( 135317 )  2024/02/03 00:24:02  
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 記録的株高の日本の株式市場だが、名物投資家の木戸次郎氏は「強烈な違和感」を覚えるという。新NISAが要因とされてきたが「ふた開けてみれば日本株を買っていたのはやはり海外勢だった」と指摘する。その一方で、海外の7つ大型ファンドが日本の7つのお宝を狙いに上陸する様相だとも解説。みんかぶプレミアム特集「見えた!日経平均4万円時代」第2回は木戸氏が難しい日本市場を読み解くーー。 

 

 日経平均は正月早々に3万6000円をあっさり超え、歴史的ともいえる盛り上がりを見せており、資産バブル時の高値を超えて4万円台もありうるなどと言いう声も聞かれ始めている。 

 

 株式市場を見る限りは遅ればせながら「失われた30年」の精算が一気に進んでいるようにも見える。しかし、本当の意味でいえば30年前に「マイナス金利政策」に舵を切っ途端に経済成長という時計の針が止まったわけで、これを再度動かすにはマイナス金利を解除して、賃金や物価、為替などを正常に戻さなければ、他の先進国とのズレは埋まらないままであろうと思う。 

 

 株価は経済を映す鏡だといわれているが、正直に言えば、現在の株高には「強烈な違和感を覚えざるを得ない」いうのが本音である。日本は先進諸国とは金融政策のタイミングが常にそして大幅にズレが生じているので、ある日突然、何の予兆もなく金融市場にもそのツケが襲ってくるのではないかと危惧している。 

 

 世界的なインフレを背景に、2023年まで欧米の中央銀行はインフレ抑制のために金利を引き上げていた。しかし、先進各国の中で日本だけは利上げをせずに金融緩和を維持してきた。その結果、円安が進行し、輸入価格が上昇することで国内の値上げラッシュが加速して家計は勿論、原材料価格が高騰する一方、価格転嫁が全くできていない中小企業などがもろに影響を受けているのは紛れもない事実だ。 

 

 これに新型コロナウィルス禍、ロシア・ウクライナ戦争、更に短期間で4割以上の極端な円安による物価高、一向に上がらない賃金と人手不足などの要因で日本の実態経済はかなり傷んでいる。 

 

 資産バブルの真っただ中で育った我々にしてみれば、一億総中流と言われ社会全体が底上げしていたあの頃の株高と今の中小企業や家計が追い詰められている状況下の株高では全く別物だというのは明らかだ。 

 

 更に現在は保証付き融資の返済を信用保証協会が肩代わりする「代位弁済」が前年度と比べても約70%以上も増えている。このペースでいくと3万件を超えた2022年を上回るのは確実であろう。 

 

 

 ここ数年、欧米各国は現在進行形のインフレを抑制するために、異例のペースで金利を引き上げていたが、いまのところ効果は限定的だ。なぜなら、今回のインフレは需要が旺盛ではないからだ。コロナ禍からの経済回復局面で、人手や半導体、コンテナなどあらゆるものが不足する供給制約や、ロシアによるウクライナ侵攻を背景としたエネルギーや食料品価格の高騰など挨まったインフレの原因だらだ。 

 

 日本でも新型コロナウイルス禍の資金支援で借金が膨らんだところに物価高や人手不足が重なり、資金繰りはより厳しさを増してきている。保証付き融資の返済というのはいわゆる代位弁済なので、資金繰りがいかに苦しいかを表す指標でもある。要するに水面下では倒産の先行指標とされて警戒感がじわじわ広がっているのだ。既に地方都市とくに中国、九州では形となって表れてきている。 

 

 ただ、株式市場に限って言えば、1人1口座で積み立て投資枠年間120万円、成長投資枠240万円で最大360万円まで非課税を唱っているウルトラCともいうべき新型NISAが市場参加者を爆発的に増やしているのだと思う。個人投資家は特に「非課税」という言葉には滅法弱い。 

 

 今やメガバンク、証券会社などのコマーシャルのほとんどが新型NISAのものばかりであり、金郵庁もホームページで丁寧に説明するなど、もはや国を挙げての大キャンペーンで国策のようにも思われる。新型NISAの投資が政府目標に沿った形で増えた場合、年間2兆円以上の買い需要が発生するという試算もあり、この材料が追い風となっているようだ。 

 

 新型NISAで市場参加者が大幅に増えているのは大賛成だし、それによって株式市場が活性化し、日経平均が上昇していくことにも大歓迎だ。 

 

 ただ、前述したようにこの短期間で「失われた30年」が本当に清算されたのならまだしも、現状は実のところ全く変わっていない脆弱な状態と言わざるを得ないし、マイナス金利政策解除後のリスクを注意喚起する専門家は見当たらない。それどころか、この株高に乗じて村上世彰さんや堀江貴文さんなど著名人の名を騙る5倍、10倍といった詐欺まがいの怪しいバナー広告も数多あるようで、資産バブル末期の状況に酷似しているように思う。 

 

 今年にはいってのバブル的な株価上昇の動きは、新NISAの影響かと思われたが、ふたを開けてみると、日本株を買っていたのはやはり海外勢だった。私を含め、多くの市場関係者が日本の個人投資家の買いが新NISA経由で入っていた可能性を指摘していたが、実際にはそうではなかった。 

 

 つまり、海外勢が市場を支配している状況は変わっていないということになる。こうなると、通常の市場分析でよいということになる。もっとも、テクニカル指標は徐々に調整している。すでに過熱状態ではないといえる。騰落レシオの25日平均は危険水域を上回っており、過熱気味といえるが、強い相場のときは機能しないことが多い。いずれにしても、新NISA経由の個人マネーの流入はこれからということになりそうである。いずれはこれが日本株を支えることになろうと思う。 

 

木戸次郎 

 

 

 
 

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