( 140358 ) 2024/02/18 00:19:38 0 00 TBS NEWS DIG Powered by JNN
まさかの2期連続のマイナス成長でした。GDPの2期連続マイナスは、機械的にはリセッション(=不況入り)と受け止められるものです。日本経済にとって、いわゆる「好循環」実現のハードルがいかに高いかを示しています。
【写真を見る】衝撃的なGDP2期連続マイナス でも株高になる当たり前の理由【播摩卓士の経済コラム】
■10-12月期実質GDPは年率で0.4%減
内閣府が発表した23年10-12月期のGDP(=国内総生産)は、物価上昇分を除いた実質で前期比0.1%のマイナス、年率換算で0.4%のマイナスでした。
事前の予想では、その前の7‐9月期が大幅なマイナスだったため、多くのエコノミストがプラス1%程度の成長を見込んでいました。それだけに2期連続マイナスは衝撃的でした。
中身を見ても、個人消費が前期比0.2%減、設備投資が0.1%減、住宅投資が1.0%減と、いわば「総崩れ」の状態で、良いのは、インバウンド需要も含めた輸出の2.6%増だけです。
とりわけGDPの6割近くを占める個人消費は、これで3期連続のマイナスで、コロナ明けの経済正常化にもかかわらず、物価高が消費マインドを、長く・大きく、冷え込ませていることがはっきりしました。
■名目GDPは600兆円目前 バブル期以来の伸び
しかし、GDP統計を名目で見ると、随分、風景が違ってきます。
10-12月期の名目GDPは年率換算で1.2%増加と2期ぶりのプラスでした。
1年を通してみると、一層、特徴がくっきりと浮かび上がります。2023年の日本の名目GDPは実額で591兆4820億円でした。これは前年比で、なんと5.7%もの増加で、1991年のプラス6.5%以来の高い数字です。2023年の中国の名目成長率は4.6%でしたので、驚くべきことに、日本は中国よりも高い名目成長を実現したのです。
実額の591兆円という水準も画期的です。前年の550兆円台から、600兆円まであと一歩のところまで達しました。日本のGDPは長らく500兆円というのが相場で、リーマンショックの2009年や、東日本大震災のあった2011年には、500兆円割れにまで追い込まれました。30年間見えなかったGDP600兆円という代替わりが、ついに見えて来たのです。
■名目GDPはドイツに抜かれ世界4位に転落
この名目GDP591兆円を1年間の平均為替レートで割ったドル換算額が、ドイツに抜かれたことが大きく取り上げられています。確かに、名目GDPが、(1)アメリカ、(2)中国、(3)ドイツに次ぐ世界4位に転落したと聞けば、愉快ではないでしょうが、足もとで進んだ急速な円安が大きな要因です。
であれば、これを自虐的に受け止めるよりも、長年ドイツより成長率が低かった理由に向き合い、成長を再起動することの方が重要です。
■株価は史上最高値更新が射程に
名目と実質で見え方の異なるGDPが発表された2月15日、東京株式市場では日経平均株価が終値でも3万8000円台に乗せ、いよいよバブル期の1989年12月につけた3万8915円という史上最高値の更新が射程に入って来ました。
「2期連続のマイナス成長なのになぜ株高?」と、違和感を指摘する声もあります。しかし、株価は名目値の世界です。物価を加味した実質値で株価の比較はしませんし、企業の売上げも利益も名目値です。名目成長率がこれだけ高ければ、株が上がって当たり前というわけです。
■まずは名目成長を目指したのが「物価目標」
考えてみれば、「物価目標2%の実現」を優先した経済政策は、まず名目成長を目指した政策と、言い換えることができるでしょう。デフレでは成長のきっかけがつかめないという現実からスタートした政策だからです。
先に物価を上げて、賃金をそれに追いつかせ、追い越させることにつなげていくというのが、今狙っている「好循環」の具体的な経路です。それはなかなかの難路のようにも見えます。特に物価上昇率が2%をはるかに超えたこの1年は、賃金は物価に全く追いついていません。GDP統計でみるインフレ率(=デフレーター)は、2023年は3.7%でした。比較可能な1981年以降最も高い数字で、これだけインフレ率が高ければ、実質をプラスにするハードルは高かったと言えるでしょう。
■「好循環」実現に向けた今後の政策こそ大事
春闘で去年を上回る賃上げを実現することは、最も重要なことです。しかし、それはスタート地点に過ぎません。実質賃金をプラスに反転させ、実際に消費支出が拡大し、その結果の需要増大を生産性向上につなげて、初めて「好循環」が実現するのです。
そのためには、円安是正を含め、高すぎる物価上昇をモデレートなものにすること。実質所得がプラスの領域に達するまでエネルギーなどの家計支援を続けること。可処分所得を減らすような政策を封印すること。需要増大が生産性向上を促す取り組みを続けることなど、課題は山ほどあります。
「昨年以上の賃上げ」は、決してゴールではありません。政策の手綱さばきが問われるのは、むしろこれからです。
播摩 卓士(BS-TBS「Bizスクエア」メインキャスター)
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