( 142718 )  2024/02/24 23:22:48  
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深刻な問題となっている「カスタマーハラスメント」 

 

東京都は全国で初めて客が従業員などに対し、悪質なクレームなどをする「カスタマーハラスメント」の防止条例制定に向けた検討を進めると明らかにしました。狙いはどこにあるのでしょうか。 

 

 

「ふざけた回答してんじゃねえぞ、こら。殺すぞお前。録画してんだったらな、警察に言ってな、脅迫罪でも何でもいいから言えよ。ああん。なめてんのかよ、こら」(コールセンターに実際にかかってきた客からの電話) 

 

電話越しで殺すぞと脅す男の声。客や取引先が立場を利用して、従業員に暴言を吐くなどする迷惑行為「カスタマーハラスメント」、カスハラです。 

 

東京都の小池知事は20日、カスハラの防止に向けた条例を制定する方針を表明。制定されれば全国初の条例となります。東京都の関係者によると、条例の中身はカスハラが許されないことを周知するほか、具体的な禁止行為についてガイドラインを策定して示すことなどが検討されているといいます。また、罰則は設けない見込みです。 

 

その狙いについて小池知事が理由に挙げたのが企業の人手不足です。労働組合の中央組織である連合の調査によると、2022年までの5年間で、カスハラが増えたと答えた人の割合は36.9%。飲食店や旅館では、従業員の退職や廃業に追い込まれるケースもあり、深刻さが増しているのです。 

 

「タリーズコーヒー」ではネームプレートをイニシャルに変更 

 

人手不足にあえぐ企業にとってカスハラ対策は喫緊の課題です。対策に力を入れる企業の一つが「タリーズコーヒー」です。従業員の胸元のネームプレートを見てみると「H .T.」とローマ字で書かれています。 

 

タリーズコーヒーでは以前、客による従業員への付きまといというカスハラが発生。それ以来、客に名前がわからないよう従業員のネームプレートをイニシャルに変えました。レシートのレジ担当者の欄も名前ではなく、社員番号です。 

 

「特に飲食店は人手不足が重要な問題になっていて、少しでも安心して働きたいと思う環境が必要」(「タリーズコーヒージャパン」秘書広報グループの須﨑未紗さん) 

 

タクシー業界でも、これまで助手席側に設置していた運転手の名前と顔写真の表示がありません。運転手の個人情報保護のため法令改正が去年8月に行われ、氏名を表示する義務がなくなったのです。 

 

タクシー運転手からは「自分の知らないところで個人情報がさらされる懸念があった」「写真を撮る人がいたが、そういったことがなくなり安心」との声が上がります。 

 

全日空は現在、運送契約を定めた約款に搭乗を拒否する迷惑行為を明示することを検討しています。また、任天堂では2022年からカスハラ行為があった場合は、客からの交換や修理に応じないなどの対応をとっています。 

 

ただ、ある調査によりますと、カスハラ対策についての方針がない企業が55.3%とまだまだ広がっていないのが現状です。こうした現状から、小売業やサービス業などの労働組合で構成する団体「UAゼンセン」は、サービス業が多い東京都が取り組む意義は大きいと期待を寄せています。 

 

 

45歳以上の現役世代がカスハラを行うケースが多い 

 

一方で、カスハラをしてしまう人をどう減らすのか。ある調査では、カスハラを行うのは、45歳以上の現役世代が多く、まだ世帯年収1000万円以上の人がカスハラやすい傾向があるとの結果が出ています。 

 

街で聞いてみると、そこには今まで受けられていた高い質のサービスが受けられなくなったという不満もあるようです。 

 

「店員など若い人が多いが、少し雑なところが見受けられるかな。つい言いたくなってしまう。言ってしまう気持ちは分からないでもない」(64歳の会社員) 

 

「前に比べて人手不足というか少ない人で回していると感じることはある」(50歳の会社役員) 

 

なぜ世帯年収の高い中年男性がカスハラをしやすいのでしょうか。 

 

メンタルヘルスの専門家である「ココロバランス研究所」の島田恭子代表理事は次のように話します。 

 

「加害行動の割合が多かった層は会社員や経営者、役員そして自営業の人。日々攻撃的に働いている人たちが多いので、そのような生活習慣や生き方がカスハラになってしまう傾向がある」 

 

「条例ができることである程度の基準、私たちの会社・業界はこういうことや言動があれば『ノー』と基準を設けることができる」 

 

※ワールドビジネスサテライト 

 

 

 
 

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