( 143113 )  2024/02/26 00:21:43  
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トランプ前米大統領(撮影・大内清) 

 

11月の米大統領選に向けた24日の南部サウスカロライナ州共和党予備選で、トランプ前大統領(77)は、不法移民問題や物価高を巡って有権者が抱くバイデン大統領(81)の「失政」への怒りを追い風に圧勝した。政権返り咲きを目指すトランプ氏の「実行力」を評価する声は支持層では根強い。だが無党派層の支持も得たヘイリー元国連大使(52)との戦いは、本選に向けたトランプ氏の弱点もあぶり出している。(コロンビア 渡辺浩生) 

 

【写真】バイデン氏支持は「あり得ない」テイラー・スウィフトさんをトランプ氏が牽制 

 

州中央部コロンビアの選挙登録事務所で、自営業エリック・アンソニーさん(34)は「米国を元通りに戻すリーダーはトランプだけ」と語った。この日はロシアのウクライナ侵略開始から2年。アンソニーさんは「トランプが20年の大統領選を民主党に盗まれずに2期目も続けていればプーチン(露大統領)は侵略しなかった」と断言した。 

 

トランプ氏は24日夜、勝利演説し、バイデン氏を標的に「お前は首だ。国を壊している」と対決姿勢を鮮明にした。集会では中高年層が多い。 

 

州内には多くの基地があり、退役軍人が多い。南部ボーフォートでIT業を営む退役海兵隊員のケネス・ブラウンさん(60)は、「バイデンでは若者は米国に誇りがもてない」と話す。息子が高校時代に集会でトランプ大統領から「若者は強くなって国を守れ」と激励され、海兵隊に入隊したと話した。 

 

コロンビアから車で40分のプロスペリティ。人口1千人強の田舎町には教会が目立つ。24日の同州予備選に投票した約6割がキリスト教右派だった。教会関係者を政治活動に導く団体の創設者、チャッド・コネリーさん(60)は「相手を罵倒するトランプの物言いに閉口する信者は多いが、やると言ったらやって結果を出す実行力に信頼する。中でも国境問題が今年最も重大な転換点となる」と語った。 

 

米国に昨年、過去最多の約250万人がメキシコ国境から不法入国し、バイデン政権の「無策」に対する批判は強い。ヘイリー氏も「国境閉鎖」を訴えたが、現職時代に国境の「壁」建設を実現したトランプ氏に対する期待は圧倒的に高い。 

 

一方、党派に関係なく投票できる同州の予備選では無党派、民主党支持者がヘイリー氏に投票する姿もあった。民主党支持の匿名女性(77)は「トランプが勝てば、女性蔑視や差別が広がる。誰を支持するというより、ノーの意思表示だけで来た」と話す。 

 

 

南東部ジョージタウンで60代の無党派、ジル・レッチワースさんは「ヘイリーをいじめるトランプと取り巻き男衆は最低」。保守系ウォールストリート・ジャーナル紙は社説で「ヘイリー氏がトランプ氏の脆弱(ぜいじゃく)性を有権者に語ることを陣営は懸念すべきだ」と指摘したが、その通りの展開だ。 

 

トランプ氏はヘイリー氏の支持者を自身の政治運動「MAGA(米国を再び偉大に)」から排除すると圧力をかけるが、ヘイリー氏が集会で「彼が語るすべては報復。大統領になりたい男が人々を自分のクラブから締め出している」と揶揄(やゆ)すると大歓声が上がった。 

 

全米で3割を占める無党派層は過去の選挙で勝敗のカギを握り、バイデン・トランプ再対決に不満を抱く層でもある。CNNの出口調査によると、ヘイリー氏は無党派の54%、穏健派(中道)・リベラル層の71%の支持を得た。ヘイリー氏が引き付けたこれらの有権者は自らへの忠誠心を重視するトランプ氏の政治手法ではこぼれ落ちる。 

 

「トランプは結束のメッセージを示すべきだ」とコネリー氏。「秘密兵器はヘイリー氏の副大統領候補指名なのだが」と漏らした。 

 

 

 
 

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