( 146243 ) 2024/03/06 13:49:18 0 00 電動キックボード(画像:写真AC)
最近、マイクロモビリティは街中でよく見かけるようになった。しかし、本当に必要なのだろうか。
【画像】えっ…! これが60年前の「海老名SA」です(計16枚)
というのも、インターネット上では次のような意見をよく目にするからだ。
「必要ない」 「歩くか自転車でいい」 「どこを走ればいいのかわからない」 「移動手段が増えれば危険も増える」 「利用者のマナーが悪い」
否定的な内容が目立つが、マイクロモビリティの存在意義は大きく、そのニーズは高まっている。本稿ではその理由と現状を検証する。
超小型モビリティの区分(要約)。国土交通省「自動車:超小型モビリティについて」より(画像:夙川わたる)
国土交通省では、マイクロモビリティを「超小型モビリティ」と呼び、大きさや出力によって三つのカテゴリーを設けている(図参照)。
・電動バイク ・マイクロカー(ミニカー)
は、上記のカテゴリーに含まれる。道路交通法では一般的に「電動モビリティ」と呼ばれ、一定の基準を満たしたものは2023年7月から「特定小型原動機付自転車」として区別され、運転免許が不要になるなど新たなルールが適用されている。
「特定小型原動機付自転車」の定義(要約)は次のとおりだ(警視庁「特定小型原動機付自転車(電動キックボード等)に関する交通ルール等について)。
・長さ190cm以下、幅60cm以下 ・電動機の定格出力が0.60kW以下 ・時速20km/hを超える速度が出せない ・走行中に最高速度の設定を変更できない ・オートマ(AT)である ・最高速度表示灯が備えられている ・その他
電動キックボードは、特定小型原動機付自転車に該当する。電動アシスト自転車は上記には該当しないが、マイクロモビリティのひとつである。
電動アシスト自転車(画像:写真AC)
マイクロモビリティの必要性は、法整備が進められていることからも明らかだ。世界的に見ても、特に過密地域では移動手段として期待される社会的背景がある。ここでは、そのメリットについて見ていこう。
●ラストワンマイルを解決できる ラストワンマイルとは、最寄り駅などから目的地までの移動を指す。物流でいえば、目的地のサービス拠点から配達先までの配送を指す。この部分の移動手段として「歩けばいい」「自転車に乗ればいい」という人がいるが、それは自動車やバイク以外のモビリティがなかったからだろう。マイクロモビリティは、最寄り駅などから自宅や職場までの移動に便利だ。他の交通手段と組み合わせる例もあり、MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス。自動車、自転車、公共交通機関、シェアリングサービスなど、さまざまな交通手段を単一のプラットホームやアプリケーションを通じて統合し、利用者が効率的かつ容易に移動を計画・実行できるようにするサービス)ビジネスを始める企業もある。
●渋滞緩和に貢献できる マイクロモビリティは省スペースで大量走行が可能なため、交通渋滞の緩和に貢献できる。自動車よりも小回りが利き、機動性に優れている。電動キックボードは持ち運びが可能で、階段があってもその先に行ける。
●環境への影響が少ない 国土交通省は環境面でのメリットを強調している。脱炭素化、カーボンニュートラルに貢献するという点だ。ガソリン車よりも環境負荷が少ない。EVよりも消費電力が少ない。しかし、EVを含む電動モビリティは、バッテリー製造段階でのCO2排出など環境負荷が大きいというデメリットがある。
●経済的な移動手段である マイクロモビリティの保有コストは低い。自動車タイプの車両を除けば、駐輪・駐車にかかるコストも低い。ランニングコストは主にバッテリーを充電するための電気代だが、ガソリンに比べ安価で出力も低いため、コストメリットがある。シェアリングエコノミーでレンタルできる車両もあり、一時的な利用の選択肢にもなる。
●地域活性化につながる 一般消費者には気づきにくいかもしれないが、地域活性化のニーズもある。マイクロモビリティは、電車やバス、車では行きにくい場所にも簡単にアクセスできる。また、徒歩や自転車よりも短時間で簡単にアクセスできる。人々が町の隅々までアクセスできるようになり、機動性が高まれば、どこにでも人がいる状況が生まれる。これは経済や物流にもよい影響を与えるだろう。
