( 140858 )  2024/02/19 14:25:49  
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日経平均株価は今年すでに5000円超の上昇。一足早く春が来ている感覚になる。もし最高値を更新したら、それは「新たな始まり」だ(イメージ写真:Getty Images) 

 

 日経平均株価は今年に入って以降、昨年末の3万3464円から1カ月半で5023円上昇。先週末(2月16日)は3万8487円で引けた。 

 

 16日のザラバでは一時、1989年12月末の終値ベースでの史上最高値(3万8915円87銭)にあと約50円まで迫ったが、今回の「日経平均5000円高」は、昨年初めから7月3日までの「怒涛の8000円高」よりも、スピードにおいても売買代金においても、はるかに迫力があった。多くの投資家は驚愕のうちにその時間を過ごさざるをえなかったのではないか。 

 

■「天井が見えない上昇相場」が到来する 

 

 この原動力の中心になったのは、アメリカからの大量の資金だ。FRB(連邦準備制度理事会)の利上げと量的引き締め圧力の中でも景気は堅調で、ソフトランディングに成功している。 

 

 また、米中対立の高まりから中国への道が遮断される中で、行き場を失った資金が入っていることも大きい。世界からアジアに流れる資金の中心は中国だったが、それが日本へと変わった。 

 

 この流れは、どう考えてもそう簡単に終わるとは思えない。日本株市場はデフレ脱却相場からインフレ相場に向かう道半ばだ。苦労してようやくインフレ退治が見えてきた世界のほかの市場から見れば、日本はまさに魅力いっぱいで、すぐには衰えようがない。つまり、日経平均の史上最高値更新は、「今回の相場の終わり」ではなく、「新しい相場の始まり」といえる。 

 

 しかもこの新しい相場は、「史上最高値」という目標値があったこれまでの相場と違い、目標値(天井)が見えない相場だ。つまり、投資家はとにかくこの相場にふるい落とされぬように、最後まで(筆者の予想では、バブル発生時まで)ついて行くことが最も重要だ。 

 

 だが、日本の投資家は短期志向が根強いうえ、平成バブル崩壊後、あれだけ期待された2013年以降のアベノミクス相場でさえ2年半で当時の高値をつけた経験から、「株は長期で持つものではない」という習性が身についてしまっている。そんな日本の投資家には、「バイ・アンド・ホールド投資法」は極めて難しいことだ。 

 

 

■「移動平均乖離売買法」による売買が今後も有効 

 

そこで、この相場に乗れない投資家や、せっかく買っても上昇過程で売ってしまい、持ち株がどんどん減ってしまっている投資家には、本欄で前々回の「今から日本株を買いたい人に勧める3つの投資法」と前回の「日経平均3万6000円台でも『買い』で問題ないワケ」の2度にわたって提案してきた。 

 

 詳しくはぜひそちらをお読みいただきたいが、ひとことで言えば、「日経平均と25日移動平均線との乖離率が+7%以上なら売ってもいいが、+5%を下回ったら買い戻す」という戦略だ。 

 

 この「移動平均乖離売買法」は、上げ下げを判定するものでも、あとからこじつけた整合性の法則でもない。「7%の乖離率を物差しとする売買法」は昔から使われてきた一般的な方法で、この大相場に最後までついて行くための「稚拙だが確実な策」との筆者の思いから提案したまでのことである。 

 

 事実、今年に入っての急騰局面で、日経平均が25日移動平均線から+7%超の乖離となったのは1月15日と22日の2日だけで、その後は数少ない連続安で+5%を下回った。「+7%」で売り、「+5%」を下回ったところで再び買っていれば、持ち株を減らさずに済んだわけだ。 

 

 ここで重要なことは、この売りシグナルが出た両日の引け値は3万5901円と3万6546円だったということだ。では、先週末16日の約34年ぶりの高値3万8487円の乖離率はどうだったか。答えは+5.67%であり、「売りシグナルは出ていない」ということだ。 

 

 株価水準が高いところでもなかなか売りシグナルが出ないという、テクニカル手法としては難しい売買法になるかもしれないが、これならば上昇局面で売りたくなる投資家でも、ある程度相場について行けるはずだ。 

 

 一方、心配されていた企業業績はどうだろうか。1ドル=150円が定着しそうな予想外の円安ドル高で、2024年3月期の上場企業の純利益は、製造業、非製造業ともに過去最高を更新する見通しだ。それを裏付けるように、16日の日経平均予想EPS(1株当たり利益)は2365円53銭と、4日連続で史上最高値を更新している。 

 

 筆者はこの水準なら今の相場を十分信じてついて行くに足る数字だと考えているが、「自分が買ったらなぜか必ず下がる」という投資家の愚痴をよく聞く。 

 

 

 実際、どんな上昇相場でも買ったあとの株はよく下がるものだ。昨年の日経平均においても、前半の約8000円高のあと、半年もの調整期間があった。とくに今回のような大相場では、「株は買ったらしばらく下がるものだ」と開き直った気持ちでないと、相場に乗れない。これは前回も言ったことだが、何度も言わせていただきたい。 

 

■もしハイテク株が一服したらどうすればよいか 

 

 さて、ここまでは全体観の話をしてきたが、もちろん個人投資家の多くは個別株投資が中心だ。これからどんな株を買うのが有利なのか。 

 

 そのヒントは「日経500種平均株価」にある。本指数は東証プライム市場上場の500銘柄を対象に、日経平均と同じ計算方法により日本経済新聞社が算出する株価指数で、1982年1月4日から公表されている。 

 

 1989年の平成バブル崩壊、2000年のハイテクバブル崩壊の「ダブルダメージ」を受けた日経平均と違い、ハイテクバブルのダメージが少ないこの指数は、すでに1989年の高値を抜いて久しい。つまり、今回の日経平均の上昇は、半導体中心の「ハイテク株の出遅れ修正運動」にほかならない。したがって、ここでハイテク株の上昇が終わることはないが、さすがに一服感は出よう。 

 

 とすれば、その後は調整期間を終えた昨年前半の主力だったメガバンク・ゼネコン・大型鉄鋼株の「主役奪回」が考えられる。しかし、それだけでは面白くない。東証スタンダート市場や、外国人が売り越していた東証グロース市場にも、そろそろ資金が回りそうだ。 

 

 もし、日経平均が史上最高値を更新するとしても、2月での史上最高値更新はあまりにスピードが速い。外国人投資家も皆が皆、この恩恵を受けているわけではない。出遅れた外国人が挽回戦に勝つために、出遅れ個別株の世界を選ぶことは十分に考えられるシナリオだ。出遅れ銘柄がまだ3000銘柄もあるといっていい日本市場は、彼らの要求に十分応えることができるだろう。 

 

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています) 

 

平野 憲一 :ケイ・アセット代表、マーケットアナリスト 

 

 

 
 

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