( 141213 ) 2024/02/20 13:55:11 0 00 Photo:PIXTA
運転に不慣れな人や魅力を感じられない人も、「お気に入りのクルマ」を手に入れれば移動が楽しくなるはず。可能であるならば、憧れの輸入車をあえて購入し、相棒と一緒に運転スキルを伸ばすという選択肢も有効です。さらに、輸入車(特に高級モデル)に乗ると「あおられにくくなる」などのメリットもあります。そこで今回は、初心者がいきなり“外車デビュー”する場合の注意点やおすすめ車種を真剣に考察します。(自動車ジャーナリスト 吉川賢一)
【画像】中古車販売店に並ぶBMW
● 運転初心者の 「いきなり高級車デビュー」はアリ!?
「運転初心者は、身の丈に合った、手ごろなクルマを買うべきだ」――。
ドライバーの間には、そんな暗黙の了解があるように思えます。ですが実際のところは、運転経験の浅い人の中にも「高級車に乗ってみたい」と考えている人は多いようです。
ソニー損害保険が2023年11月に行った「20歳のカーライフ意識調査」を見てみましょう。クルマの所有に肯定的だとする20歳(2003年4月2日~2004年4月1日生まれ)に現在欲しいクルマを聞いたところ、1位はトヨタのアクア(14.1%)、2位はレクサス(RXやNXなど、13.0%)、3位はBMW(1シリーズや3シリーズ、10.5%)という結果だったそう。
1位は比較的手ごろな国産コンパクトカーとなりましたが、2位と3位には高級車ブランドが挙げられました。運転免許の取得から日が浅い若者にも、「せっかく車を持つならば憧れのブランドのクルマを手に入れたい」という願望があることがわかります。
20歳の若者でさえ、この結果です。20歳を過ぎ、社会経験を積んで金銭的に余裕の出てきた初心者ドライバーの多くが、本音では高級なクルマを求めていても不思議ではありません。
「運転には不慣れだが、育児や仕事の都合でマイカーが必要になった」「社会人になってから免許を取った。これから自分のクルマを買ってみたい」。そんな人たちが「暗黙の了解」を破り、いきなり高級車を買うという選択肢は「アリ」なのでしょうか。
一口に高級車と言ってもさまざまな車種がありますが、今回は輸入車(いわゆる“外車”)にテーマを絞って、初心者がいきなり購入することのメリット・デメリットを考えてみます。
● 高級外車に乗ると 「あおられにくくなる」理由
とはいえ運転免許を取得したあと、初めて所有するクルマの王道は、やはり国産コンパクトカー(軽自動車含む)。なおかつ、中古車でしょう。コンパクトカーはボディサイズが小さいので運転がしやすいですし、ぶつけてしまったとしても国産車であれば修理費が安く済み、また燃費もよいものが多いです。
そして、中古車であれば購入の際のコストも安く済みます。筆者も初心者のころは、何度もボディやホイールに「ガリ傷」を刻み、その度にコンパウンド(傷を消すための研磨剤)で磨いたり、板金修理をしたりしながら、クルマの運転感覚というものを身に付けていきました。
しかし、人生初のクルマというのは、その後のカーライフを通してずっと記憶に残ります。そのため、「いきなり憧れの外車を手に入れる」という選択肢も決して悪くないと筆者は思います。
高級な輸入車は、単にデザインがオシャレであるだけでなく、パワーがあるクルマが多いので、高速道路で余裕のある運転ができます。そして実は、一部の“高級外車”の場合、「社会的地位のある人が乗っている」という印象を周囲に与えるためか、「あおり運転」の被害に遭いにくくなるなど、いいところがたくさんあります。ただ、いきなり輸入車を購入するとなると、覚悟しなければならないこともいくつかあります。
● ウインカーを出したはずなのに ワイパーが「ウイーン」…
近年は輸入車であっても、国産車同様に「右ハンドル車」に作り替えられていることがほとんどです。多少の性能差こそありますが、運転操作はさほど変わりません。ですが、一つだけ違うことがあります。
それはウインカーとワイパーの操作です。国産車では右にあるウインカーレバーが、輸入車では左にある場合が大半です。知らずに乗った場合、ウインカーを点灯させようとして右のレバーを操作すると、ワイパーが作動してしまいます。
それだけならいいのですが、メルセデスの場合は、国産車のウインカーレバーの位置にシフトチェンジをするレバーがあるため、走行中にN(ニュートラル)に入れてしまうとギアが抜けてしまう懸念があります。すぐにD(ドライブ)に戻せば問題ありませんが、「いきなりベンツ」を買いたい人は要注意です。
● 輸入車は国産車よりも 修理に「時間とお金」がかかる
ただ、レバーの操作などは、乗っているうちにすぐになじむでしょう。初心者はそれよりも、「輸入車は国産車よりもトラブルが多く、その修理に『時間とお金』がかなりかかる」ということを覚悟しておく必要があります。
