( 142208 )  2024/02/23 14:45:36  
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写真提供: 現代ビジネス 

 

 裏金事件で宿敵・自民党安倍派が解散に追い込まれ、岸田文雄政権も支持率低迷で衆院解散権を事実上封じられる中、財務省が増税に向けた布石を着々と打っている。その象徴が政府税制調査会(首相の諮問機関)の会長に、日銀出身の女性エコノミスト・翁百合(日本総合研究所理事長)氏が就いた人事だ。 

 

【写真】森喜朗が怒りのあまり… 

 

 翁氏はGDPの2倍を超す日本の借金膨張に警鐘を鳴らすなど、財政再建派の論客として知られる。昨春には「令和国民会議」(令和臨調)の財政・社会保障部会共同代表として、政権が重点政策に位置付ける少子化対策の財源について「税を軸に」と訴える提言も発表している。霞が関では「消費税率を10%からさらに引き上げる『社会保障と税の一体改革2.0』の旗振り役を期待しての起用」(厚生労働省幹部)との見方がもっぱらだ。 

 

 政府税調の会長ポストは表向き委員による互選だが、実際は事務局を務める財務省が決めるのが暗黙の了解。第2次安倍晋三政権発足直後に就いた前会長の中里実・東大名誉教授も、当時の真砂靖次官らがお膳立てしたとされる。 

 

 だが、安倍官邸のプレッシャーを受けた中里政府税調が取り組んだのは、アベノミクスに寄り添った経済成長志向の税制改革メニューばかり。安倍首相に気に入られた中里氏の在任期間は10年以上に及んだが、財務省にとって「全くの期待外れ」(茶谷栄治次官周辺筋)に終わった。 

 

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 毎年度の税制改正の内容は与党の税制調査会が決め、政府税調は中長期を見据えた税のあるべき姿を提示するのが本来の役割分担。今回、財務省は初の女性会長として注目を集める翁氏の発信力で「政府税調を財政規律を訴える本来の役割に戻したい」と切望している。 

 

 一方、自民党では1月末、財務省が舞台回しを務める財政健全化推進本部が再始動した。注目すべきは本部長代行に小渕優子氏が就いたことだ。父・恵三氏が率いた旧経世会は、消費税導入を後押しするなど財務省との蜜月関係で知られた。 

 

 同省有力OBや現役官僚の間には「小渕優子首相待望論」があり、今回は「健全化本部で手腕を発揮してもらい、『ドリル優子』と綽名され傷ついた名誉を回復させる狙いもある」(元次官)という。 

 

 ただ、健全化本部の課題は、達成困難な「国と地方の基礎的財政収支」(プライマリーバランス)'25年度黒字化目標の扱いや、物価高に応じた歳出抑制目標の強化、首相が打ち出した定額減税の単年度での打ち切りなど、難題ばかり。 

 

 国民の不興を買いかねない内容でもあるだけに「贔屓の引き倒し」にならないかとも思えるが、安倍派の呪縛が解けた財務省は勢いづいている。茶谷次官や新川浩嗣主計局長ら幹部は、小渕氏を連日引き回しては、有力財界人やマスコミ人との接点づくりに勤しむ。 

 

 「週刊現代」2024年2月24日・3月2日合併号より 

 

週刊現代(講談社) 

 

 

 
 

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