( 145103 )  2024/03/03 00:09:54  
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 首都圏の中学受験熱はいまだに高まり続けている。中学受験塾大手・日能研の集計によると、2024年度首都圏の中学受験者数は対前年度900人減の6万5600人と9年ぶりに減少した一方で、中学受験率は22.7%で、過去最高を記録した2023年入試をさらに0.1%上回ったという。まさに今、ピークを迎えていると言って良い。 

 

 それとともに、首都圏、特に東京に住むファミリー世帯にとって、子供の教育環境という要素は、住まい選びにおいて決定的な重要性を帯びてきているのだ。 

 

 人気報道番組『ABEMA Prime』にて、2ch創設者のひろゆき氏と激論を交わしたこともある、教育投資ジャーナリストの戦記氏は「今、都心のファミリー世帯の中には、あえて優れた中学受験塾から近いところに住む選択肢を取るご家庭も多くなってきています」と語るーー。みんかぶプレミアム「タワマン・戸建て 購入術」第2回。 

 

 教育投資ジャーナリストの戦記(@SenkiWork)と申します。僕が今年2024年1月にABEMA PRIMEの生放送に出演して「ひろゆき」さんと戦ったことが契機となり、みんかぶさんから再び寄稿を依頼頂きました。 

 

 簡単に僕の自己紹介をさせて頂きます。僕は早稲田大学法学部から新卒で三井物産株式会社に入社し、社費派遣でのUC Berkeley MBA留学を経て、2018年からは経営者キャリアを歩んでいます。その傍らで、2016年に当時小1娘の教育投資ブログをアメブロにて開始し、100万PV/月に到達する知名度を獲得したので、2020年に独立(https://senkiwork.com/)。2022年にX(旧Twitter)にて「@SenkiWork」のアカウントを開始し、現在は教育投資ジャーナリストとして活動しています。 

 

 娘が経験してきた教育環境ですが、以下の通りです。未就学児時代は、共働きであることから港区の認可保育園。小学校は、日本最古の小学校を源流に持ち、校庭から東京タワーが良く見える港区立小学校。塾歴としては、小学生時代に、公文→RISU算数→四谷大塚マンスリー講座(上位1%向け)→サピックスα1→SPICAジュニア算数オリンピックファイナリスト特訓→フォトン算数クラブなどを経験。中学受験の進学先は、都内の女子中高一貫校(鉄緑会指定校)で、現在中2。中学生時代には、公文最終教材O200到達(数学と英語)→鉄緑会レギュラーコース→中2での英検準一級合格などを経験しています。 

 

 本編に入る前に、僕の情報ソースを簡単に紹介させて頂きます。僕は、教育に熱心な富裕層クライアントを多く抱える不動産会社の取締役の経験があり、不動産の世界で著名な谷尾和昭氏とも懇意にさせて頂いています。谷尾氏は、『プレジデント』(2023年8月4日号)で特集記事「マイホームを「1円でも高く売る」テクニック」が組まれたことがある他、最近は麻布台ヒルズのアマンレジデンスにも精通している方なので、情報ソースとしては申し分ありません。都心の不動産オーナーの方で売却や賃貸を考えている方は、谷尾氏を直接紹介させて頂くことが可能ですので僕(@SenkiWork)までご連絡下さい。 

 

 

 結論として、どこに住む選択肢があり得るのかを議論をする前に、「住む選択肢の制約条件」を認識することが大事だと考えます。中学受験をはじめとした都心での教育投資を考えた場合、以下が制約条件となります。 

 

①住所を選択するタイミング 

 

 良質な教育環境を求めて引越しを考える場合、どこに住むのかを意思決定するベストなタイミングは「小学校入学前」となります。もちろん、小学校入学後に引越しして住所変更をすることは可能ですが、お子さんの人間関係を一から再構築する必要がありますので、小学校6年間は同じ学校に通う、というのが一般的な判断になるかと考えます。 

 

 このタイミングを考える上で大事になるのが、小学校6年間及び中高6年間のグランドデザインをある程度描いてから、小学校入学前に不動産購入ないしは賃貸物件入居の意思決定をする必要があることです。 

 

②小学校への通学時間 

 

 極めて重要な制約条件となります。というのも、良質な教育環境をお子さんに与えたとて、学習の主戦場は家庭内学習となるからです。 

 

 小学生のうち、特に低学年時代は体力がまだありませんので、学校登校前の朝学習は夕方以後の学習に比べると、効率は2倍以上違うと考えておくと良いかと思います。自宅学習を効率よく進めたい場合は、朝の学習時間をきちんと確保できる、学校の近くに住むことが重要です。 

