( 147026 )  2024/03/08 14:12:17  
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日本の人口減少による社会の変化について、組織において働かない人の存在が問題視されている。

テレワークの普及で、仕事をせず給料をもらっている“妖精さん”や仕事を失っている“社内失業者”が増えており、企業にとっても組織全体の士気や若手社員の意欲を損ねる要因となっている。

少子高齢化時代において、これらの"無駄な人材"の存在が問題視されており、組織にとって適切な人材配置やスキルマッチングが求められている。

(要約)

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〔PHOTO〕iStock 

 

 人口減少日本で何が起こるのか――。意外なことに、多くの人がこの問題について、本当の意味で理解していない。そして、どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。 

 

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 100万部突破の『未来の年表』シリーズの『未来のドリル』は、コロナ禍が加速させた日本の少子化の実態をありありと描き出している。この国の「社会の老化」はこんなにも進んでいた……。 

 

 ※本記事は『未来のドリル』から抜粋・編集したものです。また、本書は2021年に上梓された本であり、示されているデータは当時のものです。 

 

 必然的にあぶり出されるのが“組織にぶらさがってきた人”の存在だ。 

 

 「262の法則」という言葉がある。どの集団においても、全体の2割が会社の期待以上に働き、6割は期待通りに働き、残りの2割は期待以下の働きしかしなくなる傾向が表れることを指す。 

 

 どこの職場にも、出世コースから外れたり、希望の部署に配属されなかったりしてモチベーションが下がる人はいる。また、仕事の実績はイマイチながら、職場の雰囲気を明るくするムードメーカーとして重宝されるタイプの人も珍しくない。 

 

 だが、テレワークが普及すると、こうした人たちは通用しなくなる。「仕事をしない会社員」などはなおさらだ。“妖精さん”や“社内失業者”は、ますます居場所を失う。 

 

 “妖精さん”とは、定年間近で目標を見失い、「働き」に見合わない高い給料を得ている年配社員のことだ。始業時間には会社に在席しているのだけれども、いつの間にか席を離れて気が付くと外出していなくなってしまう。そんなフワフワした存在感の無さを揶揄して名付けられた。一方、“社内失業者”は文字通り、企業に雇用されているにもかかわらず業務を失っている状況の人のことである。 

 

 社会の変化についていけずスキル不足に陥るということもあるが、企業の新業務に必要な能力と社員が持つスキルとが一致せず、異動先がなくなることでも起こる。 

 

 2008年のリーマンショック以降に深刻化し、ベテラン社員だけでなく、適切な社員教育を受けられずにいる若手社員にまで広がっている。 

 

 求人情報サービス大手「エン・ジャパン」が2020年5月に公表した実態調査結果では、“社内失業者”がいる企業は予備軍を含めて29%に上った。サービス関連や商社が高く、従業員規模では「300~999名」(45%)と「1000名以上」(47%)といった大きな企業に顕著であった。少し古いデータとなるが、2011年の内閣府調査によれば、全国の労働者の8.5%にあたる約465万人が社内失業者に該当するという。 

 

 コロナ不況が“社内失業者”を増やした可能性もある。内閣府の「日本経済2020-2021」(2021年)によれば、企業の雇用者数が実際の生産活動に最適である水準を上回る「余剰人員」は、緊急事態宣言が初めて発出された2020年4~6月期は646万人に上ったのだ。 

 

 その後の経済活動の再開とともに減少はしたものの、10~12月期は238万人に上っている。非製造業が158万人で、このうち「飲食・宿泊サービス業など」が90万人だ。 

 

 コロナ禍で突如として業務量が激減したという特殊要因のもとの数字であり、経済活動が制約されて、企業の「余剰感」が強まっている事情がある。むしろ多くの企業が、経済活動の本格再開をにらんで何とか雇用を維持しているという側面もあるが、コロナ不況の長期化で支店や店舗の統廃合など事業そのものを縮小する企業も増えてきている。 

 

 こうした企業では“社内失業者”が増えやすい。加えて、コロナ後にデジタル化が進んで「ミドルスキル」の仕事が減り始めると、さらに“社内失業者”が多くなる。 

 

 しかしながら、テレワークが“妖精さん”や“社内失業者”などを浮き彫りにすることは悪いことではない。そもそも、少子高齢化で働き手世代が減りゆく時代に、1割近くもの「仕事をしない会社員」がいること自体が異常なのである。“人材の無駄遣い”としか言いようがない。 

 

 年功序列や終身雇用といった日本企業の労働慣行に守られ、「働き」の割に高い給与をもらっている社員の存在が、組織全体の士気を下げ、若手社員の意欲を削ぐ結果ともなっている。 

 

河合 雅司(作家・ジャーナリスト) 

 

 

 
 

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