( 148724 )  2024/03/13 14:02:40  
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 史上最高値を更新し、初めて4万円台に達した日経平均株価だが、間もなく大幅な調整時期を迎えるだろう。 

 

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 前編「ドル円148円割れで「株価下落」が始まった…! 日銀・植田総裁が引き金を引く「日本株3万円割れ」に警戒せよ! 【日本株暴落の序曲】」で紹介したとおり、日経平均は今後、1万円ほど下落して3万円付近までの調整する可能性があるというのが筆者の見方である。 

 

 1万円も下落するという予想は断言することは決してできないのだが、「山高ければ谷深し」というのがマーケットの格言である。昨今の株高を考えれば下落も大きなものになるだろうことを踏まえておくべきだ。 

 

 その谷の深さがどの程度のものになるのかの見解はそれぞれだが、マーケット関係者の見方は「早晩、調整し下落する」という意見が大勢である。 

 

 そしてそのトリガーとなる可能性が高いのが、日本銀行の政策決定会合だ。 

 

 マーケットの予想では、日銀は4月の決定会合で「ゼロ金利政策の解除」を行うという意見が大勢を占めている。しかし、来週3月18日、19日に開かれる決定会合でその見通しが明らかとなれば、その時が株価下落を決定づける可能性は高い。 

 

 3月19日の決定会合後に行われる植田総裁の記者会見で、彼はどんな発言をするのか。マーケットの注目が集まっている。 

 

 では、3月18・19日の決定会合で何が起こるのか。筆者の見方を示しておきたい。 

 

 筆者は日銀がゼロ金利政策の解除、金融政策正常化へ踏み出すのは、4月の金融政策決定会合の可能性が高いと考えている。これはマーケットの見方と同じだ。 

 

 その理由は、1月の金融政策決定会合のあとの記者会見で植田総裁は「必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる」と述べている。つまり、マーケットには拙速なゼロ金利政策の解除をしないという見方が広がり、それが2月からここまで日経平均株価の上昇を支えてきた。 

 

 「追加的な金融緩和措置」を口にしておきながら、背中から切りつけるように3月にゼロ金利解除の政策変更は行わないだろう。 

 

 

3月19日の植田総裁の発言に注目が集まる…Photo/gettyimages 

 

 では、3月の金融政策決定会合では、何が行われる可能性が高いのか。それは、4月のゼロ金利政策の解除に向けた「地ならし」である。 

 

 日銀は、物価の実績値が安定的に2%となる安定化目標を達成するために緩和政策をつづけてきた。政策変更のためには、これを達成したことを明確に示す必要がある。 

 

 そのため、4月の金融政策決定会合と同時に発表される「展望レポート」の物価上昇率の見通しの変更が行われるだろう。展望レポートに物価安定目標の達成を明文化したうえで、金融政策の変更を行うというのが順当なやり方だ。 

 

 では、3月18・19日の政策決定会合で行われる「地ならし」とはどのようなものか。 

 

 先述したように1月の展望レポートでは、「先行きの不確実性はなお高いものの、物価安定の目標が実現する確度は、引き続き、少しずつ高まっている」という一文が加わった。この「引き続き、少しずつ高まっている」という表現が要注意だ。 

 

 植田総裁が決定会合後の記者会見などで、このニュアンスを変更したらマーケットの注目を集めることになるだろう。1月の展望レポートから一歩踏み込んだ発言を3月にすれば、4月のゼロ金利解除がより明確に示されることとなるからだ。 

 

 たとえば「引き続き、少しずつ高まっている」から、「高まった」とか「達成できる見通しとなった」などと補強する趣旨の発言が植田総裁から出たら、円高が急伸し、株安が進むだろう。 

 

日銀は政策変更に踏み切れるだろうか…Photo/gettyimages 

 

 心配な材料はまだある。 

 

 前編で紹介したように、マーケットでは2月中旬からの日本株の急上昇は、2月7日になら金融経済懇談会で講演した内田真一副総裁「政策修正のタイミングがいつになるにせよ、金融市場に不連続な動きを生じさせることがないよう工夫していく必要がある」との発言がきっかけだったと見られている。 

 

 マーケットに、「ゼロ金利政策が解除されたとしても急激な金利上昇がないように、日銀が金利を抑え込むだろう」という楽観論が広がったというのがその見方の根拠だが、この内田副総裁の発言に対する楽観論に筆者はいささか懐疑的だ。 

 

 というのも、ゼロ金利政策を解除したあとに長期金利がゼロ%付近で推移させるのは、大きな政策的な矛盾があるからだ。もちろん、急激な金利上昇がおこれば、内田総裁が言うように「不連続な動きを生じない」ために金利を抑え込む何らかの処置は必要だろう。 

 

 ただし、物価が安定的に2%上昇すれば、金利(長期金利)も当然2%に向かって上昇するのが市場のメカニズムである。この前提をくつがえしてまで、日銀が長期金利を抑え込むことはやるべきでないし、やらないだろう。 

 

 そして、金利上昇もまた株安要因である。3・19日の植田総裁の発言次第では、長期金利が上昇し、これが原因でやはり日本株が下落することになるだろう。 

 

 さらに、筆者は4月の金融政策決定会合では、ゼロ金利政策解除が行われるだけでなく、ETF(上場投資信託)の買い入れや、J-REIT(不動産投資信託)の買い入れの終了も宣言される可能性があると考えている。 

 

 日銀のこれら一連の金融政策変更を行えば、日経平均株価は大きな調整に追い込まれることになるだろう。 

 

 

 筆者は、こうした見通しが現実となる可能性は高いと考えているので、為替相場は早晩1ドル=140円付近までの円高に動くと身構えている。 

 

 その先は、米国の利下げ実施が予想よりも遅れてはいるものの、日本は金利上昇、米国は金利低下という逆の動きとなれば、日米の金利差は縮まり1ドル=120円に向かって円高が進行する。これが、筆者の懸念するところである。 

 

 となれば、日経平均株価は為替円高の動きと相まって、23年1月からの円安進行により上昇した分を吐き出すように3万円付近まで調整が行われても不思議ではない。 

 

 3月18・19日の金融政策決定会合で、日銀・植田総裁がゼロ金利解除にむけてどのようなシグナルを発信するのか、要注意だ。 

 

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鷲尾 香一(ジャーナリスト) 

 

 

 
 

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