( 138518 )  2024/02/12 15:35:17  
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性加害疑惑に揺れる伊東純也が所属するスタッド・ランスでフル出場した(資料写真:森田直樹/アフロスポーツ) 

 

女性への性加害疑惑で刑事告訴され、アジアカップを戦っていた日本代表から途中離脱したフランス1部スタッド・ランスのMF伊東純也(30)が、現地時間11日に敵地で行われたロリアンとのリーグ戦にフル出場した。チームは「推定無罪」の考え方に沿い伊東を起用。2部への降格圏にいる相手に0-2と完敗したなかで、地元メディアは伊東のプレーを称賛した。クラブ公式X(旧ツイッター)には、誹謗中傷はなく、伊東の復帰を喜ぶ日本人ファンのコメントが集まった。 

 

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 森保ジャパンの一員として途中出場した、インドネシア代表とのアジアカップ・グループステージ最終戦以来、伊東が18日ぶりにピッチへ返ってきた。 

 もっとも、ロリアン戦を速報していたスタッド・ランスの地元メディア『Journal L’Union』が、右ウイングで先発していた伊東に初めて言及したのは後半5分だった。 

 スタッド・ランスの右CKのこぼれ球を拾ったロリアンがカウンターを発動させ、最前線のFWモハメド・バンバ(22)へパスを通した。今冬の移籍期間にヴォルフスベルガー(オーストリア)から加入し、デビューした前々節、そして前節と2戦連続ゴールを決めていた、コートジボワール出身のストライカーがグングンと加速していった。 

 目の前にいるのはスタッド・ランスの守護神エフバン・ディウフ(24)だけ。両チームともに無得点の均衡がついに破られるのか、と思われた直後だった。相手ゴール前から驚異的なスピードで戻ってきた伊東がバンバに追いつき、前方へ回り込んでボールを奪う。それだけではない。クリアではなく、味方にパスを繋いで攻撃に転じさせた。 

 伊東を追って戻ってきたキャプテン、モロッコ代表のDFユニス・アブデルハミド(36)が、プレー続行中にもかかわらずハイタッチを求めてきた。ピンチを防ぎ、さらにチャンスに繋げようとしたビッグプレーを、同メディアの速報は次のように伝えた。 

「ロリアンのカウンターを、伊東がDFの位置まで戻って食い止めた!」 

 もっとも、日本において女性への性加害疑惑で刑事告訴され、アジアカップを戦っていた森保ジャパンから途中離脱した伊東の先発起用に関して、同メディアの速報は特に取り上げていない。フランスのスポーツ紙『L’EQUIPE』もスタッド・ランスが0-2で完敗し、トゥールーズとの前節に続く黒星で順位を8位に下げた結果を報じただけだった。 

 こうした状況には推定無罪の大原則が貫かれている。 

 前出の『Journal L’Union』は、ロリアン戦の2日前の9日に行われた定例会見における、スタッド・ランスのウィル・スティル監督(31)のコメントを伝えていた。 

「フットボール以外で何が起ころうとも、準備ができていると感じているのならば、伊東純也は私たちのためにプレーしてくれると確信している。彼の周囲で起こっていることについて、クラブはよくコミュニケーションをとっている。それ以外は、いまのところ私たちの問題ではない。彼は非常に優れた選手であり、そこに集中させるつもりだ」 

 さらに『L’EQUIPE』はロリアン戦前に、タイトルに「伊東純也が何事もなかったかのようにスタッド・ランスに戻る」と打った記事を掲載した。記事のなかで、クラブのジャン=ピエール・カイヨ会長は伊東についてこう言及している。 

「私としては、推定無罪という原則にとどめておきたい。われわれとの話し合いのなかで、伊東はいつも通りの控えめな態度を見せながら『何も間違ったことはしていない』と主張しており、私には彼を信じない理由がないからだ」 

 

 

 伊東の性加害疑惑と刑事告訴が、週刊新潮のニュースサイト『デイリー新潮』で報じられたのは1月31日。バーレーン代表とのアジアカップ決勝トーナメント1回戦の直前であり、この試合で伊東は初めてリザーブのまま試合を終えていた。 

 一夜明けた1日に、スタッド・ランスは女性への暴力問題を「無視することはできません。活動しない、あるいは沈黙を保つことも望んでいません」と位置づけた上で、伊東側も虚偽告訴容疑で“逆刑事告訴”した状況を踏まえて次のように言及している。 

「日本人ストライカーの人間的な資質と振る舞いに対して、スタッド・ランスはこれまで一度も疑問視したことはありません。(中略)いま現在に至るまで、私たちは選手との連帯を示しています。同時に今後は真相の解明につながる具体的な証拠を待ち望むとともに、いかなる法的な進展に対しても細心の注意を払いながら見守っていきます」 

 一方の日本サッカー協会(JFA)は、スタッド・ランスの声明よりも後に伊東のアジアカップ離脱を発表。他の選手たちの要望もあって保留され、さらに残留の方向で検討とされながら、2日にJFA内で行われた話し合いで正式に離脱が決まった。 

 JFAの田嶋幸三会長(66)は緊急会見で「チームがしっかり戦える環境を作る上で、総合的に判断した」と伊東を離脱させた理由を説明。さらに、ステイクホルダーやスポンサーの声も影響したのか、という問いに「ゼロではない」とこう続けている。 

「パートナーのみなさんへ配慮をしたのも事実です」 

 方針が二転三転したJFAとは対照的に、スタッド・ランスは推定無罪の姿勢を貫き通している。伊東は6日から再開されたチームの練習に合流し、ロリアン戦の遠征メンバーに入り、中村敬斗(23)ともにスティル監督から先発に指名され、最初の交代カードが切られた後半27分に中村がベンチに下がったなかで、最後までピッチに立ち続けた。 

 沈黙気味だった前半から一転、後半18分には相手ゴール前に抜け出し、左足で強烈なシュートを放つもオフサイイドと判定された。後半アディショナルタイムには右サイドを突破し、十八番でもある低い弾道の鋭いクロスを相手ゴール前へ供給した。 

 ロリアン戦の先発メンバーを告げるクラブの公式Xには誹謗中書の声は少なく、伊東のフル出場を喜び、起用をためらわなかったチームに感謝する日本人ファンのコメントであふれかえった。 

「ありがとう!ありがとうっておかしいけど、ありがとう!」 

「今年一番感動した事かもしれない」 

「法廷で白黒つく前にスポンサーに忖度しまくって強制帰国させちゃう日本代表とサッカー協会。かたや即座に選手との団結を表明してスタメンで使用続けるスタッド・ランス。そら週刊誌の良い餌になるわ、日本サッカー界」 

 次節は18日(日本時間19日)に、ホームのスタッド・オーギュスト・デローヌにRCランスを迎える。事実が解明するまで、愛してやまないサッカーに集中できる環境が整った伊東は、チームの4試合ぶりとなる勝利だけを目指して調整を重ねていく。 

 

 

 
 

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