マイクロモビリティの世界市場規模は15兆円に達し、今後も成長が見込まれている。日本では安全性の問題などから普及が遅れているが、安全性の確保や法改正などを背景に、徐々に浸透していくだろう。
国土交通省は、自動車の利用距離と乗車人数に関する調査結果で、ひとり~ふたり乗りの短距離利用が多いことを指摘している。こうした用途にマイクロモビリティを導入することで、CO2排出量や大気汚染の削減効果があると、同省は考えている。
セグウェイ(画像:写真AC)
今後、最も期待されるマイクロモビリティはどのカテゴリーだろうか。その普及には、次のような要因が影響すると考えられる。
・安全性 ・地域と一体となったビジネスモデルの形成 ・都市部と郊外・農村部で異なる需要 ・個人所有以外のシェアリングエコノミー
これを踏まえて、筆者は「手軽」「身近」「楽しい」の順に期待できるマイクロモビリティの代表的なものを紹介する。
●電動キックボード 電動キックボードは、足で地面を蹴って走るキックボードの電動版である。持ち運びに便利な折りたたみ式のものもある。フランスではNVEIと呼ばれる「新種の個人用電動モビリティ」に分類され、コロナ禍以前からパリなどの都市部で需要が高まっていた。日本では2023年の法改正で原付免許が不要となり、かつ車道を走ることができるようになった。また、歩道や路側帯の通行も条件付きで認められている。その話題性と、誰もが入手でき、使えるという点で、普及が期待されている。
●マイクロカー・小型自動運転車 マイクロカーはミニカーとも呼ばれ、ひとり乗りの自動車である。排気量的には原付と同じだが、自動車なので運転には普通免許が必要だ。小型自動運転車は「超小型モビリティ」に属する自動運転EVである。ホンダがジャパンモビリティショー2023に出展したCI-MEVがこれに該当する。これらは、国土交通省も普及に力を入れている。マイクロカーは、物流、配送、介護、観光、カーシェアリングなど、さまざまな用途に活用され、自動車のひとつのカテゴリーになりつつある。
●セグウェイ セグウェイは、米国のセグウェイが開発した電動二輪車で、左右ふたつの車輪の間に立って乗車する。中央のハンドルを握ることで姿勢を保ち、体重移動で乗り物をコントロールするという斬新なシステムだ。現在、セグウェイは中国企業に買収され、生産を中止してキックボードに移行しているが、日本の自然公園などではセグウェイツアーがあり、人気を集めている。このカテゴリーの将来は不透明だが、観光やレジャーに使えば楽しいし、電動キックボードが公道を走れるようになった今、復活の可能性がないとは断言できない。筆者は、このカテゴリーにささやかな期待を寄せている。
●電動アシスト自転車 電動アシスト自転車はすでに広く普及している。筆者の近所でもよく見かけるし、自転車に乗っているとよくすれ違う。今後も電動アシストが「子どもを乗せて走る」という需要を担っていくだろう。
●バイク・スクーターシェアリング レンタルバイクは以前から普及しており、オートバイメーカーが運営しているサービスもある。こうした従来型のサービスは、特にバイク好きの間では、今後も需要が続くだろう。トレンドは、EVバイク・スクーターのシェアリングサービスである。都市部に多く、スマートフォンで登録・検索・利用申し込みができる。EVはシンプルなデザイン、小型、メットインタイプなど、誰でも簡単に使えるのが特徴だ。EVと電動キックボードのシェアリング市場は似ている。どちらも今後、気軽に使われるようになるだろう。
●電動スクーター・バイク オートバイメーカーが販売する電動スクーター・バイクは、基本的に運転免許が必要である。しかし、免許不要で運転できる特定小型原動機付自転車に該当する車両も市場に出回っている。後者はEVシェアリングサービスなどで利用されており、その手軽さから都市部で普及しそうだ。前者のメーカー系電動スクーターは、既存製品に代わって徐々に普及していくことが予想される。
環境のよい都会イメージ(画像:写真AC)
マイクロモビリティは、環境負荷の低減や地域経済の活性化のために必要な移動手段である。
今後、普及が期待されるモビリティとしては、手軽さやエンターテインメント性の高さから電動キックボード、新たな移動手段としてマイクロカーの需要が高まるのではないだろうか。
マイクロモビリティによる地域活性化が、新たなビジネスやライフスタイルを生み出すことを期待したい。
夙川わたる(フリーライター)
|
![]() |