( 147371 )  2024/03/09 14:03:32  
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首都圏のJR列車の本数が減少しており、山手線を中心とする都心部の路線でも混雑が目立つ状況が続いている。

コロナ禍以降、利用者数は戻らないものの、本数の減少により混雑が続いており、乗客にゆとりを持たせることが求められていると指摘されている。

JR東日本は不動産開発に注力しているが、鉄道事業の悪化が企業イメージにも悪影響を与え、顧客満足度の低下に繋がる可能性もあるとされている。

(要約)

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山手線(画像:写真AC) 

 

 首都圏で電車を利用する人なら、JRの本数が減っていることに気づいているかもしれない。 

 

【画像】えっ…! これがJR東日本の「年収」です(計8枚) 

 

 コロナ禍以前は3~4分に1本だったが、今では 

 

「5~6分に1本」 

 

になっていると感じている人も多いだろう。 

 

 実際、JR東日本はコロナ禍以来、列車間隔を広げている。同社の論理は、コロナ禍以来乗客数が戻っていないから本数を減らしているというものだ。 

 

 しかし、乗客の立場からすれば、本数を減らしたとはいえ、それなりに利用客はいるわけで、もはや平常に戻りつつあるように見えるのだ。 

 

山手線(画像:写真AC) 

 

 都心部の路線を利用していると、平日の昼間でも意外と人が乗っていることに気づく。特に山手線の池袋~新宿~渋谷間だ。山手線のなかでも、この区間の混雑が目立つ。 

 

 山手線は、池袋~大崎間で湘南新宿ラインや埼京線(ただしこれらは同一の線路を走ると、品川~田端間で京浜東北線や上野東京ライン(それぞれは別々の線路を使用する)と並行して走っている。これらの区間はもともと利用者が多い。 

 

 品川~田端間は、利用する路線によってある程度利用者がわかれている。区間内でも山手線と京浜東北線に分散する。 

 

 しかし池袋~大崎間は、 

 

・湘南新宿ラインと埼京線を走る山手貨物線の速達性が好まれるケース 

・山手線の停車駅の多さの利便性が好まれるケース 

 

のそれぞれがあり、さらに、区間内の利用は山手線に集中している。こうした理由から、山手線は東京の西側で混雑が目立つ傾向にある。 

 

 コロナ禍以降、利用者が少ないため運行本数は減っているが、見かけ上の混雑は変わっていない。しかも、人がそれなりに動くようになっているためだろうか、かえって混雑しているような印象を利用者に与えかねない。 

 

 昼間に利用客の少ない郊外の各駅停車の話ではなく、JR東日本の“看板路線”である山手線がこのような状況にあるのだ。現在、山手線は 

 

・平日昼間:5分間隔 

・土日祝日:4分間隔 

 

で運行している。日本最大の都市圏の中心を走る山手線にしては、本数が少ないとさえいえる。以前は3分に1本程度ではなかったのか。ラッシュ時にはダイヤをもっとみっちり詰めていなかったか。 

 

 コロナ禍以降、人と人との距離を保ち、スペースを空けることが求められるようになった。しかも、感染症そのものが終息したわけではない。乗客にゆとりを持たせることではないのか。 

 

 コロナ禍以降、人々は互いに距離を置くようになり、より多くのスペースを空けることが求められるようになった。しかも、感染そのものは終わっていない。乗客に余裕のある空間を与える発想はないのだろうか。 

 

 

山手線(画像:写真AC) 

 

 現在、JR東日本は都心部の不動産開発に熱心だ。高輪ゲートウェイ駅周辺のように、総力を挙げて開発するケースもあれば、東急グループや渋谷区の渋谷駅周辺再開発計画にあわせて間接的に関わるケースもある。 

 

 東京駅・新宿駅周辺など、再開発が進む地域も多く、それらを結ぶ山手線(とその内側の鉄道)の利便性を高め、人々が移動しやすいようにする必要がある。現在、さまざまな事業者が都心部の開発に力を入れており、ポストコロナに向けて多くの人を呼び込もうとしている。 

 

 JR東日本は、その主体となって動いている。鉄道会社といえども、不動産事業には非常に熱心だ。そんなJR東日本こそ、都心部でさらなる価値を生み出す努力をしなければならない。 

 

 しかし、山手線はコロナ禍前より本数が減っている。鉄道の利便性は悪化し、混雑が目立っている。そして、JR東日本の企業イメージも悪化するという負のスパイラルに陥っている。 

 

 山手線の利用者減少を象徴するかのような「平日昼間5分間隔ダイヤ」は、都市の衰退を端的に表しているとさえいえる。そんな都市で、企業は経済活動を行おうとするだろうか。 

 

 列車ダイヤは、鉄道会社の鉄道事業が利用者に示す「商品」であり、利用者に提供するサービスを示すものである。もちろん、本数が多くて使いやすければ優れたサービスであり、本数が少なくて不便であれば“それなり”のサービスである。 

 

 JR東日本が不動産事業の価値を高めようとしている山手線沿線では、鉄道事業の価値は以前に比べて低下している。同社は鉄道事業よりもIT・Suica事業や不動産・都市開発事業に力を入れているが、これは鉄道事業とのシナジーがあるからこそ可能なのだ。 

 

山手線(画像:写真AC) 

 

 確かに1~2分程度かもしれないが、以前と同じように混雑していること、電車の本数が以前より少なくなっていることは、マイナスイメージにつながる。 

 

 特に、池袋~新宿~渋谷間の混雑が利用者に与える影響が懸念される。 

 

「混雑率100%」 

 

が常態化することは、かなり窮屈であり、顧客満足度を低下させるだろう。 

 

 近い将来、山手線周辺が大規模開発され、利用者が見込める状況で、「平日昼間5分間隔ダイヤ」はイメージや企業価値を損ない、顧客満足度を低下させる可能性すらある。 

 

 これは鉄道事業だけでなく、不動産事業や都市開発事業にもいえるだろう。 

 

小林拓矢(フリーライター) 

 

 

 
 

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