( 141218 ) 2024/02/20 14:01:29 0 00 「文章の最後にマル(句点)をつけるだけで怖い」と言われてしまう話題の「マルハラ」ですが、大人世代は若者に合わせないといけないのでしょうか?(写真:metamorworks/PIXTA)
「文章の最後にマル(句点)をつけるだけで怖いと言われるなんて。もう何を書いていいかわからない。マルハラって?」と困惑している人も多いのではないか。大人世代は、LINEの作法も若者世代に合わせなければならないのだろうか。併せて、LINEの使い方によって好かれたり嫌われたりする理由と対策までをご紹介したい。
■俵万智さんも困惑、マルハラはいけないこと?
好まれるLINEの文章は、世代によって異なる。その顕著な違いが「マルハラ」だ。大人世代からマル(句点)のついた文章を送り若者に威圧感を感じさせてしまうことが、一部ではマルハラスメント、通称「マルハラ」と呼ばれている。
大人世代はLINEの文章でマルをつけるのが当たり前だが、若者世代は基本的に使わない。そして普段マルを見慣れないため、ついていると意味を見出してしまう。怖いとか冷たいと感じたり、威圧感を感じたりしてしまうのだ。
歌人の俵万智さんも、「句点を打つのも、おばさん構文と聞いて…」と、「優しさにひとつ気がつく ×でなく○で必ず終わる日本語」という句を発表している。当たり前のことをしていただけで怖がられてしまい、困惑した大人世代の気持ちを代弁したものだろう。
では、大人世代がLINEの文章に句読点や絵文字をつけるのはいけないことなのか。大人世代は、若者に合わせなければならないのだろうか。
大人世代は要件があるときのみメッセージを送るため、文章が長文になりがちだ。読みやすくするために改行をしたり、文章の最後にマルを付けたりする。相手がいつ読むかわからないので、誤解を生まないように絵文字や顔文字をつける。すべてガラケーメール時代から続く相手への気遣いの現れだ。実際、コミュニケーションもスムーズになり、好感も持たれやすい。
■マルハラはNG行為ではない「世代間の違い」
一方、若者世代はチャットのようにやり取りをしており、文節や単語などで送るのでマルはほとんど使わない。相手を待たせることを嫌うため、基本的に絵文字や顔文字も使わない。大人世代が見ると「誤解されてしまうのでは」と心配になるくらいそっけない文章だが、効率を求める若者にはこちらが好まれる。
若者世代も「!」「ー(長音記号)」などは使うことがあるが、絵文字はあまり親しくない相手や年上世代とやり取りするときに使う程度。相手を待たせないことが彼らにとっての気遣いであり、世代ごとに気遣いの形が違うというわけだ。
LINEは誕生からもうすぐ13年経つ。ガラケーメールとLINEのどちらから利用し始めたか、どちらを中心に使ってきたかで、どちらの使い方になるかが変わると考えられる。
異世代とやり取りをすると違和感を感じることが多いが、述べてきたように、あくまで世代ごとにコミュニケーションの形が異なるだけのことだ。どちらが正しい、間違っているということはないし、合わせなければならないわけもない。大人同士でやり取りをするならマルはあって当然だし、読みやすくするためにつけることが悪いわけがない。
ただし、年長者とやり取りすることでそもそも若者世代は萎縮したり、威圧感を感じやすい状況にある。大人世代から若者世代に送る場合は、マルはつけないで、絵文字を控えめにして送ってあげると親切かもしれない。
実はアイコンのプロフィール写真でも、好感を持たれたり敬遠されたりすることがある。
マッチングサービス「ハッピーメール」の調査によると、印象が悪いLINEアイコンについて聞いたところ、「自撮り写真(加工あり)」という回答が圧倒的に多く、「恋人と映る写真」なども。一方、印象が良いLINEアイコンは「動物・ペット」「風景・景色」などとなっている。
写真を登録せず初期設定のままにしているのも、あまり好まれないようだ。無味乾燥なものではなく、ペットや好きな景色など、人柄や趣味が感じられるものが好かれるというわけだ。なお、自撮り写真は不人気だが、他人に撮ってもらった自分の写真は好感を持たれるという違いがある。
ある20代女性は言う。「自撮り写真は自己愛が強そうで苦手。他の人に撮ってもらった写真は、撮ってくれた相手との関係性が感じられていいのかも。アイコンは自分を表現する場だし、知ってもらう場でもある。やっぱり自分らしさも大切なのでは」
