( 147518 )  2024/03/09 22:48:48  
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衆院本会議で小野寺五典予算委員長解任決議案の趣旨弁明を行うため、資料を準備する立憲民主党の山井和則氏。「フィリバスター」を展開し演説は2時間54分に及んだ =1日午後、国会 

 

【ニュース裏表 平井文夫】 

 

先週金曜(1日)に国会で行われた衆院政治倫理審査会をテレビで見ていたのだが、新しい話はもちろん出ず、あまりにもつまらなくて居眠りしていたら、「ドジャース、大谷翔平結婚」というニュース速報が出て、飛び起きた。 

 

【アンケート結果】岸田首相にいつまで続けてほしいか 

 

民放はともかく、NHKの夜9時のニュースのトップが大谷で、政倫審は2番目だった。国民の関心というよりも、明らかにニュースバリューとして、大谷の方が上、ということだったのだろう。 

 

政倫審をつまらなくした「犯人」は、サプライズ参加した岸田文雄首相だ。公開に消極的とされていた安倍派幹部だけでなく、野党も驚いた。予算委員会や記者会見での質疑の繰り返しになって、緊張感が全くなくなった。 

 

問題はこの後で、2024年度予算案の年度内成立、自然成立を目指す自民党は、衆院での採決を予算委員長の職権で決め、反発した野党第1党の立憲民主党は、委員長の解任決議案と財務相の不信任決議案を出した。 

 

ここまでは良かったのだが、立憲民主党の山井和則衆院議員が行った「フィリバスター」がマズかった。山井氏は大きな紙袋を持って現れ、そこから資料を出し、歴代最長の2時間54分間、演説を続けるという「議事妨害」を行った。 

 

この映像を見た瞬間、「これはダメだ」と思った。「議事妨害」には国民からの批判が強いのに、山井氏が何だか楽しそうに、笑顔でやっているように見えたのだ。 

 

山井演説への批判がすごかったからか、与党側との交渉が成立したからか知らないが、立憲民主党は妨害戦術をあっさりやめてしまった。 

 

国民民主党の衆院議員だった菅野(旧姓・山尾)志桜里氏はX(旧ツイッター)で、「勝ち戦でオウンゴールするのはなぜ?」とつぶやいた。 

 

翌朝の読売新聞も「年度内成立。与党は安堵。立憲腰砕け。徹底抗戦貫けず」と立憲民主党を批判した。これに対し、朝日新聞は「首相無援。政倫審や土曜国会…政権機能不全」と、逆の見出しなのが面白かった。 

 

悪いのは政治資金規正法違反をやった自民党なのだから、読売新聞の「立憲腰砕け」はかわいそうな気もする。朝日新聞の「政権機能不全」も違うのではないか。 

 

 

岸田派解散に続き、今回の政倫審出席も、敵も味方も驚かせて事態打開を図る、最近首相が得意な「岸田サプライズ」だ。 

 

採決強行は先週の早い段階で筆者の元に情報は入っていた。株をさらに上げ、実質賃金をプラスにし、減税し、「デフレ終了」を宣言して衆院を解散したい岸田首相にとって、予算の年度内成立は絶対に譲れない一線だった。 

 

内閣支持率は相変わらず低い。政権はかろうじて維持できるが、とても解散できる数字ではない。 

 

だが、岸田首相は強い。金曜日のつまらない政倫審、深夜国会の議事妨害、そして、異例の土曜国会での予算案衆院通過という一連の流れを見ていて、岸田首相の強さを感じたのだ。 (フジテレビ上席解説委員 平井文夫) 

 

 

 
 

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