( 138143 ) 2024/02/11 14:25:57 0 00 通信とコンビニという業界を超えた大手同士が手を組む
KDDIは2月6日、ローソンに株式公開買い付け(TOB)を行い、株式の50%を保有すると発表した。TOB後はローソンの親会社である三菱商事と共同で経営する。通信とコンビニという業界を超えた大手同士が手を組むインパクトは大きい。ポイントサービスをはじめ各社が進める経済圏づくりにも影響が及びそうだ。
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TOBは4月頃をめどに4900億円を投じて実施する予定だ。すでに保有している2.1%と合わせて50%を取得する方針。TOBが成立すれば、KDDIと三菱商事がそれぞれ50%ずつ、ローソン株を持つ形になり、ローソンは両社の持ち分法適用会社になる。ローソンは上場廃止となる見込み。
コンビニと携帯電話の販売店の店舗網を互いに活用することや、KDDIが持っているデジタル技術を使ってコンビニ運営の効率化を図ることなどを検討するとしている。
■リテールテック
コンビニをはじめ流通・小売業界に詳しい流通ジャーナリストの渡辺広明さんは言う。
「通信会社もコンビニも今後、少子高齢化や人口減少などによって国内市場の縮小が見込まれます。通信、コンビニの両業界とも有力な大手3社に勢力図が絞られ、手を組む相手を探っていたことは想像がつきます。KDDIは2019年にローソンへ出資し、そのつながりもあって今回の大きな決断に至ったということでしょう」
渡辺さんによれば、今回の協業は特に、ITやAI(人工知能)など先端技術を使った「リテールテック」と呼ばれる技術を伸ばす意味で利点は大きいという。
「コンビニは今でも十分便利で、消費者からも現状に対して大きな不満は出ないほどサービスは充実しています。ただし今後、ネックになるのは国内の市場縮小や働き手の不足です。そこで『セルフレジ』の普及や遠隔地からの『リモート接客』、さらに注文から短時間で宅配する『クイックコマース』などのサービスを一段と進化する上で通信技術が鍵になってきます。KDDIが参画する意義は大きい」
通信技術の活用により遠隔地からの接客が容易になれば、例えば、医薬品の販売は、薬剤師の設置や対面での服薬指導などが足かせになっていますが、コンビニでも扱いやすくなる日が来るかもしれない。最近は食品や生活用品を扱うドラッグストアの進出にコンビニ業界は押され気味だ。また、使いやすい宅配サービスができれば、国内で圧倒的なシェアを持つ米アマゾンの牙城を切り崩すことにつながる可能性もある。
■コンビニは日常的に利用
さらに今回の協業が実現すれば、ポイントサービスをはじめとした携帯各社で激しさを増す利用者の囲い込み競争にも影響がおよびそうだ。
ポイント交換案内サイトの開発を手がける「ポイ探」代表の菊地崇仁さんはこう話す。
「2月6日の会見でも否定的な発言がなされたように、ローソンの店舗でいきなりNTTドコモの『dポイント』の取り扱いをやめるようなことはないでしょう。それでもいずれKDDIの『Ponta(ポンタ)ポイント』を優遇するようになっていくことは想定できます。コンビニは日常的に利用するものなので、消費者との接触率は高い。携帯各社には販売店網があるといっても、コンビニほどではありません。その意味でKDDIがリアルの実店舗の世界に入っていく意義は大きい。ローソンがPontaを優遇するようになれば、その勢いはおのずと強くなっていくはずです」
KDDIは2020年にauのポイントプログラムをPontaに統合。携帯料金などの還元はPontaで行うようになった。さらにスマホ決済の「au PAY」をはじめ、インターネット銀行「auじぶん銀行」やネット証券「auカブコム証券」などをグループに持ち、〝経済圏〟づくりを強めている。23年8月には金融サービスを利用するとスマホの料金が安くなったり特典が上乗せされたりする「auマネ活プラン」を発表した。
これに対し、NTTドコモが24年1月にネット証券のマネックス証券を連結子会社化するなど、ソフトバンクや楽天も含めたライバル会社としのぎを削る。
■タテ・ヨコの展開
前出の菊地さんは、これからは携帯会社以外も含めた経済圏づくりの競争がより激しくなるかもしれないと指摘する。
「携帯各社はこのまま自社のサービス拡張に突き進んでいくと思いますが、KDDIとローソンの協業が、それ以外のポイント経済圏にどう影響するかに注目しています。昨年のカルチュア・コンビニエンスの『Tポイント』と三井住友フィナンシャルグループの『Vポイント』の統合発表はインパクトがありましたが、流通系の『nanaco(ナナコ)』や『WAON(ワオン)』、さらに鉄道系の『JREポイント』などがこれからどんな手を打ってくるか。ポイント間、さらには異業種間で相い入り乱れた、タテ・ヨコの展開が活発になるかもしれません」
特に鉄道系のポイントサービスは現時点ではまだ業種を超えた本格的な連携・協業が進んでいないため、今後の競争の核になりそうだという。
ポイントサービス間の競争が進めば消費者の恩恵は大きい。競争を通じて、利用者を獲得したり優遇したりするためのサービスや仕組みが増えることが期待できるためだ。どの経済圏に乗ればお得なのか。消費者にとっては悩ましいところだ。
(AERA dot.編集部・池田正史)
池田正史
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