日本結婚相談所連盟(IBJ)の「恋人とのLINE」に関する意識調査(2021年9月)によると、好印象を受けるLINEのアイコンは、「旅行等で撮影した風景写真」「花や車等の趣味の写真」「表情が分かる写真」など。やはり「アイコンなし」や「アップの自撮り写真」はウケがよくない。「複数人で映っている写真」もNGとなっているのは、どれが本人かわからずまぎらわしいためだろう。
InstagramやX、TikTok、YouTubeなどの他のSNSは、多くの人に見てもらうために利用することが多い。しかしLINEは、家族や友人、知人との連絡ツールとして使われるものだ。アイコンにもその人らしさや人柄などが求められるというわけだ。
■“これを使えば問題ない”万能スタンプはない
では、LINEスタンプに好まれる傾向はあるのか。
あるLINE社員に、「残念ながら『このスタンプさえ使っておけば間違いない』というものはない」と聞いた。全国講演時、どのLINEスタンプが好まれるか聞いて回ったところ、どのスタンプも「イラッとくる」などネガティブにとらえる人が少数ながらいたというのだ。
「送られてきたスタンプで『どういう意味、嫌味?』と悩んだことは何回もある。どちらにもとれるスタンプが多くて悩む」と先程の女性は言う。スタンプの捉え方は人によって異なるため、言葉での説明も送ると誤解を避けられるだろう。
なお、やり取りする相手と文章を似せたり、絵文字の量、スタンプの種類や頻度などを合わせると相手に好まれやすい。いわゆるミラーリング効果が働くためだ。相手がスタンプを多く使う人なら合わせて多めに送ってみたり、相手と似せた文章で返信したりすると、好感を持たれやすくなるはずだ。
ただし注意点もある。「おじさんなのにかわいすぎるスタンプを使っていると引く」とか、「真面目な話をしているのにふざけたスタンプを送ってくるのはNG」という声はよく耳にする。年齢や立場、場面に応じたTPOに合ったスタンプを選ぶことも重要ではないだろうか。
最近は仕事でLINEを利用する場面も増えてきたが、そもそもLINE、特にLINEスタンプはカジュアルな印象が強く、年配のユーザーには仕事向きではないと感じる人もいる。
ワークスモバイルジャパンの「ビジネスチャットにおける新入社員のスタンプ利用に関する意識調査」(2020年8月)でも、社内チャットにおける新入社員から上司へのスタンプ利用は、55.2%の上司がOKである一方、18.7%はNGととらえている。
利用場面によっても、スタンプに対する印象は異なる。感謝の気持ちをスタンプで伝えるのは上司の半数以上がOKだが、謝罪の気持ちでは半数以上がNGと答えている。少なくとも謝罪時には、スタンプは利用しないほうがよさそうだ。
初めから無料でダウンロードできるLINEスタンプは、ムーンやコニーなど癖の強いものが多く、使い方が難しい。年上の人に送る場合はスタンプの使用はひかえめにしたり、送る場合も、「承知しました」などのおとなしめの“敬語系スタンプ”を利用するのがいいのではないか。
■自己中心的にせず周囲への気遣いを
嫌われる投稿の傾向もある。一般的に、自慢やマウンティング投稿は嫌われやすい。自撮り写真が多いのも、自意識が強いと感じられて敬遠されることが多いようだ。
若者世代でも自撮り写真を載せる割合は減っており、アイコンも顔写真ではなく風景や趣味がわかるような写真、投稿も顔を持ち物で隠したり、後ろを向いた写真を使用することが多い。「盛りすぎると恥ずかしい」という感覚なのだ。
ネガティブな投稿も嫌われることが多くなる。投稿内容には問題がなくても、サムネイル写真が不快で嫌がられることもある。他のユーザーが見ていて気分が悪くなるような投稿はせず、自分の投稿を客観的に確認した上で投稿するといいのではないだろうか。
SNSは人と繋がりやすくしたり、より親しくなるためのコミュニケーションツールであり、人柄が感じられたり、共感できると好まれる傾向にある。自己中心的にせず周囲を気遣うことで、好かれたり、コミュニケーションもスムーズになる。感覚の違いには世代間の違いも大きい。ぜひ参考にしていただければ幸いだ。
高橋 暁子 :成蹊大学客員教授/ITジャーナリスト
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