( 132687 )  2024/01/26 14:37:40  
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大阪府池田市にあるダイハツ本社で不正問題が発覚しており、国土交通省から異例の是正命令が出された。

認証試験での不正が30年以上にわたって行われていたことが明らかになり、国内外での生産停止が行われている。

また、型式指定の取り消しや安全性の確認など、影響は広がっており、関連企業や地域経済にも大きな影響が出ている。

再発防止策や組織再編が求められており、問題解決にはトヨタが主導して取り組むことになりそうだ。

(要約)

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大阪府池田市ダイハツ町1番1号にあるダイハツ本社。主力工場のある大分県や滋賀県など地域経済への影響も大きい(記者撮影) 

 

 認証試験における不正問題に揺れるダイハツ工業。国土交通省の立ち入り検査で新たに14件の不正が判明した。 

 

【写真】国土交通省はダイハツに対し抜本的に組織の見直しなどを求める異例の是正命令を出した 

 

 昨年4月に認証試験における不正が発覚。12月20日には第三者委員会の調査結果が公表され、国内外、生産終了分を含めて64車種174件の不正が明らかになった。これを受けて、ダイハツは国内生産を停止中だ。 

 

 14件の不正が公表された1月16日、国交省は「国の型式指定の信頼性を根本から損ない、我が国の製造業への信頼をも傷付けるものであり、極めて遺憾である」として、ダイハツに対し抜本的に組織の見直しなどを求める異例の是正命令を出した。 

 

 ダイハツは1カ月以内に再発防止策や組織体制の見直しなどを報告することが求められる。奥平総一郎社長は「ご心配、ご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げたい。われわれの不正で失われた信頼は大きい。二度と同じ過ちを起こさない会社になるために全力を尽くしたい」と陳謝した。 

 

■型式指定取り消しが3車種でとどまるかが焦点 

 

 さらに、国交省は悪質な不正行為があったとして、ダイハツ「グランマックス」、OEM供給するトヨタ自動車「タウンエース」、マツダ「ボンゴ」のトラックタイプについて、生産認証である型式指定を取り消す。小型車での型式指定の取り消しは業界初で、ダイハツは3車種の国内生産が実質できなくなる。 

 

 ただし、現状3車種は海外生産のみで、現地生産についてはダイハツと海外当局の問題となる。2023年の3車種合計の国内販売台数は約7000台でしかない。型式指定取り消しが3車種にとどまるかが今後の焦点となる。 

 

 国交省はダイハツが出荷していた現行27車種について安全性を検証中で、安全性が確認された車種は随時公表していく方針。1月19日には5車種について安全基準に適合しているとして、出荷停止の指示を解除した。 

 

 5車種については生産・出荷の再開ができるが、親会社であるトヨタの長田准執行役員は「お客様や部品メーカー、地域といったブランドに関わる人たちが『造っていいよ』という状況が大前提」と強調する。 

 

 ダイハツは国交省による適合性確認が完了していない車種は2月16日まで生産停止とする(17日以降未定)。一方で5車種のうち2車種については「検討中」としている。 

 

 生産再開の目安になりそうなのが是正命令の報告。国交省は、①会社としての業務運営体制の再構築、②車両開発全体の業務管理手法の改善、③不正行為を起こしえない法規・認証関連業務の実施体制の構築、の3点を求めている。 

 

 

 第三者委員会は、不正は30年以上行われており、2014年以降に急増したと指摘。短期開発を目指すあまり、過度にタイトで硬直的なスケジュールのシワ寄せが認証部門に来ていた点や、人員不足、認証部門内外での風通しの悪さなど組織風土も批判している。 

 

 再発防止や組織再編はトヨタが主導することになる。佐藤恒治社長は1月16日、報道陣の取材に応じ、「ダイハツの車づくりに関与しきれなかった。事業の体制やスキームがしっかり機能するようにしないといけない」として、トヨタが開発現場に入り込む考えを示した。 

 

 ダイハツの事業体制について「(軽自動車以外も手がけて)負荷がかかりすぎていたなら事業領域を見直す」「今の経営体制を前提に置かずに検討する」と、抜本的な改革を示唆した。 

 

 トヨタグループでは日野自動車や豊田自動織機などでも不正が発覚しており、グループ全体のガバナンスを問われる事態となっている。このため豊田章男会長がグループガバナンスの方針について1月30日に説明するという。 

 

■取引先へ広がる影響 

 

 「顧客にはただただ申し訳ない」。関東圏のダイハツ系販売会社の幹部は淡々と語る。現在は新車販売を自粛し、サービスや中古車販売でしのいでいるという。別の販売会社首脳は「顧客に何か説明しても、『それもうそじゃないのか』と言われることもあった」とこぼす。当然、部品メーカーや工場の地元経済も大きな影響を受けている。 

 

 ダイハツは、販売店や部品メーカーに対し、生産停止による損失について個別に補償に応じていく方針。2次以下の部品メーカーに対しても、1次取引先を通じ補償を行うという。ある部品メーカーの幹部は「すでに補償の具体的な話は来ている」と明かす。 

 

 生産停止が長引けば、ダイハツの経営に対してはもちろん、社会的にもダメージは膨れ上がる。ダイハツとトヨタは説得力のある改革案を示す必要がある。 

 

横山 隼也 :東洋経済 記者 

 

 

 
 

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