( 144793 ) 2024/03/02 00:31:33 0 00 【森永康平の経済闘論】
日経平均株価がバブル期の1989年12月29日の取引時間中に記録した3万8957円44銭を終値で上回り、史上最高値を記録した。日本の株価指数が34年ぶりに高値を更新したというニュースを見ると、その他の国々の株価指数はこの34年間でどれぐらい上昇したのかが気になるものだが、本稿ではあえてそこには触れずに新たな歴史の扉を開けた日本の株式市場を喜ぶことにしよう。
しかし、バブル後の最高値を更新したということから、バブル期と同様にこの後、日経平均が暴落するのではないか、と危惧する方も相当数いるようだ。高値更新の日経平均に死角はないのだろうか。
日経平均は年始から2カ月もたたないうちに上昇率が17%を超えた。PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)をみれば一時期の割安さは解消されつつあるが、現在の株価水準でもバブルというほどの過熱感はない。2月には特に大きな理由もなく1日で1000円以上上昇した日もあったわけであり、今後はスピード調整として上昇が一服する期間もあるだろう。1日で1000円を超す下落幅を記録してもおかしくないが、それをバブル崩壊と騒ぐ必要はない。
株価は絶好調だが日本の経済はそれほど強くはない。厚生労働省が発表した毎月勤労統計調査によれば、実質賃金は21カ月連続のマイナスで、総務省が発表した家計調査によれば1世帯当たりの消費支出は10カ月連続で減少している。内閣府が発表した2023年10~12月期の国内総生産(GDP)の内訳を見てみると、日本のGDPの半分以上を占める個人消費は前期比0・2%減と3四半期連続のマイナスとなっており、民間の設備投資も3四半期連続のマイナスだ。住宅投資は2四半期連続のマイナスであり、日本経済のメインである内需は脆弱(ぜいじゃく)な状態だ。
この日本経済を下押しさせる懸念の1つに金融政策の転換がある。8日に日銀の内田眞一副総裁は「仮にマイナス金利を解除しても、その後にどんどん利上げをしていくようなパスは考えにくく、緩和的な金融環境を維持していくことになる」と述べ、マイナス金利の解除を匂わせた。22日に植田和男総裁は衆院予算委員会に出席し、日本経済について、「デフレではなくインフレの状態にある」と述べた。このような経済環境のもとで金融政策を転換すれば、内需にさらなるダメージを与えるだけでなく、企業業績の追い風となっていた円安にも歯止めをかけることになるだろう。
新たに開けた扉を自ら閉じて、再び暗黒期に戻るような政策だけは避けるべきだ。
■森永康平(もりなが こうへい) 経済アナリスト。1985年生まれ、運用会社や証券会社で日本の中小型株のアナリストや新興国市場のストラテジストを担当。金融教育ベンチャーのマネネを創業し、CEOを務める。アマチュアで格闘技の試合にも出場している。著書に父、森永卓郎氏との共著『親子ゼニ問答』(角川新書)など。
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