 

 尚、この制約条件は軽視されることが多いのが実態です。 

 

 港区あるあるなのですが、せっかく名門公立小学校の学区内に住んでいるにも関わらず、より良い教育環境を求めて小学校受験をし、いざ遠方の私立小学校に通ってみたところ、朝の通勤通学ラッシュに巻き込まれるので早朝に自宅を出発する必要があり、結果として自宅での朝の学習時間を確保できないという事例が存在します。朝に30分から60分の落ち着いた学習時間を確保することは、規則正しい生活習慣の確立にもつながりますし、学力向上の観点からも重要となります。 

 

 

③塾への通塾時間 

 

 いくら自宅が小学校から近くても、通いたい塾から遠い場合は、明確なハンディキャップとなります。 

 

 特に考慮が必要なのは、低学年女子のお子さんをお持ちのご家庭です。サピックスの小1クラスの終了時刻は17:30なのですが、冬の時間帯は外は真っ暗になりますので、安全性を考えて親がお迎えに行くご家庭が多いと思います。つまり、自宅から塾への距離は、お子さんの負担のみならず、親の送り迎えの負担にも繋がります。 

 

 また、サピックス小6ともなると塾の終了時間は21:00となります(そして、この後に質問などをすると更に伸びる)。サピックスはお弁当の持ち込みはありませんので、帰宅してから夕食を食べることになりますが、通塾時間の長さは「夕食を食べる時間の遅れ」に直結します。小6のお子さんが、残業サラリーマンと同じような時間帯の食生活パターンになることを考えると、やはり塾から徒歩数分のところに住むことのメリットが分かるかと思います。 

 

 尚、僕が過去に取材させて頂いた事例なのですが、孟母三遷を実践されているご家庭も存在します。都心にお住まいで、お子さんはお家から比較的近いサピックスのとある校舎に通われていました。ところがそのご家庭のお子さんは、とても優秀でサピックスでの算数の授業が物足りなく感じるようになったそうです。そこで、よりレベルの高い算数の授業を提供することに定評のある他の中学受験塾に通塾先を変更されたのです。最終的には、通塾時間の短縮だけを目的に、他のエリアにあったその塾の近くに引っ越しをされていました。ここまで努力するご家庭が存在するのが中学受験のハイエンドの世界です。 

 

④習い事サービスの存在 

 

 低学年時代には、中学受験関係の塾だけではなく、いろいろな習い事をするご家庭が多いかと思います。代表的なのは、ピアノ、水泳、バレエ、体操教室、英会話などでしょうか。それらサービスが自宅から遠い場合、やはり送迎で親の負担が増すことになります。 

 

 習い事サービスは、対象年齢層の人口密度に応じて教室が置かれることが多いので、人口が少ない港区中心部などよりは、自由が丘の方が圧倒的に選択肢が豊富です。 

 

⑤家事代行サービスなどの存在 

 

 住まい選びの観点から見過ごされがちな要素なのですが、共働きで中学受験を乗り切る場合、配偶者の長期海外出張や病気など、想定していない場面に直面することあがります。そういった非常時に、近くに実家があり親族の助けを期待できるならば良いのですが、そうではない場合は、お金は二の次として家事代行などのサービスを使わねば乗り切れない場面に遭遇したりします。よって、家事代行などのサービスへのアクセスがしやすい地域の方が、有事の際には役に立つと考えます。 

 

 家事代行サービスは、港区など平均所得が高い地域や大使館職員が多い地域には、「高単価だが高品質」な業者が存在します。例えば、英語を話すことができて調理や清掃をできる方などを探す場合には、港区などが便利です。とはいえ、そこまでハイエンドなサービスを求めない場合は、首都圏ならば選択肢に困ることはないと考えます。 

 

⑥中学受験終了後の進学先立地 

 

 これは中学受験の結果次第ですので、上記①から⑤に劣後するのですが、やはり引越しをせずに進学先の中学校に通えた方が生活としては楽だと考えます。特に都心部に住んだものの、埼玉、千葉、神奈川方面の学校を選択した場合、長い通学時間を許容するか、引越しをするかの判断が問われることになります。 

 

 僕が観察してきた限りでは、最難関系の学校を選択するご家庭は、「通学時間を1分でも減らして学習時間を確保するため」に、通学時間が30分程度であったりしても、進学先の徒歩圏内に引越しをするご家庭も普通に存在します。これは、6年後の高3時の大学受験において、睡眠時間を確保することを考えての先行投資なのだろうと推測します。 

 

戦記 

 

 

 
 

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