( 142613 )  2024/02/24 15:36:39  
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義足で東京マラソンに挑戦するウクライナ兵、ロマン・カシュプルさん。地元で練習に励んでいる=慈善財団「CITIZEN」提供 

 

 地雷などで足を失ったウクライナの負傷兵2人が、3月3日に開かれる東京マラソンに出場する。同じように負傷した仲間の医療費を集める慈善活動の一環で、義足を付けての完走を目指す。ロシアの全面侵攻から24日で丸2年となる節目を前に、2人は「今も戦闘が続いていることや、多くの負傷兵が出ていることへの関心を高めたい」と意気込んでいる。 

 

【写真】義足でマラソンに出場するウクライナ負傷兵 

 

 ウクライナとロシアの衝突は2014年のクリミア編入以降相次いでいた。ロマン・カシュプルさん(27)は、19歳の時に義勇兵として戦闘に参加。間もなく正規軍に所属し、22歳だった5年前、東部のドネツク州で偵察の任務中に地雷を踏んだ。巨大な爆発音が響き、右足を激しく損傷。切断手術を受けてリハビリ生活に入った。 

 

 カシュプルさんは当時のことを「地雷で足を失った仲間は多くいたし、自分はポジティブな性格。『人生は終わらない』という確信があった」と振り返る。義足の訓練を始めて1カ月半後には歩けるようになり、次第にスポーツにも取り組んだ。仲間たちを勇気付けようと、重さ約16トンの軍用機をけん引するパフォーマンスを披露したこともあった。 

 

 22年2月にロシア軍の全面侵攻が始まると、1カ月あまりの間、義足を付けながら前線に立った。他の兵士の訓練役を務める傍ら、自らも武器を持って戦闘に参加したという。 

 

 厳しい戦況の中、次第に「世界に向けて支援を訴えたい」という気持ちが高まり、国際的なスポーツ大会への参加を志すようになった。23年4月には、ロンドン・マラソンに初挑戦して完走した。大使館やNPOのサポートを受けて参加する今回の東京が4回目のマラソンとなる。世界6大マラソン全てを走り切るのが目標だ。 

 

 カシュプルさんはマラソンの魅力について「兵士、一般人、スポーツ選手。皆が同じスタートラインに立って互いを励まし、自分も他の人と一緒だと思える瞬間がある。それがとても心地よい」と語る。妻(33)や8歳と3歳の幼い息子たちのサポートを受けながら、厳寒のウクライナで日々練習に励んでいる。日本の人たちへ「全面侵攻から2年たっても厳しい状況は何も変わっていないことを知ってほしい」と訴える。 

 

 手りゅう弾で16年に左足を失ったもう1人の参加者、ユーリ・コズロフスキーさん(41)は、今回初めてマラソンに挑む。カシュプルさんとは負傷兵のスポーツ大会で知り合った。「ウクライナはまだ頑張っているという姿勢を、マラソンを通じて見せたい。民主主義に共感する人々はぜひサポートしてほしい」と意気込みを語った。 

 

    ◇     

 

 ウクライナにはロシア軍の全面侵攻で手足の切断を余儀なくされた人が多く、義肢メーカーや慈善団体などは、その数を2万人から5万人とも推計する。現地で負傷兵のための募金活動を実施する慈善財団「CITIZEN」によると、医療費の確保が大きな課題になっているという。 

 

 財団の担当者は「質のいい義肢やリハビリのためには、経済的な支援が必要」と訴える。カシュプルさんらの東京マラソンへの参加を通してNPO法人「日本ウクライナ友好協会KRAIANY(クラヤヌィ)」が呼び掛ける募金は、23年2月の戦闘で脊椎(せきつい)に重傷を負った男性兵士の治療費などに充てられる。 

 

 募金の詳細は、クラヤヌィのホームページ(https://www.kraiany.org/ja/denys-dosuzhy.html)から確認できる。【黒川晋史】 

 

 

 
 

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