( 133051 )  2024/01/27 15:59:12  
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すい臓がんのステージIVであることを公表した森永卓郎氏(写真/共同通信社) 

 

 昨年末、すい臓がんのステージIVであることを公表した経済アナリストの森永卓郎氏(66)。ベストセラーとなった『年収300万円時代を生き抜く経済学』をはじめ、生活防衛に役立つ経済情報を広く発信する森永氏は、闘病がきっかけで「保険がなくてもなんとかなる」との結論に行き着いたという。 

 

【写真】「だいぶ痩せた」闘病中の森永卓郎氏の近影 

 

「もともと医療保険にはいっさい入っていませんでした。がんの治療でも、手術、放射線治療、抗がん剤治療(薬物療法)といった標準治療の範囲内であれば、医療費のほとんどが高額療養費制度など公的補助でカバーされるからです。人それぞれ考え方はありますが、僕は全額自己負担の差額ベッド代がかかる個室に入りたいとも思わないし、数千万円かかるような先進医療を受けるつもりもありません。公的保険や医療補助で賄える範囲の治療で、病と闘っていきます」(以下「」内は森永氏) 

 

 そう語る森永氏も、60歳になるまでは生命保険に加入していたという。 

 

「日本専売公社(現JT)でサラリーマンをしていた28歳の時、4000万円の死亡保障が付いた定期保険特約付終身保険に加入しました。大黒柱の自分が定年退職までに死亡したら、妻や子供が生活に窮すると思ったからです。 

 

 ただし、4000万円の死亡保障は60歳までの定期にしました。定年時には退職金も入るし、当時は60歳から年金が受け取れる仕組みだった。子供も独立するから、そこから先の大きな死亡保障は不要と考えました。現在は終身部分の死亡保障300万円が残るのみ。十分な額だと思います」 

 

 28歳から60歳までの間に森永氏が支払った保険料の総額は1000万円程度。50代半ばで子供たちが独立したため、その時点で保険を解約する選択肢もあったが、満期まで継続したのには理由がある。 

 

「予定利率が5%を超える時代の保険、いわゆるバブル期の“お宝保険”で、保険料に対して高い満期返戻金が受け取れたからです。でも、現在の大半の生命保険の予定利率は1%を下回っており、ずるずる持ち続けると損をすることになりかねません。とくに60歳を超えたら、生活を支えなければならない家族がいる場合を除き、生命保険は不要だと思います」 

 

 

 大きな死亡保障は不要な年齢になっても、急な入院や手術に備え、医療保険は不可欠と考える人は少なくない。 

 

 そうした層に向け、保険各社は60代以降でも入れる掛け捨ての医療保険に力を入れるが、森永氏はこう指摘する。 

 

「がんに限らず、医療費の大半は公的保険や公的補助でカバーできます。歳をとって『なんとなく不安だから』と保障をむやみに増やすと、保険料が家計を圧迫します。いざという時のために備えたつもりが、老後破産の引き金になるようでは本末転倒です」 

 

 保障額を考えても、保険料を払い続けるのは得策ではなく、その他の使い途にも回せる可能性のある貯金で備えるほうが望ましいという。 

 

「一般的な掛け捨ての保険で受け取れる保険金は、入院保障が1日5000~1万円程度、手術給付金が20万円程度、がん保険で一時金が出たとしても100万円ほどでしょう。逆に言えば、大半の病気の治療、入院、手術は、100万~200万円の貯蓄があれば十分に賄えることになります」 

 

 保険に頼らずとも、病と闘うことはできる。 

 

※週刊ポスト2024年2月2日号 

 

 

 
 

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