( 142583 )  2024/02/24 15:07:16  
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確定申告時期は例年修羅場だが、今年は特にストレスを感じる人が多いのではないか(写真はイメージです) Photo:PIXTA 

 

 自営業者やフリーランスにとって確定申告時期は例年修羅場であるが、申告作業がこれほどストレスが溜まる年もなかなかないだろう。庶民は「脱税は、犯罪」と厳しい取り締まりを受ける一方で、裏金問題が次々と明らかになった自民党の議員は悠々としているのだから。巷に渦巻く「やってられるか!」の阿鼻叫喚に耳を傾けよう。(フリーライター 鎌田和歌) 

 

● 庶民は少額でも徹底処分 なのに自民党議員は? 

 

 今月、川崎市の教育委員会が出張旅費をたびたび不正受給していたとして、教職員ら78人を大量処分したと発表した。 

 

 【参考】2月15日付 東京新聞 

https://www.tokyo-np.co.jp/article/309543 

 

 報道によれば、136人による不正受給は総額約104万円で、回数は最大で1人105回、額は計8万4297円が最多。すでに全額返納されているという。記事を読むと、出張先に本来認められていない自家用車を使ったのに、公共交通機関の旅費を請求したというもので、公共交通機関が少ない場所、時間帯においてやむを得ず、というケースもあったと推測されている。 

 

 この報道に対するネット上の反応を見ると、職員らに対する批判もあるが、同時に冷めた意見も散見される。 

 

 「裏金議員のお咎めは?」「自民党議員じゃなかったらちゃんと処分するんだ」 

 

 などである。最も多い人で不正受給が8万4297円だったことを挙げ、自民党議員のパーティー券によるキックバック額と比べるユーザーも。 

 

 教職員の交通費不正受給は批判を受けて当然ではあるが、それならもっと大胆なことをしていた政治家の皆様は……?というのは、庶民からの当然の感慨だろう。 

 

● よくもまあ、揃いも揃って…… 「自民党裏金リスト」も制作される 

 

 「自民党裏金リスト」というサイトを作った人もいるようだ。 

 

 【参考】自民党裏金リスト 

http://onyancopon.starfree.jp/uraganejimin/ 

 

 このサイトでは安倍派「清和政策研究会」と二階派「志師会」に分けて、それぞれ五十音順に議員の顔写真と名前が掲載されている。クリックすると、それぞれについて明らかになった「裏金」の額が表示される。 

 

 報道では、どうしても大物議員や3000万円を超えるような「裏金」額の議員に焦点があてられがちだが、顔写真付きリストで並べられると、よくもまあ揃いも揃って、と言いたくなる。 

 

 数百万円、数千万円といった金額が並ぶので、ついつい二桁万円ぐらいなら「少ない」と感じてしまうのだが、処分された川崎市職員の最多不正額が8万円そこそこだったことを考えると、与党議員の金銭感覚がいかに庶民とかけ離れているかがわかる。 

 

 一連の問題で、これまで逮捕された自民党議員は池田佳隆議員ひとり。大野泰正議員が在宅起訴、谷川弥一議員が略式起訴され、谷川議員は議員辞職したものの、同じく数千万円以上の”裏金”が報じられている二階俊博議員、萩生田光一議員、山谷えり子議員らは、早くも逃げ切った雰囲気を出しているように見える。 

 

 意図的に不正を行ったと立証するための捜査は困難を極めるのであろうと理解しつつも、やるせなさが残る。正直者がバカを見るような世の中だという印象を与えているのは、間違いなく裏金疑惑の議員たちである。 

 

 

● 「納めても納めても楽にならず……」 確定申告する人たちの恨み節 

 

 ところで、2月16日から確定申告の受付が始まった。自営業やフリーランスはこの時期に、一年分の売り上げと経費を計算し、所得を申告しなければならない。税金額を確定するためである。 

 

 間違えれば修正申告が求められるし、売り上げの規模によっては税務調査の対象となる。ほとんどの善良な市民は、間違えて脱税の嫌疑をかけられたくないから申告には神経を使うし、税理士に申告作業を依頼する人もいる。税理士がいたとしても、経費の領収書や取引先からの支払い調書をまとめる作業はそれなりに手間であり、よっぽど事務や経理作業が好きな人でなければ、気の重い仕事であることは間違いない。 

 

 さらに、昨年にはフリーランスを泣かせるだけの制度として悪名高いインボイスが導入されている。 

 

 例年ストレスフルなこの時期に、今年はさらに「議員はいいよな、見逃してもらえて」という恨みつらみが乗っかってくる。 

 

 確定申告を行う納税者である筆者も、今年の申告は例年以上に気が重かった。「納めても納めても我が暮らし楽にならず、じっとニュースに見入る」といった具合である。せめて納得のいく使われ方をしてくれているのであればまだしも、「万博トイレ2億円報道」などを見てため息をつく毎日である。 

 

 岸田首相は2月16日の確定申告初日に「それぞれの納税者の皆様方に法令にのっとり、適切に申告・納税を行っていただくようお願いを申し上げたい」と発言したが、これが報道されるとSNSでは当然ながら批判が噴出した。どの口で、という話である。 

 

 2月20日付東京新聞(https://www.tokyo-np.co.jp/article/310291)や同日付のテレ朝ニュース(https://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/900001600.html)など、庶民の不満を伝える報道も続いている。 

 

 2月21日には鈴木俊一財務相が「国民が不安や怒りを持っていると感じている」「労務省で担当職員が大変苦労しているのは申し訳ない」と言及する事態に。 

 

 SNS上では「#確定申告ボイコット」のハッシュタグも生まれた。 

 

 

● 記憶に残りにくい過去の不祥事 次の選挙までに絶対に忘れない 

 

 しかしおそらく、自民党議員への抗議の気持ちで実際に確定申告をボイコットする人も、確定申告窓口でクレームを言う人も少数派であろう。 

 

 確定申告をボイコットして痛い目に遭うのは結局自分であるし、直接関係のない役所の窓口担当者で鬱憤を晴らしても、担当者に対する迷惑行為を処理されるだけで、政治家には届かないと容易に推測できるからだ。 

 

 庶民にできるのは淡々と確定申告作業を進めることだけなのかと思うと、無力感に苛まれてしまう。 

 

 唯一の希望は、岸田内閣と自民党の支持率が下がり続けていることだろうか。 

 

 【参考】(2月19日/FNNプライムオンライン) 

https://www.fnn.jp/articles/-/659714 

 

 上記の調査では、裏金問題の「不記載議員」が国会の政治倫理審査会で説明するべきかどうかについての質問に、89.0%が「説明するべき」と回答している。 

 

 先述した「自民党裏金リスト」サイトでは、トップに「なかなか忘れられがちな過去の不祥事。思い出せるように一覧にまとめました。選挙の時などお役立ていただければ幸いです」という説明がある。 

 

 庶民ばかりが税金を厳しく取り立てられるように感じて仕方ないこの状況を、周囲の人と愚痴ることも必要だ。人と話すことによって、人は忘れづらくなるからだ。次の選挙まで忘れないようにしよう。それを誓うばかりである。 

 

鎌田和歌 

 

 

 
 

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