( 133298 )  2024/01/28 13:18:49  
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 社会人として立派に働いている以上、メディアで頻繁に使用される「子供部屋おじさん・おばさん」というマイナスイメージの強い表現方法は不適切である……。前編記事〈「子供部屋おじさん」と呼ばないで…32歳・年収500万円・正社員男性が「実家暮らしが合理的だと思う理由」〉では、社会に出てからも実家で暮らし続けている32歳・財前光希氏の怒りの声を聞いた。後編記事では引き続き財前氏へ、社会からの偏見に対する怒りの感情を聞いていく。 

 

【マンガ】3500万の住宅ローン組んだ「年収700万夫婦」、「地獄を見た」ワケ 

 

 聞き手:佐藤大輝(一人暮らし歴14年目) 

 

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 ――第1回目の取材の際、財前さんは実家へ1円も入れてないと仰ってましたが(参照:32歳正社員なのに「実家暮らし」で海外旅行三昧…「子供部屋オジサン」の気になる年収)、投稿した記事に寄せられたコメントには「せめて水道光熱費と食品分は入れた方がいい」といった意見も目立ちました。 

 

 この点に関しては実家暮らし推奨派の間でも意見が分かれているようですが、財前さんの考えを聞かせてください。 

 

 まず大前提として、少しくらいお金を入れた方がいい、この主張には理解も共感もできます。その上で、両親へお金を渡したら、それは実家暮らし最大のメリット「経済合理性」が減少すると僕は考えています。これでは実家に住み続ける利点が減ってしまう……。 

 

 また、少しだけ余計なお世話だなという気持ちがあります。なぜ人様の家庭に対して、ああだこうだと口を出す人が絶えないのでしょうか。各家庭の事情はそれぞれあるわけで、いったい何の権利があって物申しているのか僕にはわかりません。 

 

 ――そ、そうですね(まずい。今日の財前さんはちょっと感情的な口調だぞ)。 

 

 日本全国の子供部屋おじさん・おばさんに共感してもらえると思いますが、実家暮らし最大の利点は「お金」の2文字で決まりです。僕はこの利点を最大限活用しようと考えているだけです。法を犯してるわけでも、誰かに迷惑をかけてるわけでもありませんよ!  

 

 

 もちろん両親から具体的な金額を提示されているにもかかわらず支払いを拒否しているのだとしたら、それは考え方が甘いと思います。けれど各家庭内で合意されている金額に対して、周りがガヤガヤ言うのは間違っているのではないでしょうか?  

 ――それでは次の質問に……。 

 

 すみません、もう一つ言わせてください。一人暮らし推奨派の人は「親元から出ることが自立に繋がる」「社会人たるもの親元から離れるべきだ」といった幻想を抱いているようですが、少し前までは「サザエさん」や「ちびまる子ちゃん」のように大家族で暮らすのが一般的でしたよね?  

 ――そ、そうですね。 

 

 長男は家を継ぐために地元に残るのが日本社会の当たり前だった。このような常識あるいはライフスタイルは、時代と共に変化しました。 

 

 1980年代は核家族世帯が60%を超えるなど、実家を出て家庭を持つことが主流になりました。しかし平成、そして令和と時代が進むにつれ、今度は晩婚化・未婚化・少子化・高齢化といった新たな社会問題が生まれました。 

 

 僕が何を言いたいかと言うと、社会的背景が変わったのだから、時代に合わせた「価値観のアップデート」に励むのが正しい姿なのではないでしょうか?  

 ――たしかに一理あるかもしれません。報道番組『ABEMA Prime』にて、有識者の佐々木俊尚さんや成田修造さんも、財前さんと同じような問題提起をされていました(参照:【実家暮らし】甘えてるだけ? 実は最強説も? 子ども部屋おじさんと揶揄も? 32歳独身男性と考える)。 

 

 終身雇用や年功序列はもはや過去の栄光です。僕たちの世代が高齢になったときに年金制度が機能しているどうかも非常に怪しい。先行きが不透明な荒れた時代だからこそ、いざというときのためのお金が重要になるのではないでしょうか。 

 

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 ――お金の余裕は心の余裕に繋がる側面もありますよね。 

 

 はい。また、経済力があるからこそ人生が豊かになる側面も見逃せません。例えば僕は昨年8月、アラブ首長国連邦・ドバイへ遊びに行きました。スカイツリーよりも200メートルも高い、世界一高いタワー(ブルジュ・ハリファ)に登り、絶景を眺めながらコーヒーを飲んだときの感動は忘れません。 

 

 僕は今、人生が最高に楽しい。実家で蓄えたお金を使って推しを応援してる人も、ライブやフェス、ディズニーランドに行くのが楽しみな人もきっと僕と同じです。幸せなんだから、もうそれでいいじゃないですか。 

 

 ――私も海外渡航に関する記事を書いたことがありますが(参照:シンガポール往復4万円も…「お金」も「長期休暇」も「英語力」もいらない“格安海外旅行のコツ”)、経験や思い出は目には見えないけれど大切な資産になりますよね。 

 

 同世代を見ていると、無理して一人暮らしをしているな、生活が大変そうだな、と思うことがあります。例えば、奨学金。佐藤さん(この記事のライター)は『マネー現代』の記事によると、たしか500万円近い奨学金を背負って社会に出たんですよね?  

 ――はい、そうです(参照:社会に出た瞬間からマイナス480万円スタート…私が「奨学金地獄」の中で返済は「無理ゲー」だと悟ったワケ)。 

 

 ありがたいことに、僕は両親に学費をすべて出してもらいましたが……。約2人に1人の学生が300万円弱の奨学金を借り、社会人編をスタートさせています。こんな大金、普通に考えて、家賃等を支払っていたら簡単に返せるわけがない。 

 

 現代の若者は世間体など気にせず実家に残り、まずはしっかり経済基盤を固めるべきです。上の世代にはなかった借金を、僕たちの世代は背負っているわけですから。 

 

 

 ――最後に、本記事を読んでくれた『マネー現代』の読者さまへメッセージをお願いします。 

 

 そうですね……。僕はどんな形であれ、実家暮らし社会人の話題がクローズアップされるのは、社会の流れや空気感を変えるチャンスになると考えています。多様性のある考え方や生き方が認められるためにも、みんなで粘り強く問題提起を続けていきましょう!  

 

 ――財前さん、本日はありがとうございました。 

 

 こちらこそ、ありがとうござました。ところで、佐藤さん。僕からも最後に一つ、佐藤さんにお伺いしたいことがあります。 

 

 ――あ、はい、なんでも聞いてください。 

 

 実は先日、佐藤さんが書いた記事を拝読したのですが……(参照:いつまでも実家に住み続けるのはアリ? ナシ? 「子供部屋おじさん・おばさん賛成派」が見落としている重大な視点)。その記事には「30歳以降は『子供部屋おじさん』という生き方はナシ」といった主張が書かれていました。 

 

 ――あー、そ、そうですね、はい。 

 

 今日、僕の話を改めて聞いて、きっと佐藤さんの心境に大きな変化があったと思います。社会に出てからも実家に住み続けるのは賢い生き方であり、そこに年齢は関係ないことを最後に「訂正」していただけたら嬉しいです。 

 

 安心してください。訂正したら責任追及されないのが、日本社会の暗黙のルールですから。 

 

 ――あれ? なんだか電波がイマイチみたいで、音が聞こえません。あ、電池も少なくなってきました。すみません。今日はこのあたりで失礼させていただきます。 

 

 ※本記事のインタビューはリモートで行いました。 

 

佐藤 大輝(ライター) 

 

 

 
 

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