( 137483 )  2024/02/09 14:03:24  
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ベストカーWeb 

 

 クルマと道路は切っても切り離せないもの。交通ジャーナリストの清水草一が、毎回、道路についてわかりやすく解説する当コーナー。今回は先日大雪が降った東京で何が起こったのか、一般道の通行止めの効果について考察していく。 

 

【画像ギャラリー】「東京に雪が降った日」に発生した問題の写真をもっと見る!(4枚) 

 

文/清水草一、写真/フォッケウルフ、pixta 

 

 2月5日、首都圏を大雪が襲った。大雪といっても東京都心の積雪はわずか8cm。雪国の人には笑止千万な大雪だろうが、東京に実質的な積雪があったのは約2年ぶり(2022年1月の10cm)。その前は2018年の23cm。つまりこれでも2~3年に一度の大雪だったのだ。そして今回も交通は大混乱した。 

 

 高速道路は、首都高およびNEXCOの高速道路にて、まだ雪が積もっていない午前11時から「予防的通行止め」が実施されたため、まったく混乱はなかった。 

 

 2年前の10cmの大雪では、首都高で大規模な立ち往生が発生し、解消までに14時間を要した。なかでも山手トンネルで発生した立ち往生は、トンネル内だけに水や食料の配布が困難で、場合によっては命にかかわる事態もあり得た。今回は高速道路の予防的通行止めで、こういった事態は完全に防ぐことができた。 

 

 しかしそのあおりを食って、一般道で多くの渋滞が発生した。特に国道246号線と国道20号線は、環状八号線との交差点で下り方向が封鎖されたため、大渋滞となった。 

 

 これに対しては、ドライバーから怒りの声が相次いだ。「一般道まで通行止めにするなんて聞いてない!」「なぜそんなことをするんだ!」と。 

 

 理由は、国交省の方針変更にあった。 

 

 2020年に起きた新潟・関越道の大規模立ち往生では、関越道だけでなく、並行する国道でも立ち往生が発生。全面的な解消まで3日もかかり、人命の危機となった。 

 

 その経験を踏まえ、高速道路だけでなく、一般道でも予防的通行止めを行うことが決まっていたのだ。高速道路を通行止めにしても、その交通が国道に流れ込んで、そこで立ち往生が発生すれば、同じことになってしまうからである。 

 

 ただし、それを知っていたドライバーは、少なくとも首都圏にはほとんどいなかった。しかも今回は、事前に決められていた区間以外でも、2月5日14時から通行止めが実施された。 

 

 国道20号線の予防的通行止めは、大垂水峠付近や山梨県内以西での実施のはずが、高井戸交差点(杉並区)~山梨県内まで通行止め。国道246号線は、通行止め区間はないはずだったが、瀬田交差点(世田谷区)から神奈川県内全域が通行止めとなった。 

 

 国道20号線に関しては、並行する東八道路が走行可能だったため、悲惨というほどではなかったが、国道246号線はまったく悲惨な状況となり、瀬田交差点を先頭に、ほぼまったく動かなくなってしまった。 

 

 実はこの通行止め、実際に封鎖されたのは、高井戸交差点と瀬田交差点のみで、その先の交差点からは下り線に進入して走行することができた。 

 

 つまり「全面通行止め」でもなんでもなかったわけで、立ち往生を防ぐ効果はあまりなく、逆に封鎖された交差点の手前で、立ち往生も同然の大渋滞が発生した。これははたして正しい規制だったのか? 

 

 

 微妙な問題だが、一般道に交差するすべての道路を封鎖することが到底不可能である以上、こういった部分的封鎖以外の方法はない。おかげで一部のドライバーだけがひどい目にあったわけだが、今回の出来事によって、首都圏のドライバーに対して、「雪が降ったらクルマでの移動・輸送はあきらめろ」という、強いアナウンス効果はあったはずだ。 

 

 国交省は、一般道の通行止めを行う際、X(旧ツイッター)等で通知を行い、それをテレビ・ラジオなどのメディアも伝えたが「え?14時から通行止め?」と聞いても半信半疑で、そのまま走行を続けていたドライバーが多かった。 

 

 逆に朝の出発前は、「今日は雪で電車が止まるかもしれないからクルマで仕事に行こう」という人もかなりいた。 

 

 もともと首都圏は、雪に慣れていないせいで、どうしても雪を舐めてしまう。どれだけメディアが「雪道でノーマルタイヤは道交法違反」といっても、「まあなんとかなるだろ」「そんなに降らないだろ」と、ノーマルタイヤで突撃するドライバーが一定数いる。それを完全に防ぐのは不可能だ。 

 

 しかし今回の事態で、「ひどい目に遭うかもしれないから」と、クルマの利用を思いとどまる人が増えるだろう。 

 

 国交省は、今回の混乱を検証し、今後に生かす方針だという。今後は、高速道路だけでなく一般道でも通行止めを実施することを、もっと事前にしっかりアナウンスしてもらいたい。 

 

 ただ、一般道でも予防的通行止めを実施するのは、雪が滅多に積もらない首都圏だからこそ、必要なことだろう。首都圏では鉄道も雪に弱いから、大雪の予報の時は外出を諦めるか、さもなくば出先に泊まりこむくらいの覚悟を固めるしかない。 

 

 

 
 

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