( 141238 ) 2024/02/20 14:19:59 0 00 名目GDPでドイツに抜かれ世界4位に後退した日本。
15日、内閣府が発表したGDP。まず去年1年間の名目GDP、こちらは物価の変動が反映され、生活の実感に近いものと言われています。この名目GDPは5.7%増え591兆4820億円で、過去最高額となりましたが、これをドルに換算すると…ドイツを下回り世界4位に後退しました。一方の実質GDPは、名目GDPから物価の変動による影響を取り除いたもので、経済成長の実態に近いものとされています。去年10月から12月期は前の期から0.1%減り、2四半期連続のマイナス成長となりました。いずれも厳しい結果ですが、状況を好転させるカギはどこにあるのでしょうか?
2四半期連続のマイナス成長となった実質GDP。物価高騰などの影響で個人消費や設備投資がふるいませんでした。一方で前の期から増えたのが輸出です。インバウンド需要などの影響を受け、2.6%増えました。輸出だけが気を吐いているのです。
幕張メッセで開かれている食品流通業界向けの展示会「スーパーマーケット・トレーディングショー」。国内からおよそ2200社が出展しました。多くの関係者が詰めかける中、特に会場を熱心に見て回っていたのは、海外のバイヤーです。JETRO(日本貿易振興機構)が日本の食材に関心を寄せる12カ国のバイヤーを招待し、日本企業との商談の機会を提供しました。
その理由についてJETRO農林水産食品部の安東利華さんは「日本からの農林水産物の支出は過去10年間右肩上がりで伸びている。円安に頼りすぎる状況もよろしくないので、海外の市場と裾野を広げ、輸出を伸ばす努力は、引き続きしないといけない」と話します。
実は2023年、農林水産物と食品の輸出額はおよそ1兆5000億円と過去最高となりました。東京電力福島第1原発の処理水海洋放出に伴い、中国が輸入を規制した影響などが懸念されましたが、円安などが追い風となった形です。
中華麺の製造や販売などを行う「クラタ食品」を訪ねたのは、アルゼンチンで日本食の卸売りをしている男性。とんこつラーメンに注目したようです。
「アルゼンチンで日本食がブームでラーメンが出始めている。日本の商品は値段が高いのがネックだった。今の円安はとても助かる」(アルゼンチンから来たバイヤー)
話し合うことおよそ40分、見事商談が成立しました。早ければ来月から取引が始まるといいます。
「輸出先の37カ国目がアルゼンチンになる。国内は高騰している原材料が粗利に結びつかず苦しいのが本音。外食の人たちも外に出るチャレンジをしていて、海外の売り上げは増え続けている」(クラタ食品の倉田安彦社長)
輸出が伸びているにもかかわらず、成長率が振るわなかった今回の実質GDP。その最大の要因は0.2%減と3四半期連続のマイナスになった個人消費です。物価高の影響で、食料品などが売れない状態が続いているのです。
こうした中、ハンバーガーチェーン大手のロッテリアは、先週から平日ランチタイム限定の値下げに踏み切りました。 人気の絶品チーズバーガーやエビバーガーのセットは100円お得な690円に、テリヤキバーガーも650円と安くしました。
平日ランチセットで値下げに踏み切ったロッテリア
客からは「他の店と金額に差がなくなったので、普段食べないところで食べてみようと」「普段の昼食代は800~1000円いかないぐらい。ありがたい」との声が上がります。
最大手のマクドナルドは1月、原材料高騰や為替コスト上昇などの理由から、およそ3割の商品の値上げを発表しました。ロッテリアの新戦略はその真逆となります。
値下げができた理由について、ロッテリアは「2023年4月に(すき家を運営する)ゼンショーHDの傘下になり、食材の調達ルートなどをこれまでより拡大できた。節約志向を強める客を取り込んでいきたい」といいます。
個人消費の拡大に向けた企業の努力が広がっているものの、「第一生命経済研究所」首席エコノミストの永濱利廣さんはGDPを上げるには、より重要なことがあると指摘します。
「物価高に消費が負けているということは、賃金の増加以上に物価が上がってきてしまっているということ。個人消費の持続的な拡大を促す上では実質賃金の安定的なプラスが不可欠」
日本の経済成長に欠かせない賃上げ。15日、新たな動きがありました。
日立製作所では、労働組合が経営側に春闘の要求書を提出。金額で1万3000円のベア5.5%の賃上げを求めました。経営側である日立製作所の田中憲一執行役常務は「個人消費の拡大がGDPの上昇に繋がる。賃上げが個人消費の上昇に繋がる。生産性・収益を上げて、サステナブルな形で賃上げ、ベアにつなげていきたい」と話しました。
名目GDPで世界3位の座に就いていた日本。しかし、2023年はドル換算で4兆2106億ドルとなり、ドイツに抜かれ、4位に後退したのです。円安が進む中、ドルを基準にすることでGDPが目減りした影響も大きいと言いますが、今後日本に必要なことは何なのでしょうか。
「重要物資などの生産拠点を国内に集積させることで、国内で良いものを作り、輸出することを加速させることが重要」(第一生命経済研究所の永濱さん)
※ワールドビジネスサテライト
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