( 145433 ) 2024/03/03 23:51:51 0 00 帝国ホテルでは、宿泊や食事に使える「ホテル利用券」を株主優待品として提供している=同ホテル提供
東証の日経平均株価が史上最高値を付けて投資への関心が高まる中、「株主優待」制度にも再び注目が集まっている。企業が株主に対し、自社製品を贈ったり割引サービスを提供したりする制度だが、近年は配当金増などによる株主還元が重視されて廃止の流れが進んでいた。しかし、小売りやホテルなどで投資家を呼び込む優待品制度を新たに始める企業が増えてきている。
【写真特集】魅力的な株主優待券、どこから来るの?
野村インベスター・リレーションズ(IR)によると2023年に制度を新設・拡充、再開したのは176社で前年(149社)より27社増えた。
優待制度が復活しつつある背景には、個人投資家の増加が見込まれていることがある。1月には株式などへの投資で得られた利益が非課税となる少額投資非課税制度(NISA)が拡充され、新たな制度を通じて投資を始めた個人も増えている。企業は個別株にも興味を持ってもらうため、優待品を「呼び水」としたい考えだ。
雑貨店「無印良品」を展開する良品計画では、100株以上持つ株主に「無印良品」での買い物が5%割引になる優待カードを年2回贈る制度を23年から始めた。良品計画は「ファン株主を増やしていきたい思いもあることから、優待の内容を『自社商品の割引』に設定した」としている。
老舗の高級ホテル「帝国ホテル」も23年、100株以上を有する株主に株数や保有期間に応じたお得なホテル利用券を贈る制度を開始した。「訪れる場所としてのホテルだけではなく『投資対象』としても発信していきたいと考え、まずは個人投資家へのアプローチを強化することにした」(広報担当者)としている。
株主優待は、優待品を受け取りづらい海外の投資家から「株主平等原則に反する」という声が高まり、配当金や自社株買いなどの還元が求められるなどして廃止する企業が増えている。
この流れは変わらず続いている一方、新型コロナウイルス禍からの業績回復を機に、特に顧客との距離が近い小売りや飲食、サービス業で優待制度を再開したり新設したりする企業の動きが広がっているようだ。
また、野村IRは株主優待の増加傾向について「近年、企業の政策保有株式の売却が進んでいるが、その受け皿として個人投資家を取り込もうとしている。優待を目当てとした長期保有株主が増えると、株価の下支え効果が期待できる」と分析している。【加藤美穂子】
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