理由について、「観光資源、宿泊施設、道路網など被害の有無が影響を及ぼしたと」と結論付けている。今回の北陸応援割でも同様の事態が起きると想定する観光業者は多い。 

 

政府は、能登地方については、「復興状況を見極め、さらに手厚い支援策を検討する」というが、木内氏は「まずは地震被害で落ち込んだ売り上げを補填する給付金支援を充実させるべきだ」と提案する。(西村利也) 

 

 

 
 

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