( 144918 )  2024/03/02 14:05:08  
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新NISAはネット証券での口座開設が人気 

 

 日経平均株価が1989年12月29日に記録した3万8915円。その史上最高値の更新が現実味を帯びてきた。専門家が年内の4万円台突入も確実視するなか、気になるのは今年から始まった新NISA制度を活用した投資方法だ。失敗しない賢い資産運用術とは。 

 

【図を見る】一目瞭然! 新NISAのメリット、デメリットは 

 

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 東証プライム市場が連日のバブル後最高値更新に沸いている。2月16日には日経平均株価は一時、3万8865円に到達。バブル期の最高値にあと50円まで迫ったのだ。年明けに3万3000円台の取引で始まった日経平均は、いったいどこまで上昇を続けるのか。 

 

「年内に4万円を超える可能性はあると思いますし、中長期的に上昇トレンドは続く可能性があります」 

 

 と言うのは、第一生命経済研究所の永濱利廣首席エコノミストだ。 

 

「株価が高値を記録している理由はいくつかあります。その一つは米国株が上昇していることと共通していて、生成AI関係で半導体関連企業の業績が予想以上に良いことが挙げられます。一方で、中国経済が停滞していることから中国株を売って、その代わりに日本株を買う動きもあります」 

 

 マネックス証券の広木隆チーフ・ストラテジストも、 

 

「企業業績も好調ですし、株価は年内に4万3000円台を見据えています」 

 

 滅法強気の構えなのだが、小林慶一郎慶應義塾大学教授は連日の最高値更新の理由について、 

 

「円安によって製造業、特に海外で売買を行う企業の収益が上昇したこと、好調なアメリカ株に伴って日本株も好調であること、さらに中国経済が停滞しており、それに伴う日本株への資金流入が行われているという3点が影響しているのではないでしょうか」 

 

 そう分析した上で、企業収益の面に関しては、 

 

「注目されている半導体関連企業のみならず、ドルベースや外貨建てで収益を得る企業が為替によって恩恵を受けているのでは」 

 

 と指摘する。 

 

 ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏も、 

 

「長い目で見たら日経平均の4万円は通過点に過ぎないでしょう」 

 

 こう述べながら、 

 

「ただ短期的に見ると、3月は年度末で機関投資家たちが決算のために売りを出します。また多くの企業は4月下旬から新年度の業績予想を出しますが、日本企業は予想を結構渋めに出す傾向がある。すると、やっぱり株価は上がりづらい。そういう事情もあって、これからしばらくは慎重になる局面に入るはずなので、4万円を超すのは今年の後半だと私は予想しています」 

 

 やや慎重ではあるものの、やはり年内には4万円を突破するとの見方を示すのである。もっとも、賢明な読者諸兄ならば、ここである不安が頭を擡(もた)げよう。それは、この株式市場の活況が「バブル」なのではないか、ということだ。 

 

 

 この点、前述の永濱氏は、 

 

「最近の最高値更新は、1980年代のバブルとはまったく違います。80年代は中身がスカスカの3万8000円台でしたが、今は中身が詰まっています」 

 

 どういうことか?  

 

「株価は企業の収益に対する期待をもとに決まる。株価が収益期待に対して割高か、あるいは割安かを見るための代表的な指標に株価収益率(PER=Price Earnings Ratio)というものがあります」 

 

 一般的な上場企業の場合、適正なPERは約15倍といわれているが、 

 

「80年代後半のバブル期のPERは50倍以上。期待ばかりが膨らんでいて、企業の業績の裏付けがない、実力を伴わない株高になっていたのです。それに対して現在の日本株は約16倍ですから、実力に見合う水準の株価と言っていいでしょう。バブルがはじけた時のように、株価が暴落することは考えにくいのです」 

 

 しかし、違う立場から市況を眺める向きもある。 

 

「日経平均が連日最高値を更新し、日経新聞や証券会社はお祭りムードですが、私は現在の相場について楽観視はしていません」 

 

 とはインフィニティ合同会社チーフ・エコノミストの田代秀敏氏だ。 

 

「企業の生産能力をもとにどれくらい経済成長できるのかを示す“潜在成長率”という指標があるのですが、89年の日本の潜在成長率は4%以上でした。しかし、その数字はその後どんどん下がり、2004年以降は地を這うようにずっと1%未満が続き、アベノミクスでも上昇させられませんでした」 

 

 実際、現在の日本経済の低成長ぶりは、物価変動による影響を取り除いてその年に生産された財の価値を示したGDP(国内総生産)、いわゆる「実質GDP」の推移を見ても明らかだという。 

 

「23年10~12月期の実質GDPは、前期(7~9月期)より0.1%減りました。2四半期連続のマイナス成長であり、それはすなわち景気の後退を意味します。要するに、今の株高は実体経済を反映していないのです」 

