( 144908 )  2024/03/02 13:51:42  
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初任給の額が掲げられた企業のブースもあった(1日、横浜市西区で)=桐山弘太撮影 

 

 2025年春に卒業予定の大学生の就職活動が1日、解禁された。人手不足によって今年も学生優位の「売り手市場」で、選考の早期化も進んでいる。今年の春闘では、早期の賃上げで妥結する企業が相次いでおり、初任給引き上げといった処遇の改善で人材の確保を目指す。(石黒慎祐) 

 

【表】主な企業が行っている、入社後の処遇や採用方法の見直し 

 

 横浜市のパシフィコ横浜で、1日午前に始まった就職情報会社マイナビが主催する合同企業説明会には、約140社が出展した。このうち、6割が初参加だ。企業名が記された各社のブースには、「初任給25万円」「転居なし」「完全週休2日制」といったチラシが目立つ。 

 

 マイナビが2月前半に実施した調査によると、25年卒について、企業の77%が採用活動は厳しくなるとの見通しを示している。出展した富士屋ホテル総務人事部の福田篤史次長は「人材獲得競争は年々、厳しさを増している。採用は最重要課題だ」と話す。 

 

 人材を確保するため、初任給を引き上げる動きが相次いでいる。みずほフィナンシャルグループは、傘下のみずほ銀行で24年春入社の初任給を5万5000円引き上げ、26万円にした。担当者は「初任給は就職先を決める重要な要素の一つだ」と言い切る。 

 

 ゼネコンの鹿島建設は、3年連続で初任給を引き上げており、24年度は最大の引き上げ幅になるという。民間調査機関の労務行政研究所の調べによると、23年度に初任給を引き上げた東証プライム上場企業は7割に上り、24年度も高い水準が見込まれるという。 

 

 入社後の業務内容を明示する企業も多い。住友商事は、25年卒からコース別採用を導入する。総合商社は、エネルギーや食品といった幅広い品目を扱っており、秀でた人材を確保するために、28のコースを用意した。 

 

 一方、リクルートが実施した調査では、すでに採用を終えた24年卒で、「予定数を充足できた」と答えた企業は前年比4・3ポイント減の36%にとどまった。若年層の人口減少が見込まれる中で、新卒一辺倒の採用にも限界が来ている。 

 

 

 経験のある中途社員に期待する企業も多い。ニッセイ基礎研究所の坂田紘野(こうや)研究員は、「少子化をきっかけに、採用方法も変更を迫られている。人材の流動化に対応できる仕組みが必要だ」と話している。 

 

 採用活動は前倒しが進んでいる。マイナビが2月上旬に行った調査によると、企業から内定を得たと答えた学生の割合は25%で、前年よりも10ポイント高かった。インターンシップ(就業体験)で企業と学生の理解が進み、早期に内定を出す動きになっている。 

 

 立教大3年の女子(21)は、昨年6月に就職活動を始め、11月と12月に2社から内定を得た。立教大キャリアセンターの担当者は、「昨年末以降、内定を持った学生から就活を続けたいという相談が増えている」と話す。リクルート就職みらい研究所の栗田貴祥(たかよし)所長は、「複数の企業から内定を得ても、人気の大手企業を目指す学生の厳しい環境は変わらない。企業選びの軸を考えておかないと、入社後のミスマッチにつながりかねない」と指摘している。(教育部 平出正吾) 

 

 

 
 

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