近年のクルマではあまりないようですが、2000年代ごろまでの輸入車は、電子制御(電制)サスペンションや電制ステアリングといった電装系が弱いという印象です。
具体的には、エンジン故障の警告ランプが消えない、トランスミッションから異音が出た、サイドウインドウが上下しなくなった、電制サスペンションに不具合が出た、などのトラブルがよくあったそうです。日本で多く売れているフォルクスワーゲンやアウディに多いDCT(デュアルクラッチトランスミッション/変速機構の一種)も、異音や動作不良のトラブル事例がよくありました。
もちろん国産車でもトラブルはなくはないですし、近年は輸入車でもこうしたトラブルが少なくなってきました。しかし、いざトラブルが生じた場合は、輸入車の場合は部品が国内にない場合もあります。取り寄せや修理に時間がかかるうえに、お金も余計にかかることが多いです。国産車よりも手間とお金がかかるということは覚悟しておく必要があります。
● 中古の輸入車は 7年落ち以内が安全
ここからは、輸入車を中古で買うときの注意点をお伝えしていきます。もちろん予算がある人は新車を買っていただければと思いますが、コストの観点から、やはり初心者が手を出しやすいのは中古車です。
とある中古車買い取り専門店によると、状態の良さや運転しやすさなどの観点から、中古の輸入車は「7年落ち(2024年だと2017年式)以内」を狙うのが安全だそう。
具体的な車種としては、予算100万~200万円ならばフォルクスワーゲンの先代ポロや先代ゴルフがおすすめです。厳密には大衆車寄りのモデルではありますが、「とにかく“外車”に乗ってみたい!」という人にはうってつけの車種になります。
より高級感を求める場合は、メルセデスの先代Aクラスや先代Bクラスが有力な選択肢です。BMWの先代1シリーズもよいでしょう。他のメーカーでは、ルノーの先代トゥインゴ、先代ルーテシア、先代カングー。そしてプジョーの先代208あたりをおすすめします。
予算200万~300万円ならば、メルセデス先代Cクラス、BMW先代3シリーズなども候補としていいでしょう。
これらはボディサイズが大きすぎず、また、メカニズムも複雑すぎないため、万が一故障しても修理費を抑えられる可能性があります。国内で乗っている人が多いために、トラブルシューティングのやり方や修理費用など、情報が手に入りやすいということも、初心者の人におすすめできる理由です。
● 「どのクルマを買うのか」だけでなく 「どの店から買うのか」も重要
輸入車を中古で購入するにあたっては、「どの店から買うのか」も大事なポイントです。近年は、正規ディーラーとつながっている認定中古車(アプルーブドカー)店が増えていますが、これらは正規輸入車ディーラーで下取りをして、車両チェックやメンテナンスを受けた高品質の中古車を扱っている店ですので、安心感は抜群です。
ネットの中古車検索サイトで、こうしたお店のクルマを見てみると、車両購入費が相場よりも高くなっていることがあります。ですが、以後心配のないカーライフを送るには、できるだけ信頼できる店舗から買うことがおススメです。
正規ディーラーではない、小さな中古車店で輸入車を購入する場合は、購入総額の中に「納車前メンテナンス」と「手厚いアフターサービス」がある店を選びたいところ。筆者が以前、総額100万円程の中古フランス車(7年落ち)を購入した際は、その販売店で展示されているクルマの台数や車種、販売店の評判などまで下調べをしたうえで、店舗に出向いてクルマを確認。消耗品の交換、故障しやすい箇所の説明、万が一故障したときの費用など、納車前のメンテナンスの手厚さを把握したうえで、購入を決めました。
ほかのクルマよりも20万~30万円ほど総額が高くなりましたが、激安中古車には「激安になっている理由」がどこかにあります。これは国産車にもいえることなのですが、「憧れのクルマがこんなに安く買える!」と飛びついた挙げ句、修理費が高くついてしまっては元も子もありません。そうならないよう、「メンテナンスされた良質なクルマを信頼できそうな店から買う」というのが幸せなカーライフに近づく第一歩です。
もしかすると、クルマを「単なる移動手段としての道具」だと考えている人がいるかもしれません。ですが、せっかくクルマに乗るならば、やはりクルマそのものの魅力や、今回解説した「選ぶ楽しさ」を味わってもらいたいと思います。
運転操作自体に魅力を感じられなかった人も、お気に入りのクルマを手に入れれば移動が楽しくなるはず。現時点では運転に不慣れでも、気にし過ぎる必要はありません。可能であるならば、ぜひ憧れの“外車”を手に入れて、その相棒と一緒に運転スキルを伸ばしていってください。
吉川賢一
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