( 145388 )  2024/03/03 23:04:01  
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陸自訓練場の候補地付近には「NO!」と書かれたのぼりが立っていた=2月29日、沖縄県うるま市 

 

沖縄県うるま市のゴルフ場跡地に陸上自衛隊の訓練場を新設する防衛省の計画を巡り、県議会の与野党会派が保革を超え「白紙撤回」を求める異例の事態となっている。陸自第15旅団の師団格上げに伴い訓練場を整備する計画は見直しを迫られることになりそうだ。台湾有事への懸念など日本周辺の安全保障環境が厳しさを増す中、防衛力の「南西シフト」に支障がないよう対策を進めることが求められる。 

 

「陸自の訓練場に反対なのではない。今の整備計画はいったん白紙に戻すべきだと言っている」 

 

玉城デニー知事や知事を支持する県政与党の共産党などに続き、自民党沖縄県連も2月27日の県議会で計画の白紙撤回を表明。県連幹部はその真意を明かした。近く政府に撤回を要請する方針という。 

 

訓練場の整備予定地は住宅街にほど近く、住民の男性(74)は「事前に何の説明もなかった。訓練場は必要かもしれないが、ここではない」と語る。 

 

予定地は教育施設の沖縄県立石川青少年の家に隣接しており、施設の関係者は「子供たちが眠る宿泊棟のそばに訓練場をつくるのは、保革関係なく、誰が見てもおかしな計画だ」と話す。 

 

今月1日には、これまで賛否を示してこなかった地元・うるま市の中村正人市長も計画に反対する意思を表明。防衛省沖縄防衛局を訪れ、計画の白紙撤回を要請した。 

 

地元では「説明不足」といった批判があるが、防衛省関係者は「正式ではないが、地元首長らには事前に内々に伝えていた」と反論する。 

 

ただ、地元政界が足並みをそらえたインパクトは大きい。政権与党の会派まで「白紙撤回」に回った背景には、6月の県議選や次期衆院選、来年のうるま市長選を控え、争点化を避けたいとの思惑もちらつく。公明党沖縄県本部の関係者は「訓練場を政争の具にしてほしくない」と本音を吐露した。 

 

訓練場は令和8年度に予定する陸自第15旅団の師団化に伴う部隊増強に対応するために新設され、南西防衛強化の重要な基盤となる。木原稔防衛相は「計画を白紙にする考えはない」としているが、「自民党(沖縄)県連から具体的な要請があれば、検討作業の考慮に入れることはあり得る」と含みを持たせた。 

 

台湾有事の際には尖閣諸島(沖縄県石垣市)を含む先島諸島を攻撃される恐れもあり、防衛省は沖縄などに自衛隊を重点配備する「南西シフト」を進めてきた。 

 

自民党県連も防衛力を抜本的に強化する政府の方針は容認しており、「南西防衛に影響する話ではない」(県連幹部)との立場だ。防衛省関係者も「選挙での争点化を避けたいという狙いは理解できる」と冷静に受け止めているが、日本の「守り」に影響がないよう、ゴルフ場跡地の利用の在り方や代替となる訓練場の確保などあらゆる検討を進めておく必要がある。(大竹直樹) 

 

 

 
 

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