( 140161 ) 2024/02/17 14:21:52 1 00 日経平均株価が16日に史上最高値に迫る700円以上上昇し、3万8915円87銭に50円まで迫った。 |
( 140163 ) 2024/02/17 14:21:52 0 00 日経平均株価は史上最高値に肉薄した
16日の日経平均株価は一時700円以上値上がりし、バブル絶頂期の1989年12月につけた終値ベースの史上最高値3万8915円87銭にあと50円ほどまで迫った。最高値更新が視野に入り、日本株はこれからどうなるか。バブル期を知る、三菱UFJ信託銀行受託運用部チーフストラテジストの芳賀沼千里さんに聞いた。
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――バブル期と比べて今の状況をどう見ていますか。
当時とはだいぶ状況が異なります。まず、株価の投資尺度(バリュエーション)をみてみましょう。当時は、株価が企業の業績に対して割高か割安かどうかを判断する「株価収益率(PER)」という指標が50~60倍程度でした。米国の株価は14~15倍でしたから、日本は異様に高かったのです。
これに対し、現在は16倍前後で推移しています。バリュエーションは高くはないものの、企業の利益はしっかりと出ているため、日経平均の水準は当時に匹敵するというのが現在の状況だと思います。
■現在は5%台
また、当時とは世界経済における日本の立ち位置が大きく違います。米MSCI社が算出する代表的な世界株指数をみてみましょう。日本の株式は当時、世界全体の4割以上を占めていました。しかし現在は5%台にまで下がっています。当時は世界の株価を語る上で日本は欠かせない存在でしたが、今は多くの国の中の一つにすぎないという位置づけです。
足元の株価の値動きにも表れているかもしれません。今まで日本を見ていなかった外国人投資家が久しぶりに日本株を見てみたら、見ていなかった間に良くなっているぞ、と。外国人投資家がちょっと日本株を買っただけで思ったよりも値上がりしてしまったというイメージです。
さらに、当時とは日本人の意識も大きく違います。あの頃の日本人は強気で自信があったというか、イケイケドンドンのムードがありました。経営者の中には「米国から学ぶものはもう何もない」といった意見までありました。
でも今は世界のトップ企業からは出遅れ、背中を追いかける状況です。よく言えば謙虚、悪く言えば内向き。ちょっと慎重すぎるくらいの印象です。
――株価指標が当時に比べてまだ割高ではないということは、株価はこれからもっと値上がりするのでしょうか。
高値の更新は近く実現するでしょう。3~4年の中長期でみて、上昇していくとみています。 しかし、さらなる高値を目指していくのは来年以降になるのではないでしょうか。
■強欲インフレ
――なぜですか。
今後、米国の景気が減速し、企業の業績が悪化する可能性があると考えているからです。例えば、米企業には「強欲インフレ」と呼ばれるような、業績をかさ上げした動きの反動が生じる心配があります。強欲インフレというのは、企業が、賃金や原材料価格といったコストの値上がり分を上回るような商品やサービスの値上げを行い、業績を底上げすることです。それが可能だったのは、需要に対して供給が追い付かなかったためですが、供給制約は緩和されてきています。そうした中で、景気減速によって需要が弱くなると、企業の利益率は予想以上に下がる可能性があります。
こうした動きはまだ表面化していませんが、4月前後に予定される次の四半期決算が発表されるタイミング以降に数字として表れてくれば、株価が弱含む場面があるかもしれません。米国の景気が悪化すれば、当然、日本企業にも逆風です。場合によっては、株価がスピード調整を迫られる場面もあるかもしれません。
――では今年の日経平均の値動きはどう予想していますか。
高値は4万円を超える可能性もありますが、一方で、安値は3万2千円程度まで下げることがあってもおかしくはないでしょう。
――今後、本格的な上昇に向けて必要なことは何でしょうか。
日本企業はまだ多くの無駄を抱えています。大企業であれば、いろいろな事業を抱えすぎている。事業の多角化を図るのは悪いことではありません。しかし、自分の会社にとって何が必要か、どんな事業をやるべきかをもっと厳しく選ぶ必要があります。
また、一つの業種に企業の数がなお多すぎるように見えます。もちろん、規模の小さな企業が全部ダメということではありません。しかし平均的には、それなりの規模のある企業のほうが、生産性は高くなる傾向があります。企業の集約化を進め、生産性を高める余地があると考えています。
■株主還元策ばかりに注目
さらに、もう一段の成長を遂げるためにはしっかりとした事業戦略が大事です。最近は資本コストや資本効率への関心が高まり、自社株買いをはじめ株主還元策ばかりに注目が集まっていますが、資本効率を高めるためにはやはり、どうやって売り上げや利益を伸ばしていくかが重要です。
資本コストや資本効率を考える上で大事な指標の一つに、投資家が投下した資本に対して企業がどれだけの利益を上げているかを示す「自己資本利益率(ROE)」があります。日本は9%程度にとどまり、米国の17~18%や欧州の15%などに比べて低い。少なくても12~13%程度まで引き上げる必要があるでしょう。株価も、そうした指標が高くなっていく過程で上がっていくのだと思います。
芳賀沼千里(はがぬま・ちさと) 三菱UFJ信託銀行受託運用部チーフストラテジスト。東京大学卒業後、1982年野村証券入社。87年に英ロンドン大学経済学部大学院に留学。野村総合研究所、三菱UFJモルガン・スタンレー証券などを経て、2019年に三菱UFJ信託銀行入社。21年から現職
池田正史
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