( 148919 ) 2024/03/14 00:14:06 0 00 『経済評論家の父から息子への手紙: お金と人生と幸せについて』山崎元著、Gakken、2024年2月15日刊行。
資本主義経済はリスクを取りたくない人間から、リスクを取ってもいい人間が利益を吸い上げるようにできている。
「失敗しても致命的でない程度のリスクを積極的に取って、リスクの対価も受け取る」のが、新しい時代の稼ぎ方のコツ。
これからは、①株式性の報酬と上手く関わること、②適度なリスクを取ること、③他人と同じにならないように工夫すること、が肝心。
『経済評論家の父から息子への手紙:お金と人生と幸せについて』の著者である経済評論家の故・山崎元氏は、「資本主義経済はリスクを取りたくない人間から、リスクを取ってもいい人間が利益を吸い上げるようにできている」と主張した。前者を世界経済の養分となる「労働者タイプA」と呼び、これからのサラリーパーソンが目指すべきは、リスクをとって資本家から利益を巻き上げる後者の「労働者タイプB」だという。では、「労働者タイプB」とはどのようなものか紹介しよう。
「労働者タイプA」はリスクをとらず安定した雇用のみを考え、「そこそこの賃金で満足する労働者」である。
その特徴は、
①他人と取替可能な同じような人材である
②会社が用意した働き方だけで満足する
③雇用不安や賃金減少のリスクを極端に嫌う
ことだ。
山崎氏は、「労働者タイプA」をこう評している。
「彼らの大半が、経済の『不利な側』に回って、企業に利益を吸われて効率の悪い一生を送る。そして、区別が付きにくいくらい同じスーツと表情に象徴されるように、彼らの大半は使う側から見て『取り替え可能な存在』として弱い立場で会社員人生を送る」
彼らは企業に利益を提供するために存在しており、「世界の養分であり経済の利益の源なのだ」。山崎氏は「持つべき働き方のマインド・セットは、ある部分ではかつてと『真逆』と言っていいくらいに変化している」と言う。「『他人と同じ』を求めるだけでは幸せになれない。不利な方への『重力』が働く」のだ。
一方、「労働者タイプB」は「経営ノウハウ」「複雑な技術」「財務ノウハウ」など、資本家が理解できない「ブラックボックス」を会社の中に作って自らの立場を強くし独自の立場を築く。そうして、本来なら資本家に帰属したかもしれない「株式性のリターン」を巻き上げていく存在だ。高額な報酬を取る米国企業の経営者などがわかりやすい典型である。
彼らは、
①個々に違っていて個性的
②だいたいは頭脳を武器にしている
③ほどほどのレベルで資本家の隙を突く
という特徴がある。
現代はこうした「労働者タイプB」の出現により、「資本家も油断できない時代」なのである。現在は「労働者タイプB的な社員が有利でかつ徐々に存在感を持ち始めている」。ここにチャンスがある。「資本家・投資家から見て、労働者タイプBは資本の価値を有利に持ち出そうとする油断のならない、少々悪い奴」だが、「ほどほどのレベルで、資本家の隙を突くことは必ずしも悪いことではない」と山崎氏は言う。
「さて、息子よ。君は、どのくらい『悪い奴』になって世渡りするのだろうか。ちょっと楽しみだな」
こうした現状を踏まえ、山崎氏はこれからとるべきキャリアとして、「リスク回避的」で「フォロワー気質」の労働者タイプAの群れではなく、「リスク愛好的」で「リーダー気質」な方向を目指すべきだという。その極地はオーナー社長だ。
「狙い筋」のキャリアは、
①自分で起業する
②早い段階で起業に参加する
③報酬を自社株ないしストックオプションでもらえる会社で働く
④起業の初期段階で出資させてもらうこと
ことである。
ポイントは株式で稼ぐ働き方を実践することだ。理想的な就職先の例として、「1990年代のマイクロソフトのような会社」を挙げている。「給料(ベース・サラリー)+ボーナス+ストックオプション」のような形で報酬を支払うのは外資系企業に多い。ベンチャーでなくともストックオプションで報酬をもらえることは有利な場合が多い。
安定を志向することこそが、実は最も危険であるという山崎氏の遺言をあなたはどう受け止めるだろうか。
杉本健太郎
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