( 133686 ) 2024/01/29 14:35:39 0 00 (写真:塩大福/PIXTA)
2023年はビットコイン(BTC)の価格が210万円台から600万円台まで高騰し、他の金融資産を大きく上回るパフォーマンスを見せました。2022年にはテラショック(※1)やFTXショック(※2)といった事件が相次ぎ、その影響で暗号資産市場全体が暴落しましたが、そこから復活を遂げて再び大きな注目を集めています。 ビットコインはこれまでも暴落と復活を繰り返しながら成長を続けており、2024年はビットコイン現物ETFや半減期などさまざまなイベントによって大きく上昇することが期待されています。
【画像を見る】ビットコインの金の時価総額との比較
なぜビットコインは暴落しても価値を失わず、ここからさらに価格を伸ばすと考えられているのかについて、『暗号資産をやさしく教えてくれる本』の著者、マネックス証券の暗号資産アナリスト松嶋真倫さんが解説します。
※1 テラショック……韓国発の暗号資産テラ(Terra)USDとルナ(Luna)の価格が大崩壊し、それにより一夜にして600億ドル相当の価値が市場から消え去った事件 ※2 FTXショック……世界最大規模の暗号資産取引所であるFTXグループが、1兆2000億円を超える負債を抱えて破綻した事件
■金融機関および機関投資家の本格参入
2024年1月10日にアメリカでブラックロックを含む複数の金融機関が手掛けるビットコイン現物ETFが承認されました。ビットコイン現物ETFとは、ビットコインを投資対象に含んだ上場投資信託(ETF)のことです。
この承認により、アメリカでは、証券会社の証券口座を通じて売買できるようになりました。直接保有することが難しかったビットコインに投資しやすくなるため、幅広い投資家層が暗号資産市場へ参入すると考えられています。取引初日の出来高は合計で40億ドルを超えたと報じられており、ビットコインの価格も一時700万円台まで上昇しました。
市場でビットコインの現物ETFが相場を押し上げるきっかけになると見られている理由は、金のETFが2004年に初めて承認されたときも、その後に価格が大きく上昇したためです。それから約20年が経った現在、金の価格は当時から約5倍となる1オンス=2000ドルを超えて推移しています。金と似た性質をもつビットコインも、ETFによって価格が大きく上昇し、中長期的には今よりも高い水準で安定して推移する可能性があります。
ビットコイン現物ETFが注目される裏では、暗号資産規制の施行に合わせて金融機関による暗号資産関連事業への参入が進んでいます。香港ではイギリスに本店を置く世界最大級の銀行HSBC(Hong Kong and Shanghai Banking Corporation)が、顧客向けにビットコインとイーサリアムの取引提供を開始し、暗号資産カストディやデジタル資産プラットフォームの立ち上げにも動いています。
日本でも三菱UFJ信託銀行やGMOあおぞらネット銀行などがステーブルコインの発行を準備しており、SBIグループの大阪デジタルエクスチェンジがデジタル証券の取引所をオープンしたことも話題になりました。
このように、今や金融機関を通じてビットコインなどにアクセスできる環境が整いつつあり、2024年以降には金融市場のお金が暗号資産市場へ本格的に流れることになるでしょう。それによってビットコインの価格は大きく上昇することが予想されます。
■ビットコインの半減期アノマリーが継続する可能性
2024年に最も注目されているのが、約4年に1度のペースで訪れるビットコインの半減期です。半減期とは、マイニングで新規発行される量が半分に減少するイベントです。
ビットコインは2009年に発行が始まって以降、3回の半減期を迎えています。
2012年に50BTCから25BTCへ、2016年に12.5BTCへ、2020年に6.25BTCへ、マイニングあたりの新規発行量が減少し、4回目となる今回は3.125BTCへとさらに減少します。
半減期はビットコインの市場供給ペースを下げることで需給をタイト化し、過去3回では半減期の翌年にかけて大きな価格上昇を引き起こしてきました。そのため、今回も2024年の半減期をきっかけに2025年にかけてビットコインの価格高騰が起こる可能性が高いと期待されています。
私が今回も半減期アノマリーが継続すると考える理由は、先ほどお話ししたように、ビットコイン投資の需要拡大を促す大きな材料が揃っているからです。今はまだ金融機関および機関投資家が暗号資産市場へ本格参入する前ですが、それが2024年以降に進むならば、少なくとも後一度はビットコインのバブル相場を経験することになるでしょう。
こうした機会を活用するためにも、ビットコインについて、基本を学んでおくことが必要です。
■新興国や経済危機時の逃避資産としても活用
ビットコインは値上がりを期待して市場で売買されるもので、そのボラティリティの高さから投機対象にすぎない、そう思っている人も多いのではないでしょうか。
日本で暮らしていると、ビットコインによって生活の恩恵を受けることはほとんどありません。しかし、新興国や経済危機のタイミングでは、ビットコインが自国通貨の代替として注目を集めることがあります。
そもそもビットコインは、2008年にリーマン・ショックにより世界的な金融危機が起きた直後、国や金融機関に頼らずとも個人同士でやりとりできるデジタル通貨として誕生しました。そのため国や金融機関に対する不安が広がったときには、ビットコインが自国通貨の暴落や凍結を回避する手段として活用されることがあります。
最近だと、ロシア・ウクライナ戦争やパレスチナ問題などが激化した際に、一部ではビットコインなど暗号資産が資産保全や資金移動のために利用されました。
ビットコインは、特に新興国において、公共の金融インフラとしての役割も果たしています。世界ではいまだに銀行口座を持てない人が数多くいます。ビットコインはスマートフォンとインターネット環境があれば誰でも簡単に取引できます。出稼ぎ労働者にとってはビットコインを使って安く素早く仕送りすることもできます。ちなみに、エルサルバドルでは金融包摂を最大の目的に掲げ、世界で初めてビットコインを法定通貨として認可しました。
■デジタルゴールドとしてのビットコイン
ビットコインはリスク資産として見られていますが、各国地域の情勢が悪化する局面では金のように逃避資産としての需要が高まる傾向にあります。
このようなデジタルゴールドとしての見方は最近になって強まっており、いずれはビットコインが金の時価総額を奪う形で成長するだろうという予想もあります。
暗号資産、ビットコインは、これからますます取引が拡大していくことが考えられます。次に期待される上昇トレンドに乗り遅れないためにも、暗号資産について正しい知識を学び、誤った思い込みを取り除いたうえで、まずは少額からビットコイン投資を始めると理解が深まるでしょう。
松嶋 真倫 :マネックス証券 暗号資産アナリスト
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