( 136988 ) 2024/02/08 00:04:58 0 00 分からないことが判明し、それをクリアする経験を通じて、部下は徐々に自分で問題を解決できるようになる(写真はイメージです) Photo:PIXTA
マネジメントを行うには、部下の成長度合いや状況をしっかり把握しなければなりません。じっくり部下を観察すれば、ある程度現状は分かりますが、表面的に見えない部分を把握することは難しいでしょう。実は、リーダーとして本当に知るべきことは、外側からは見えにくいことである場合が多いのです。この課題解決のためにマネジメントが重視すべきは、「部下への質問」です。質問をマネジメントで生かすことには以下の4つの効果があります。(1)部下の持っている情報や状況を把握できる、(2)部下が(課題解決策などを)自ら考えるようになる、(3)部下が課題解決策を見つける過程で、新たな気付きを得る、(4)部下の行動が促進され、モチベーションアップにつながる。今回は「部下への質問」における注意点や効果的な質問方法などについて解説します。(メンタルチャージISC研究所代表取締役 岡本文宏)
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● 質問に質問で返すことで 「自ら考える人材」に育てる
業務上で何か問題が起きた際、その解決策を自分で考えず、第三者に答えを求める人が増えています。これは、リーダーと呼ばれる人たちの関わり方、コミュニケーションの取り方に原因があると考えられます。
部下に「分からないことがあれば何でも聞くように」と伝えると、少しでも分からないことがあれば、すぐに答えを求めて指示を仰ぐようになります。入社したばかりで、まだ研修中というのなら、それでも良いのですが、研修が終了した後でも、指示を受けてそれをこなすだけというスタンスを続けることになると、仕事に面白さを感じませんし、いつまでたっても成長しません。
そうならないために、リーダーは部下との関わり方を変えていくことが必要です。具体的に言えば、「指示する」スタンスから、部下に「自分で考えさせる」スタンスへシフトチェンジしていくのです。
例えば、部下がリーダーに「どうすれば良いでしょうか?」と尋ねてきた際、「どうすれば解決できると思う?」とか「あなたがリーダーならどう対処する?」と質問で返すようにするのです。
リーダーが質問をすることで、部下の脳はその答えを見つけようとアンテナを伸ばし、検索を始めます。ただし、まだ質問をされることに慣れていないうちは、考えることを途中で諦めて「分かりません」と答える人もいるでしょう。その場合は、「何が分からなくて、どこまで分かっているのか?」について丁寧に聞き出して、部下の頭の中を一緒に整理していきましょう。
分からないことが判明し、それをクリアする経験を通じて、部下は徐々に自分で問題を解決できるようになります。少し時間はかかりますが、自分で答えを見つけ出すトレーニングを繰り返すことで、自ら答えを導き出せる人材に育ち、成長が加速します。
このことは、私自身が子育ての中で実践してきたことでもあります。子どもたちが小学生の頃から、私は子どもたちに対し、質問を投げ掛けることを日常的に行ってきました。
大学生になった息子から「幼少期に質問攻めにあったのは嫌だったけれど、今は自分で考えて行動することが容易にできたり、意見を述べることが自然にできたりするので良かったよ!」と言われたときは、自分の判断が正しかったことが分かり、うれしく思いました。
● 絶対にやってはいけない 「2つの質問」とは
(1)誘導尋問
私が以前、アパレル専門店チェーンに勤務していたとき、会議の場で上司から「●●の件について、私は▲▲▲と考えているが君たちはどう思うかね?」と質問を投げ掛けられたことがありました。
上司が既に決めていることに対して意見を求められたとしても、部下の多くは「YES」としか答えられません。別の考えをその場で言える人は、よほど図太いか、揺るぎない持論を持っている人などまれにしかいません。これでは質問をする意味がありません。
そもそも質問の目的は、相手に考える機会を与え、自ら答えを見つけ出すきっかけを作ることにあります。上司が同意を得ることが目的であれば、わざわざ誘導尋問のような質問をせずに、ストレートに伝えた方がよほど潔くて好感を持たれます。
(2)過去にフォーカスした質問
部下が過去と同じようなミスをしたとき、頭ごなしに、「なんで前に注意したことが改善できていないんだ?」と嫌みたっぷりに問いただすのもやめましょう。
「なぜ、やらないの?」「なぜ、そんなことをしたの?」などのように、過去の出来事に対して詰め寄る質問をされた場合、相手は萎縮してしまいます。場合によっては、パワハラだと指摘されかねません。
質問をする際に使う疑問詞によって、相手が受け取る印象は大きく変わります。疑問詞に「Why=なぜ」ではなく、「How=どのように」や「What=何が(を)」を使えば、受け止めやすく答えやすい質問になります。質問で使う言葉の選び方一つで、部下のモチベーションは上がりも下がりもすることを覚えておいてください。
● 効果的な質問を作る 2つのポイント
リーダーが組織をマネジメントし、部下の育成に「質問」を取り入れ、成果を出すには、質問のスキルを磨くことは必須となります。効果的な質問を作るための2つのポイントをご紹介しましょう。
(1)質問は1回に1つが原則
もしあなたが誰かから「次の休みはどこに行って、何を食べて、その後に何がしたい?」と質問されたら、答えるのにちゅうちょしませんか?
一度に2つ以上の質問を続けて行うと、相手は混乱して答えにくくなります。この場合は、質問を2回に分けて、順番に投げ掛けていくと答えやすくなります。
具体的には、「次の休みにどこに行きたいですか?」と最初の質問をして、相手が答えた後で、「そこで何が食べたいですか?」と二つ目の質問を投げ掛けるようにします。そして、「食事の後に何がしたいですか?」と順番に質問していけば良いのです。質問は1文の中に1つが原則と覚えておきましょう。
(2)範囲を絞って質問する
質問をする際は、範囲を絞って投げ掛けると相手は答えやすくなります。例えば、「何か困っていることはありますか?」「何か問題はありますか?」などと、範囲を絞らず質問をすると、相手は何について答えれば良いのかが分かりません。
そこで、まずは範囲を絞って「顧客への対応で困っていることはありますか?」と質問し、その後、さらに絞り込んで「新規客の受け付けを行う際に困っていることはありますか?」などと質問すれば、部下は答えやすくなります。
質問は漠然とするのではなく、どうすれば答えやすくなるのかを意識して、投げ掛けるようにしましょう。
かつて私自身が現場でマネジメントを行っていたとき、部下に質問を投げ掛けたことで、今までにない新しいアイデアを思い付いたというケースは少なくありません。部下たちは、自らのアイデアを実現させたいと思い、行動し始めます。
その行動が結果につながれば、モチベーションも高まり、さらに次の行動へとつながります。また、成果が出なくても、上司が「どうすれば良い結果につながると思う?」などと、さらに質問を投げ掛ければ、次の行動を考えて、また動き出します。
質問を上手に活用することで、部下は自ら考え、動く人材に成長していきます。そして成長を実感することで成長欲求が満たされ、「この職場でずっと働きたい」と思うようになります。
岡本文宏
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