( 140488 )  2024/02/18 14:01:57  
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〔PHOTO〕iStock 

 

 人口減少日本で何が起こるのか――。意外なことに、多くの人がこの問題について、本当の意味で理解していない。そして、どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。 

 

【写真】意外と知らない、人生がうまくいかない人の「決定的な間違い」とは…? 

 

 100万部突破の『未来の年表』シリーズの『未来のドリル』は、コロナ禍が加速させた日本の少子化の実態をありありと描き出している。この国の「社会の老化」はこんなにも進んでいた……。 

 

※本記事は『未来のドリル』から抜粋・編集したものです。また、本書は2021 

年に上梓された本であり、示されているデータは当時のものです。 

 

 外国人労働者を見ていこう。政府や企業は人手不足対策として積極的に進めてきた。 

 

 1995年をピークにして生産年齢人口が大きく減ってきたが、とりわけ若者の都会流出に悩む地方にとっては、外国人労働者は“救世主”であった。 

 

 日本は原則として移民を受け入れていない。このため、政府は「外国人技能実習制度」(日本で技能を習得し母国に戻って活躍できるようにする制度)の趣旨を捻じ曲げ、同制度を隠れ蓑として実質的な単純労働者を増やし続けてきた。 

 

 近年はさらに、勤労世代の人口が減ったこともあり、政府は各業界団体の強い要請を受ける形で、2019年4月に新たな在留資格「特定技能」まで創設した。 

 

 当面の対象は建設や介護、農業など人手不足が深刻な14職種に絞ってはいるが、一定の日本語能力と技能を持つ技能実習生を「特定技能1号」として、これまで認めてこなかった単純労働に就労可能とする百八十度の政策転換であった。 

 

 しかも「特定技能」は2段階方式であり、「特定技能1号」のうち難しい日本語と、建設、造船・舶用工業の2分野で熟練した技能を身に付けた人を「特定技能2号」として、定期的な審査はあるものの、家族の帯同を含めた事実上の永住権まで認めたのである。 

 

 政府は「特定技能1号」について、2023年度までに約34万5000人を受け入れることを想定している。移民と極めて近い制度を設けてまで、外国人労働者の確保に躍起になってきたのである。 

 

 出入国在留管理庁によれば、2020年に日本に入国した外国人のうち、「技能実習」の8万3826人(前年比55.6%減)、「留学」は4万9748人(同59.1%減)であった。2019年4月に創設された「特定技能」だけは3197人増の3760人となった。これについては制度初年にあたる前年が極度に低水準であったことが要因であり、「見かけ上」の急増だったに過ぎない。 

 

 出入国が難しくなり、数字の上では観光客と同様に外国人労働者についても激減したが、データを調べると意外な結果が表れる。雇われた外国人労働者は増えているのだ。 

 

 コロナ禍の影響もあって増加率については13.6%増であった前年より9.6ポイントも低い4.0%増と伸び悩んだ。しかしながら、厚労省の「外国人雇用状況」(2020年10月末現在)によれば、日本で働く外国人労働者は前年より6万5524人増の172万4328人となった。2007年に届け出が義務化されて以降、過去最高を更新していたのである。 

 

 詳細を見ていくと、「宿泊業、飲食サービス業」は前年比1.8%減となり、2007年に届け出が義務化されてから初めてのマイナスとなった。全体の28.0%を占める「製造業」も0.3%減で8年ぶりに前年を下回った。 

 

 その一方、「医療、福祉」(26.8%増)、「建設業」(19.0%増)など大幅増となった業種もあった。コロナ禍の影響は産業によって大きな差があり、外国人労働者の雇用にも色濃く反映しているということだ。在留資格別では、コロナで入国が困難になった影響で、前年には24.5%増だった「技能実習」が4.8%増にとどまった。農業で作付けの繁忙期に技能実習生が間に合わず、例年の7割程度の作付けしかできなかったケースもあった。 

 

 コロナ禍で出入国が厳しくなったにもかかわらず、2020年の外国人労働者数が過去最高となった背景には、人口減少が進み社会全体としては人手不足が続いていることがある。コロナ不況の影響が小さかった業種を中心に採用増加の流れが継続しているのだ。 

 

河合 雅司(作家・ジャーナリスト) 

 

 

 
 

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