( 145443 )  2024/03/04 00:01:27  
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 岸田文雄政権支持率が大暴落している。毎日新聞の2月の世論調査で14%という数字を叩き出したのを皮切りに各メディアの調査でも過去最低を更新し続けている。今後はどうなるのか。国際政治アナリストで早稲田大学招待研究員の渡瀬裕哉氏が3回に分けて解説する。第3回は政治倫理審査会についてだ。渡瀬氏は「茶番そして不毛だ」と切り捨てるーー。 

 

 岸田首相が政治倫理審査会に出席して裏金問題について説明した。その岸田首相の解説内容に目新しいものはなく極めて不毛であった。しかし、それに対する野党各党のコメントも中身が無いものであった。一体この不毛な国会劇場はいつまで続くのだろうか。 

 

 もちろん個々の国会議員の脱税の疑いがある行為については、厳しく処断されることは当然だ。だが、それ以上の再発防止などは単なる掛け声倒れに終わるだけであり、まして政党が所属議員らの政治資金の扱いに責任を取ることなどできない。 

 

 なぜなら、既存政党には派閥や所属議員の政治資金の会計処理を責任ある形で行うことは構造的に無理だからだ。この事実は追及する側・逃げる側の双方が理解している茶番である。もちろん、マスメディアも分かった上で視聴率稼ぎのために騒ぎを助長している。 

 

 政治というと特殊な世界のように感じるが、一般社会に存在する組織と何ら変わらないものだ。 

 

 日本の主要政党の構造は商店街連合会のような構造となっている。商店街連合会(政党)は、各商店街(派閥)の合議で運営されており、その商店街は個店(政治家の個人後援会)によって形作られている。 

 

 当たり前だが、各個店(個人後援会)は独立採算で経営されている。売り上げをどのように得ようが、借り入れを起こそうが、如何わしい運営をしようが、それを監督できる存在はない。関連会社(国会議員関連団体)を作って、そちらに資金を流して不透明性に流すこともできる。 

 

 更には、商店街連合会(政党)所属の個店の中には代々続く世襲の老舗店舗も存在しており、そこには名前の知られた番頭もいる。それらは個々の商店街(派閥)を率いている。それらの老舗店舗が率いる商店街の運営に単なる互助会である同連合会側からその運営方法に強制力を発揮することなどできるはずがない。せいぜい行政から取ってきた補助金(政党交付金)の分配や人事でコントロールを試みるだけだ。 

 

 

 今回の派閥によるパーティー券キックバック問題は、商店街(派閥)のお祭りに対し、商店街に加盟している個店(政治家の個人後援会)に費用負担が生じた際に起きた。各個店の本音はそんな面倒事は真っ平ごめんだ。そのため、商店街の幹部は一計を案じて、多くの寄付金を集めた個店には運営費の一部を領収書不要でキックバックするようにした。これが裏金である。 

 

 このように、政党も派閥も単なる互助会または政党交付金を分け合うだけの組織に過ぎない。 

 

 したがって、政党全体でマトモなガバナンスを発揮することができるはずがない。岸田首相が政治倫理審査会で説明しようが、自民党幹部が同審査会でつるし上げを食らおうが、そんなことで改善するような問題ではない。最大限、企業会計と同じレベルで会計処理を行うと約束することが限界で、実際にはその程度のことすらできないだろう。なぜなら、既存の政党の組織構造では改善のしようがないからだ。そして、一部の政党を除いて、自民党に限らず大半の政党が同じ構造を有している。そんな政党の人々で議論したところで本当に意味があるのか。 

 

渡瀬 裕哉 

 

 

 
 

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