 

 

 株は上がれども、庶民の生活が一向に上向かない理由については、経済産業研究所の竹森俊平上席研究員の話も示唆に富む。 

 

「80年代後半の日本経済がそうだったように、株価が上昇すれば消費も活発になるのが普通ですが、現状はそうではなく株式市場ばかりが盛り上がっています。その理由は80年代のバブル期とは違って、現在株価を押し上げている要因が海外からの投資だからです」 

 

 続けて、 

 

「米国のFRB(連邦準備制度理事会)がインフレを背景に金利を引き上げる一方で、日銀は金融緩和策を維持しています。そのため、日米両国の金利差が開き、円安基調になっている。結果として日本株に割安感が生まれ、海外投資家が日本株を買い、株価上昇を招いています。株高によって国内企業は資本調達がしやすくなり潤っていますが、国内家計はあまり豊かさを感じていません」 

 

 さらに言うには、 

 

「現在の株価は日米の金融政策の違いから、日本の金利が米国に比べ低いのが要因。今後、両国の金利差が縮小すれば一時、円高株安になりかねない。ただし金利差はゼロにはならないので、当面の間は、円安株高傾向は続きそうです」 

 

 竹森氏はこのように慎重な見方を示すのである。だがしかし、経済アナリストの森永卓郎氏はより“悲観的”で、 

 

「今の状況はどう見たってバブルですよ」 

 

 と言い切る。 

 

「米国では半導体メーカーのエヌヴィディアのほか、グーグルやアップルなどが実力以上の株価をつけており、“ドットコムバブル”になっている。日本は、その米国の株高に引っ張られるかたちでバブルが起きているのです。今は大恐慌前夜の1920年代末と世の中の空気がそっくり。その頃も、米国では自動車と家電製品の分野でバブルが起きて、株価は異常な高値がついていました」 

 

 もちろん、バブルは必ずいつかはじける。 

 

「暗黒の木曜日と言われている29年10月24日に米国株は大暴落。3年弱で90%も米国の株価は下落しました」 

 

 

 現在の株式市場に関する見通しは、かように百家争鳴の状態なのだが、一方で個人投資家を取り巻く状況にも今年、大きな変化があった。旧NISAから新NISAへの移行である。 

 

 経済ジャーナリストの荻原博子氏は、 

 

「NISAの最大の利点は非課税であることです。通常の証券口座であれば、100万円の投資が200万円になった場合、売却時に利益の約2割の20万円が税金として取られてしまいますが、NISAであれば税金が取られることはありません」 

 

 と、新旧NISAに共通のメリットを挙げた上で、 

 

「旧制度では“つみたてNISA”(限度額800万円)と“一般NISA”(限度額600万円)は併用できませんでしたが、新制度では“つみたて投資枠”と“成長投資枠”を併用でき、合計の生涯投資枠が1800万円まで拡大されました。また、旧制度では非課税保有期間は一般で5年、つみたてで20年でしたが、新制度では期間が撤廃されて無制限となりました」 

 

 そう新制度の利点を語る。 

 

 また、先の深野氏が注目するのは別の利点で、 

 

「非課税投資枠を上限まで使い切ってしまったとしても、投資した商品を売却すれば翌年再投資できるようになりました。1800万円の枠を使い切っても、例えば100万円分を売ればその分の枠が翌年に復活して、再び100万円を投資できるようになったのです」 

 

 一方でこんなわなも。 

 

「デメリットとしては、一般的な課税口座でできる『損益通算』や『繰越控除』ができないという点があります」(前出・荻原氏) 

 

 つまり、通常の課税口座ならば利益と損失を相殺する「損益通算」及び、株の損失を3年間繰り越してその間の利益と相殺する「繰越控除」が可能だが、それが(新)NISAでは許されないというのである。 

 

 そんな新NISAを活用したお勧めの投資法に関して、前出・永濱氏は、各人の置かれた状況により異なるので一概には言えないとしながら、 

 

「短期的に使わない現預金を持っているのであれば、毎月10万円とか一定額を“つみたて投資枠”に突っ込むのがいいと思います。商品は(全世界株式連動型で)できるだけリスク分散が可能なオールカントリーのインデックス投資がいいと思いますが、リスクが高くても、リターンが欲しいというのであれば米国株や日本株限定のインデックスもありかもしれません」 

 

 いずれにしても、 

 

「毎月一定額を積み立てれば高値づかみのリスクは回避できるし、長期保有すれば上昇トレンドで資産は増える可能性が高くなります」 

 

 そう述べ、積み立て継続の重要性を強調する。いわゆる“ほったらかし投資”である。 

 

 

 
 

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